
いまさら聞けない「注文書」「注文請書」「契約書」の違いってなに?
こんにちは、起業・会社設立の実務支援をしている起業コンサルタント(R)・税理士・行政書士の中野裕哲です。
さて、起業して事業を始めると、取引のたびに出てくるのが「注文書」「注文請書(うけしょ)」「契約書」という書類。最初は「これって全部必要?」「何が違うの?」と戸惑う方が多いのですが、ズバリ言いますと、それぞれ役割が違い、法的な効力にも差があります。
そこで今回は、それぞれの意味や違い、使い方、起業家として押さえておきたい注意点をわかりやすく解説していきます。
「注文書」とは?──買う側が出すオファー
「注文書」は、発注者(商品やサービスを買う側)が、相手(売り手)に対して出す書類です。
たとえば、あなたがカフェを運営していて、業者にテーブルや椅子を発注する場合、この「注文書」を業者に渡すことで、「こういう内容でお願いしたいです」という意思表示をするわけです。
ポイントはここです:
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発注者からの一方的な申し込みにすぎない
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この時点では、法的な契約は成立していない(場合もある)
つまり、注文書だけでは契約成立とは限らないということです。これだけだと、後で「そんな内容じゃなかった」と言われてトラブルになる可能性もあります。
法律では「申込」とそれに対する相手方の「承諾」があって契約が成立する、ということを覚えてください。注文書は「申込」です。
「注文請書」とは?──受けた側が出す承諾書
次に「注文請書(うけしょ)」です。これは、受注者(売る側)が、注文を正式に引き受けたことを示す書類です。
つまり、「あなたの注文、確かに受けましたよ」という返事の書類。注文書と注文請書がそろうことで、契約が成立するケースが多いです。つまり法律的には「申込」に対する「承諾」の意思を表すのがこの書類の役割です。
たとえば、あなたがロゴデザインの制作を外注して、相手が「注文請書」を返してきたら、そこで正式に契約が成立したとみなされます。
ここがポイント:
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注文請書を返送することで注文を承諾したという証拠になる
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双方が合意した証拠となり、契約書の代わりにもなる
小規模ビジネスやフリーランス同士のやりとりでは、この「注文書+注文請書」のセットで契約成立とすることがよくあります。
「契約書」とは?──双方が合意して作る正式な証明書
さて、次に本命ともいえる「契約書」です。
「契約書」は、発注者と受注者が双方で内容を確認し、合意のうえで取り交わす文書。一般的に印鑑(署名・捺印)を交わし、お互いに1部ずつ保管することが多いです。
注文書や注文請書よりも法的効力が強く、トラブル時には一番有力な証拠になります。
たとえば、システム開発などの高額案件や長期契約の場合には、「契約書」を作成するのが通常です。
契約書の特徴:
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双方が合意して署名することで契約が成立(法律的には「申込」と「承諾」が同時)
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細かい条件(支払方法・納期・瑕疵対応など)を明記できる
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法的にも強い証拠力がある
3つの違いをまとめると?
書類名 | 誰が出す? | 役割 | 法的効力 |
---|---|---|---|
注文書 | 買い手 | 買う意思を伝える | 契約未成立の可能性あり |
注文請書 | 売り手 | 注文を受けた証明 | 合意の証拠になる |
契約書 | 双方 | 契約内容を明記して確認 | 強い証拠力あり |
実務でどう使い分ければいい?
それぞれの書類は状況によって使い分ける必要があります。
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小規模で単発の取引:注文書と注文請書でOK
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高額・長期の取引、トラブルが心配なとき:契約書を交わす
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口頭やメールで進めた内容でも、念のため書面を残しておく:トラブル回避の鉄則
起業家として気をつけたいポイント
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注文書だけ渡して安心しない(相手からの確認書類も大切)
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注文請書をもらったら内容を必ず確認(違っていたらすぐ指摘)
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契約書は「言った言わない」を防ぐ武器。たとえ知人でも文書化しましょう
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電子契約(クラウドサインなど)も活用を
まとめ:書類の目的を知ってトラブルを未然に防ごう
ビジネスは信頼のうえに成り立ちますが、信頼だけでは足りない場面もあります。お互いの安心を確保するためにも、適切な書類を使い分けることが大切です。
起業家としてスタートしたばかりの方は、「どこまで書類を揃えるべきか?」と迷うことも多いですが、迷ったらひとまず「書面を残す」ことを意識しましょう。注文書だけで済ませず、注文請書や契約書まで交わせば、より安全です。
「これって契約になるのかな?」と不安に思ったら、お気軽に専門家にご相談くださいね。
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。