
小規模事業者持続化補助金のインボイス特例、創業直後の個人事業主は対象になるか
小規模事業者持続化補助金には、適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録に合わせて補助上限を引き上げる「インボイス特例」があります。2023年10月以降に創業し、インボイスの登録を検討している個人事業主にとっては、自分がこの特例の対象になるのかどうかが最初の疑問になるはずです。創業して間もない時期は、設備投資やウェブサイトの整備など使える資金を増やしたい場面が多く、補助上限が上乗せされるかどうかは申請計画そのものに関わってきます。この記事では、上乗せされる金額と、対象になる事業者の条件、申請前に確認しておきたい点を整理します。
結論:インボイス特例は補助上限に50万円を上乗せする
小規模事業者持続化補助金の通常枠は補助上限50万円です。インボイス特例の対象になると、この上限に一律50万円が上乗せされ、合計で最大100万円まで補助を受けられます。補助率自体は変わらず、上限額が引き上げられる形の特例だと理解しておくと分かりやすいです。対象になるのは、補助事業の終了時点で適格請求書発行事業者の登録を受けていて、かつ次の①②いずれかに当てはまる事業者です。どちらの区分に当てはまるかは、創業時期と免税事業者だった期間の有無で決まります。
対象になる事業者は2つの区分のいずれか
①2021年9月30日から2023年9月30日の間に免税事業者だった期間がある事業者
2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間で、一度でも免税事業者だったことがある事業者が対象になります。開業から一定期間が経っていて、インボイス登録を機に課税事業者へ切り替えた事業者を想定した区分です。
②2023年10月1日以降に創業した事業者
2023年10月1日以降に創業した事業者は、免税事業者だった期間の有無を問わず対象になります。創業したばかりで免税期間を経ていない事業者でも、創業日がこの日以降であれば②の区分に当てはまるということです。つまり、2023年10月以降に開業した個人事業主は、適格請求書発行事業者の登録を受ければ、この区分でそのままインボイス特例の対象になれます。①の区分のように免税事業者だった期間を遡って確認する必要がないため、創業直後の事業者にとっては該当するかどうかの判断がしやすい区分だといえます。
旧「インボイス枠」と現行の「インボイス特例」は別物
小規模事業者持続化補助金の一般型には、過去に「インボイス枠」という独立した枠があり、その枠の中に「インボイス特例」が含まれていました。現行の制度ではこの独立枠は廃止され、インボイス特例は通常枠に上乗せする形の特例という位置づけに変わっています。
この違いが実務上の注意点になるのは、重複の扱いです。通常枠でインボイス特例を使って補助事業を実施した事業者、または過去の「インボイス枠」(インボイス特例を含む)で採択・実施した事業者は、今回のインボイス特例の申請対象外になります。同じ特例を2回使うことはできないという理解で問題ありません。今回はじめて小規模事業者持続化補助金に申請する創業直後の事業者であれば、この重複の問題は発生しませんが、名称だけで「インボイス枠」と「インボイス特例」を同じものだと思い込まないよう注意しておくとよいでしょう。
申請前に確認しておきたいこと
インボイス特例の申請を検討する際は、次の点を事前に確認しておくと安心です。どれも、インボイス特例の対象になるかどうかを左右する基本的な事実の確認であり、難しい判断を求めるものではありません。
- 適格請求書発行事業者の登録状況(登録済み・申請中・未登録のいずれか)
- 自分の創業日が2023年10月1日以降かどうか
- 過去に通常枠のインボイス特例や旧インボイス枠を使ったことがないか
このうち、創業日の確認は開業届などの記録を見ればすぐに分かりますが、登録状況については「登録済み」「申請中」「未登録」のどの段階にあるかによって、提出する書類が変わってきます。申請を具体的に進める前に、自分が今どの段階にいるかを整理しておくと準備がスムーズです。
申請の実務では、電子申請システム上で「インボイス特例の希望」にチェックを入れ、2019年から2021年の各事業年度の課税売上高を入力し、宣誓・同意書(様式9)にもチェックが必要です。登録済みの場合は登録通知書の写し、e-Tax申請中の場合は受信通知の写しを提出します。郵送で申請中、またはまだ申請していない場合は、申請時点での提出は不要で、実績報告の際に提出する扱いです。
なお、インボイス特例を希望した場合、通常枠およびインボイス特例の要件を1つでも満たさないと、上乗せ部分だけでなく補助金全体が交付対象外になります。適格請求書発行事業者の登録手続き自体の詳細な進め方や、課税事業者への転換に伴う税務上の判断については、国税庁のホームページや税理士への確認をおすすめします。

💬 執筆者の三浦から一言
審査側の視点で言うと、インボイス特例を希望する申請は宣誓・同意書の提出が1点増えるだけで、審査自体の負担は大きくは変わりません。むしろ注意したいのは、特例の要件を1つでも落とすと、上乗せ分だけでなく通常枠の交付そのものが止まってしまう点です。登録状況や創業日の記載を提出前にもう一度見直すことをお勧めします。
賃金引上げ特例と併用すると最大250万円になる
小規模事業者持続化補助金には、インボイス特例のほかに「賃金引上げ特例」もあります。インボイス特例の対象になると上限が50万円上乗せされますが、賃金引上げ特例の対象にもなると150万円の上乗せとなり、両方の特例の対象になった場合は200万円の上乗せです。通常枠の補助上限50万円に200万円を加えると、最大250万円まで補助を受けられる計算になります。
創業直後の個人事業主にとって、インボイス特例の要件を満たすことは比較的シンプルですが、賃金引上げ特例は従業員の雇用や賃金に関わる別の要件が設けられています。従業員を雇っていない、またはこれから雇う予定がない場合は、インボイス特例単体での上乗せを前提に計画を立てる方が現実的です。それぞれの特例は要件が別に設けられているため、両方を満たせるかどうかは申請前に個別に確認しておく必要があります。
まとめ
小規模事業者持続化補助金のインボイス特例は、補助上限を50万円上乗せする制度です。対象になるのは、適格請求書発行事業者の登録を受けていて、かつ①2021年9月30日から2023年9月30日の間に免税事業者だった期間がある事業者、②2023年10月1日以降に創業した事業者のいずれかに当てはまる事業者です。2023年10月以降に創業した個人事業主であれば、②の区分でそのまま対象になります。旧「インボイス枠」との重複利用はできない点、要件を1つでも満たさないと全体が交付対象外になる点にも注意しながら、申請前に登録状況と創業日を確認しておきましょう。
【無料相談のご案内】
弊社は、V-Spiritsグループ代表の中野裕哲を中心に、元補助金審査員の三浦をはじめとした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























