
運送業の増車資金調達|2台目以降の追加融資と審査で見られるポイント
運送業を数年経営していると、荷主が増えたり案件が安定してきたりして「もう1台トラックを増やしたい」と考える場面が出てきます。ただし、1台目の開業資金と2台目以降の増車資金では、使える制度も審査で見られるポイントも変わってきます。この記事では、運送業が増車する際に検討したい資金調達の選択肢と、融資審査で重視されやすい観点を整理します。
※本記事の制度名・数字は執筆時点(2026年7月)の情報です。融資制度は改定されることがあるため、申請前に必ず日本政策金融公庫等の最新の公式情報をご確認ください。
増車の資金調達手段は主に3つ
運送業が車両を増やす際の資金調達方法は、大きく分けて次の3つです。
- 自己資金でまかなう:借入不要だが、手元資金が減り運転資金を圧迫しやすい
- 融資で調達する:まとまった金額を借りられるが、審査と返済計画が必要
- リース・分割払いを使う:頭金を抑えられるが、月々の固定費が増える
1台目の開業時とは異なり、2台目以降の増車では「既に事業を運営している実績」があるため、これを審査でどう見せるかが資金調達のカギになります。
既存の運送事業者が使える主な融資制度
日本政策金融公庫には、創業時に使われる「新規開業・スタートアップ支援資金」とは別に、既に事業を営んでいる事業者向けの融資制度があります。増車のような設備投資では、主に次の制度が候補になります。
一般貸付
ほとんどの業種で利用できる基本的な融資制度で、トラックなどの車両購入資金にも対応します。事業実績のある運送会社が2台目・3台目の車両を購入する際の資金使途として利用しやすい制度です。融資限度額や金利は審査内容によって変動するため、具体的な条件は申込み窓口で確認する必要があります。
企業活力強化資金
業務の効率化(合理化)や、複数の事業者が連携して業務を行う体制づくり(共同化)を進める事業者向けの制度で、流通関連の業務を行う運送業も利用対象に含まれます。増車によって配送ルートを効率化する、荷主との連携体制を強化するといった計画がある場合には、こちらの制度も選択肢になります。
いずれの制度も、金利や融資限度額は事業内容・審査状況によって異なります。断定的な数字を鵜呑みにせず、申請前に日本政策金融公庫の窓口や公式サイトで最新の条件を確認することが欠かせません。
増車融資の審査で見られやすい3つのポイント
創業融資では事業計画書と自己資金が主な審査材料になりますが、既に事業を運営している運送会社が増車融資を申し込む場合は、これまでの事業実績そのものが審査材料に加わります。特に見られやすいポイントを3つ紹介します。
1. 既存車両の稼働率
今ある車両がどれだけ稼働しているかは、増車の必要性を裏付ける重要な材料です。稼働率が低い状態で増車を申し込むと、「本当に車両を増やす必要があるのか」という疑問を持たれやすくなります。案件数や荷主からの依頼状況を数字で示せるようにしておきましょう。
2. ドライバーの確保状況
車両を増やしても運転する人がいなければ稼働できません。増車と同時にドライバーを採用・確保できる見込みがあるかどうかも、事業計画の実現可能性として見られるポイントです。人手不足が続く運送業界では、この点を曖昧にしたまま増車計画を出すと説得力を欠きます。
3. 既存借入の返済状況
1台目の開業融資やその他の借入がある場合、その返済が計画通りに進んでいるかも審査材料になります。延滞なく返済できている実績は、追加融資の審査においてプラスに働きやすい要素です。逆に返済が滞っている状態での増車申請は、慎重に検討する必要があります。
増車のタイミングと資金計画の立て方
増車は「案件が増えてから慌てて動く」のではなく、案件の増加傾向が見え始めた段階で資金計画を立て始めるのが安全です。融資の申込みから実行までは一定の期間がかかるため、荷主からの依頼が本格化するタイミングに車両が間に合うよう、逆算してスケジュールを組む必要があります。
また、増車後の月々の返済額・維持費(燃料費・保険料・車検費用など)を含めた収支計画を事前に作成し、稼働率が想定を下回った場合に備えた余力も含めて計画しておくと、審査面でも実務面でも安心です。
まとめ
運送業の増車資金は、自己資金・融資・リースのいずれか、または組み合わせで調達するのが一般的です。融資を検討する場合、日本政策金融公庫の一般貸付や企業活力強化資金など、既存事業者向けの制度が候補になります。審査では事業計画書だけでなく、既存車両の稼働率・ドライバーの確保状況・既存借入の返済状況といった「これまでの実績」が重視されやすい点が、創業融資との大きな違いです。増車を検討し始めた段階で早めに資金計画を立て、最新の制度内容は必ず公式情報で確認したうえで申請を進めましょう。
よくある質問
Q. 増車融資は創業融資と同じ制度を使えますか?
A. 日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は主に創業時向けの制度です。既に事業を運営している運送会社が増車する場合は、一般貸付や企業活力強化資金など、既存事業者向けの制度が候補になります。どの制度が使えるかは事業状況によって異なるため、窓口での確認をおすすめします。
Q. 増車の際にリースと融資のどちらが良いですか?
A. 一概にどちらが良いとは言えません。融資は所有権を得ながらまとまった資金を調達できる一方、審査と返済計画が必要です。リースは頭金を抑えられる分、月々の固定費が発生します。手元資金の状況や車両の使用年数の見込みに応じて、自社に合う方法を選ぶことが大切です。
Q. 既存の借入があると増車融資は受けられませんか?
A. 既存の借入があるからといって、必ずしも追加融資が受けられないわけではありません。ただし、返済状況は審査材料の一つになるため、延滞なく返済できていることや、増車後も無理のない返済計画であることを示せるように準備しておくことが重要です。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
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- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























