
起業に必要な自己資金はいくら?──目安と考え方をわかりやすく解説します
ズバリ言います。
「起業するのに自己資金はどのくらい必要ですか?」という質問は、起業相談の中でも最も多いものの一つです。
結論から申し上げると、「業種によって異なる」が正解なのですが、何も目安がないと不安になりますよね。
ですので今回は、起業時に必要な自己資金の「相場」や「考え方のコツ」、
そして「資金計画の立て方」まで、わかりやすくご案内していきます。
1.そもそも「自己資金」とは?
まず、「自己資金ってどこまでが含まれるの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
自己資金とは、読んで字のごとく「自分で用意したお金」のこと。
具体的には、以下のようなものが含まれます。
・自分の貯金
・家族からの援助(贈与)
・保険の解約返戻金
・退職金
一方、以下のようなお金は、原則として「自己資金」とは認められにくいです。
・借入金(親族・知人から含む)
・クレジットカードのキャッシング
特に創業融資などでは、「通帳にコツコツ貯めてきた履歴」が重視されます。
どこからともなく現れた100万円より、
月々積み立ててきた50万円の方が信頼を得られるケースもあるのです。
2.起業に必要な自己資金の「目安」とは?
起業に必要な自己資金の金額は、業種・業態・事業規模・地域などによって異なります。
とはいえ、ある程度の“目安”がないと動きにくいと思いますので、実務上よく使われる基準を以下にご紹介します。
◎自己資金は「開業資金全体の30%程度」が目安
たとえば、開業に900万円必要だとしたら、自己資金は300万円程度が一つの目安となります。
この30%基準は、日本政策金融公庫などで創業融資を受ける際にも、一つの基準としてよく用いられます。
◎日本政策金融公庫の創業融資は「自己資金ゼロ」でも通る?
よくある誤解ですが、「自己資金がゼロでも融資は受けられる」と聞いて安心してしまう方がいらっしゃいます。
たしかに制度上は、一定条件下で自己資金ゼロでも融資が可能なこともありますが、
実際には“自己資金なし”の融資審査は極めて厳しいです。
現場の感覚で言えば、「少なくとも100万円以上の自己資金は欲しい」ところ。
これは「お金を貯める力がある人かどうか」を見られているのです。
3.業種別の自己資金目安例
実際の起業相談でよく見られる業種について、ざっくりとした自己資金の目安をご紹介します。
業種 / 開業資金の目安 / 自己資金の目安(30%)
飲食店(小規模) 500万円 約150万円
ネイルサロン 200万円 約60万円
コンサル業(自宅開業)100万円 約33万円
ネットショップ 200万円 約66万円
学習塾 500万円 約166万円
それぞれもっと大きな規模でやることも想定されますので、目安です。
もちろん、居抜き物件を活用したり、クラウドファンディングを併用したりすれば、必要額をグッと抑えることも可能です。
ただし、どんな業種であっても「ゼロスタート」はリスクが高すぎることを忘れないでください。
4.なぜ自己資金が必要なのか?
「借りられるなら、自己資金なんてなくてもいいのでは?」という声もありますが、自己資金には非常に重要な意味があります。
(1)信用の証明になる
「自己資金をコツコツ貯めた=本気度が高い」と見なされます。
金融機関からすれば、貯金ができる人=返済能力がある人、という評価につながるのです。
(2)経営の余裕を生む
自己資金が少ないと、ちょっとしたトラブルで資金繰りが行き詰まります。
備品が壊れた、売上が伸びなかった、予想以上に広告費がかかった……
こうした「想定外」に対応するには、自己資金の余力が必要なのです。
(3)交渉力が増す
自己資金をしっかり持っていると、融資の交渉でも有利になります。
「返済リスクが低い」と判断されるため、審査もスムーズに進みやすくなります。
5.自己資金の貯め方とアピール方法
「でも、今から急に100万円貯めろと言われても無理です…」という声もよく聞きます。
たしかに時間はかかりますが、方法はあります。
たとえば以下のような対策がおすすめです。
・毎月定額を別口座に積立(通帳の履歴が大事!)
・不要な保険やサブスクの見直し
・副業での収入を自己資金に回す
・車や家電などの売却を検討する
・家族からの「贈与」を資金化する(記録を残す)
また、資金の使い道を具体的に示し、必要資金自体を減らすことで、自己資金の“少なさ”を補うことも可能です。
その際、「何に、いくら使うのか」「なぜ必要なのか」を明確にし、
その使い道が合理的であることを示せば、金融機関からの信用度も上がります。
まとめ:自己資金は“額”よりも“信頼性”
起業に必要な自己資金の目安は、一般的には「全体資金の30%程度」。
しかし、単に「金額が多ければいい」というわけではありません。
それよりも大切なのは、「どこから、どうやって、何のために準備したお金か」という“ストーリー”です。
通帳に貯金の履歴があり、資金使途も明確で、
事業計画と連動していれば、多少少なくてもプラスに評価されることもあります。
資金の準備は、起業の第一歩。焦らず、でも確実に積み重ねていきましょう。
ご不安な方は、ぜひお気軽にご相談ください。あなたの夢のスタートを、資金面からしっかり応援します!
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。