
補助金は申請前から現金が出ていく。準備段階の出費と手元資金の見方
補助金は「もらえるお金」というイメージが先行しますが、実際には申請する前から現金が出ていきます。開業1年目の個人事業主にとって、この見通しの甘さが資金繰りの落とし穴になりやすい部分です。
この記事では、補助金に関わる現金の動きを申請前、採択後、事業期間中の3段階に分けて整理します。そのうえで、申請前にいくらまでなら使ってよいかを判断する手順を紹介します。制度の事実は、小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)の第20回公募の公募要領(第8版・2026年7月21日改版)をもとにしています。
補助金で現金が動く3段階を先に押さえる
補助金は一般に後払いです。先に自分で経費を支払い、事業を終えて実績報告をしたあとに入金される流れで、持続化補助金にも実績報告書の提出があります。つまり、入金の前に現金が出ていく期間が必ずあります。
この現金を、次の3段階に分けて見ると整理しやすくなります。
- 申請前:見積の取得、書類の準備、電子申請のためのアカウント取得など。採択されるかどうかに関係なく自腹で出るもの
- 採択後:交付決定を待ってから発注し、支払う段階。ここから立て替えが始まります
- 事業期間中:支払から補助金の入金までの立て替え期間
【申請前】先に自腹で出ていくものを書き出す
申請前の出費は、金額の大きい設備代よりも、細かい準備のコストで膨らみます。たとえば次のようなものです。
- 購入予定の設備やサービスの見積書を集める手間と時間
- 確定申告書の写しや開業届の写しなど、申請に添える書類をそろえる手間
- GビズIDプライムの取得(電子申請のみで、郵送での申請はできません)
- 商工会・商工会議所に相談し、事業支援計画書(様式4)の発行を受ける段取り
出費の額そのものは人によって違うため、この記事では金額の目安を示しません。代わりに、紙に「項目」「いつ必要か」「現金で出るか」の3列を作って書き出してください。書き出すと、申請前に現金で出ていくものがどれなのかが見えてきます。
日程にも余裕を持たせる必要があります。第20回公募では、事業支援計画書(様式4)の発行依頼の受付締切が2026年12月4日(金)で、これ以降の依頼はいかなる理由でも受け付けられません。申請受付は2026年11月5日(木)に始まり、締切は2026年12月15日(火)17:00です。
失敗事例1:準備で先に払った分が補助対象にならなかった
申請前の落とし穴として代表的なのが、採択を待たずに発注や契約、支払をしてしまうケースです。持続化補助金では、交付決定日前に行った発注、契約、支払は対象外です。採択通知が届いただけでは、事業を始めることはできません。
見積を取ることと、発注や契約をすることは別の行為です。見積書は申請に使うものなので集めて構いませんが、「早く進めたいから先に頼んでしまおう」と動くと、その分は補助されず、全額が自己負担になります。
もう一つ、対象経費の線引きも先に確認しておきたい点です。広報費とウェブサイト関連費は、それぞれ補助金の交付申請額の上限が30万円(税込)で、広報費のみ、ウェブ関連費のみの申請はできません。準備のつもりで先にチラシやサイトに費用をかけても、計画に組み込めなければ補助の対象にならない可能性があります。
失敗事例2:不採択でも、準備に使ったお金と時間は戻らない
補助金は申請すれば必ず採択されるものではありません。不採択になった場合、申請前に使った費用と時間は戻ってきません。
判断の分かれ目になるのは、その出費が補助金なしでも必要だったかどうかです。見積を取った設備が、補助金がなくても事業に必要なものであれば、不採択でも無駄にはなりません。補助金がもらえることを前提に急いで用意したものは、不採択になった途端に重い負担に変わります。
【採択後】交付決定までは動かず、決定後は立て替えに備える
採択発表のあと、交付決定を受けてから発注し、支払う流れになります。第20回の採択発表は2027年3月頃(予定)です。
支払にもルールがあります。支払は銀行振込が原則で、1取引10万円超(税抜)の現金払いはできません。また、単価50万円(税抜)超の機械装置等、または50万円(税込)超の発注には、2者以上の相見積が必要です。見積を複数取る手間は、申請前の段階から見込んでおきましょう。
【事業期間中】入金までの立て替え期間を手元資金で持てるか
事業実施期限は2028年3月31日(金)、実績報告書の提出期限は2028年4月10日(月)です。補助金が入金されるのは、報告を終えたあとになります。
補助率は2/3で、補助上限は基本50万円です。特例の要件を満たす場合は、インボイス特例で最大100万円、賃金引上げ特例で最大200万円、両方を満たせば最大250万円になります。ただし、これは最大値で、通常枠と特例の要件を一つでも満たさなければ全体が交付対象外になります。
補助率が2/3ということは、経費の残り1/3は自己負担です。その1/3に加えて、補助金が入るまで全額を立て替える期間があることを前提に、手元資金を考えてください。
申請前に使ってよい額の考え方
「申請前にいくらまでなら使ってよいか」に、決まった金額はありません。次の手順で判断してください。
- 申請前に現金で出る項目を、先ほどの3列の表に全部書き出す
- それぞれが補助金なしでも必要な出費かどうかを分ける
- 不採択でも事業が回る範囲かどうかを確かめる
- 採択後の立て替え分は、申請前の予算とは別に確保できるか見積もる
- 生活費と事業の運転資金を先に確保し、残りの範囲で申請前の出費を決める
手順の4と5で足りないとわかったときは、申請の時期を次の公募回に見送る選択肢もあります。急いで申請して資金繰りが苦しくなるより、準備の時間を取るほうが結果的に安全です。
💬 執筆者の三浦から一言
補助金は、名前から入るより、投資の規模と目的から絞るほうが早く決まります。持続化補助金は最大でも250万円という規模の制度ですので、申請前に使う額もその規模感に合わせて考えると、見通しを立てやすくなります。上限は特例の要件を満たした場合の最大値という点も、あわせて意識してください。
申請前のチェックリスト
- 見積の取得と発注・契約を分けて考えている
- 交付決定の前には、発注も契約も支払もしない
- GビズIDプライムの取得と、事業支援計画書(様式4)の依頼を早めに進めている
- 不採択でも事業が回る範囲に、申請前の出費を抑えている
- 採択後の立て替え分を、別枠の手元資金として確保できる
対象になるかの確認も、申請前にやっておく
持続化補助金の対象となる小規模事業者は、業種ごとに常時使用する従業員数の上限が決まっています。商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は5人以下、サービス業のうち宿泊業・娯楽業と製造業その他は20人以下です。個人事業主本人や同居の親族従業員は、人数に数えません。
また、申請時点で未開業の創業予定者は、対象外になりやすい形態に挙がっています。開業済みの個人事業主であれば、この点は問題になりにくいでしょう。ほかに、医師・歯科医師・助産師なども対象外になりやすい形態として挙げられています。
制度は改定されることがあるため、申請前に最新の公募要領や事務局サイトで必ず確認してください。補助金の課税や経理処理については、申請前に税理士へ相談しておくと安心です。
まとめ
補助金は、申請前から現金が出ていく制度です。申請前、採択後、事業期間中の3段階に分けて必要な現金を書き出し、申請前に使う額は、補助金なしでも必要な出費か、不採択でも事業が回るか、という基準で決めてください。まずは商工会・商工会議所の窓口に、早めに相談してみることをおすすめします。
【無料相談のご案内】
弊社は、V-Spiritsグループ代表の中野裕哲を中心に、元補助金審査員の三浦をはじめとした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























