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コラム

飲食店の家賃が40万円なら売上はいくら必要?採算と必要客数を元信金担当者が解説

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飲食店の家賃40万円で採算を取るために必要な売上と客数の計算方法

店長として働いた経験を生かして独立を考え始めた方から、こんなご相談をよくいただきます。

💬 店長経験者の方からのご相談

候補物件の中に、家賃が月40万円で立地の良い店舗があります。今の会社では家賃比率を見ていましたが、自分の店では原価、人件費、借入返済、自分の給与もすべて払わなければなりません。この物件を借りてよいか判断するには、最低でも月商いくらを見込み、何人のお客様を集める必要がありますか?

小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

小峰からの回答

結論から言うと、家賃40万円という数字だけでは、最低限必要な月商は決まりません。必要な売上は、家賃を含めた固定費の合計と、売上に対して残る粗利の割合で決まります。そのため、ご自身の数字を入れて計算できる形で式をお渡しします。

先にお断りしておくと、この記事に出てくる金額や割合は、計算の流れを見ていただくための仮の数字です。飲食店の相場や目安ではありません。実際の判断には、必ずご自身の見積もりを当てはめてください。

まず、毎月出ていくお金を固定費として並べる

会社員として店を見ていたころは、家賃比率のような社内の物差しがあり、その枠の中で数字を動かしていたのだと思います。独立すると、その物差しの外にある支払いもすべてご自身の店の負担になります。損益分岐点を出す前に、毎月ほぼ一定で出ていくお金を、次のように洗い出してください。

  • 家賃(ご相談の物件は月40万円)
  • 人件費(シフトを組んだときの月の総額)
  • 借入の返済(元金と利息の合計)
  • ご自身の給与(事業から受け取る額として仮置きしたもの)
  • その他の固定費(水道光熱費の基本料金、通信費、保険料、リース料、広告費など)

人件費は、本来は忙しさで増減する面もありますが、まずはシフトを決めて固定費として置くほうが計算がぶれません。ご自身の給与をいくらにするかは、私からは述べません。事業から受け取りたい額を、ご自身で仮置きしてください。

損益分岐点売上の式

次に、売上に連動して増える費用を変動費として整理します。代表的なものは食材や飲料の原価で、カード決済の手数料など、売上に比例する費用もここに入れます。売上に対する変動費の割合が変動費率です。

損益分岐点売上、つまり利益がちょうどゼロになる月商は、次の式で求まります。

損益分岐点売上 = 固定費の合計 ÷(1 − 変動費率)

「1 − 変動費率」は、売上のうち手元に残る粗利の割合です。粗利で固定費をまかなえた地点が損益分岐点、と読み替えるとわかりやすいと思います。利益を出したい場合は、固定費の合計に目標とする月の利益を足して、同じ式で割ります。

目標を含めた必要売上 =(固定費の合計 + 目標利益)÷(1 − 変動費率)

仮の数字で計算してみる

ここからは、繰り返しになりますが仮置きの数字です。次のように置いたとします。

  • 家賃:40万円
  • 人件費:55万円
  • 借入の返済(元金と利息):10万円
  • ご自身の給与:30万円
  • その他の固定費:15万円
  • 変動費率:40%

固定費の合計は150万円です。粗利の割合は1 − 0.4 = 0.6ですから、損益分岐点売上は150万円 ÷ 0.6 = 250万円になります。これがこの仮定での最低ラインの月商です。家賃が40万円でも、他の固定費や変動費率が違えば、答えは大きく変わります。

月10万円の利益を目標に加えるなら、(150万円 + 10万円)÷ 0.6 = 約267万円です。目標を置くと、必要な月商が上がることが確認できます。

必要客数の式と、客単価による変わり方

必要な月商が出たら、それを客数に直します。

1日に必要な客数 = 必要売上 ÷ 客単価 ÷ 月の営業日数

先ほどの250万円を、営業日数を月25日と仮置きして、客単価ごとに割ってみます。

  • 客単価2,000円の場合:月1,250人、1日あたり50人
  • 客単価2,500円の場合:月1,000人、1日あたり40人
  • 客単価3,000円の場合:月約834人、1日あたり約34人(端数は切り上げ)

同じ月商でも、客単価をどう見込むかで、毎日迎えるお客様の数がこれだけ変わります。ここで大事なのは、どの客単価が正しいかを私が決めることではなく、ご自身のメニューと価格設定から出した客単価で、必ず計算し直すことです。

席数と回転数で、その客数が現実的かを確かめる

必要客数が出たら、次は店に入れる人数と比べます。

1日に入れる最大の客数 = 席数 × 1日の回転数

たとえば席数を20席、1日の回転数を2回転と仮置きすると、最大で40人です。先ほどの客単価2,500円の例では必要客数がちょうど40人ですから、毎日すべての席が埋まることが前提になり、余裕がありません。客単価3,000円の例なら34人で済みますが、それでも雨の日や曜日ごとの波を考えると、毎日確実に来るとは限りません。

この比較で、次のようなことが見えてきます。

  • 必要客数が席数と回転数の上限に近いほど、計画に余裕がない
  • 余裕を作るには、客単価の見直し、営業時間や席数の見直し、固定費や変動費率の見直しのどれかが必要になる

立地が良いことは、客数や客単価の見込みを支える材料になり得ます。ただし、それが数字として効くのは、通行量や周辺の状況などから客数の見込みを説明できるときです。「立地が良いから来るはず」という印象のままでは、計算の裏付けになりません。

返済は利益から払うもの。損益と現金は別物

借入の返済には注意点があります。返済のうち利息は費用として損益に出ますが、元金の返済は費用になりません。元金は、出た利益の中から払っていくお金です。

たとえば、帳簿上の利益が月5万円でも、元金の返済が月8万円なら、その差の3万円だけ手元の現金は減っていきます。売上があって黒字に見えても、現金が足りなくなって店が苦しくなる、という話は一般論として起こり得ます。この記事の式では、返済を元金と利息の合計で固定費に入れました。これは、帳簿の損益ではなく、現金が減らない売上ラインを見るための置き方です。税金や社会保険料も、支払う時期には現金が出ていきますので、資金繰りの表に織り込んでおく必要があります。

借りてよいかを決める前に見ておきたいこと

この物件を借りてよいかどうかは、私から断定する立場にありません。判断のための材料として、次の3点を確認してみてください。

  1. 必要客数が、席数と回転数の上限に対してどれくらいの位置にあるか
  2. 開店してから、売上が損益分岐点に届くまでの期間に不足する金額を、運転資金としてどう用意するか
  3. 客単価と客数の見込みが控えめな場合と、標準的な場合と、良い場合の3通りで、固定費に耐えられるか

金融機関側から見ると、事業計画の具体性は、審査で見られる材料の一つです。審査では、業務経験、自己資金、事業計画の具体性、資金使途と調達額の整合、信用情報などをもとに判断されます。売上見込みを客単価と客数に分解して説明できる計画は、面談でも話が具体的になります。

まとめ

必要な月商は、家賃だけでなく、人件費・返済・ご自身の給与を含めた固定費を、粗利の割合で割って求めます。そこから客単価と営業日数で必要客数に直し、席数と回転数で現実的かを確かめる、という順で進めてください。

物件ごとの固定費と変動費率を入れて損益分岐点を一緒に組み立て、事業計画や資金計画に落とし込む作業は、専門家と進める方法もあります。数字の組み立て方から相談できる窓口がありますので、出店判断に迷うときは、ご自身の数字を持って相談してみてください。判断するのはあくまでご本人ですが、計算の抜けを一緒に確認することはできます。

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小峰

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小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
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多胡藤夫

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

中野裕哲紹介画像


中野裕哲

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】

税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1,000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。

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