
保育事業の創業融資、担保や保証人がなくても申し込めるか
保育事業での独立を考えたとき、「担保にできる不動産もない」「保証人になってくれる人もいない」という理由で、開業をためらっていませんか。この記事では、保育事業の創業融資でよくある担保・保証人に関する誤解をQ&A形式で整理し、制度の数字と実務の視点から解説します。
結論:保育事業の創業でも、担保・保証人なしで融資を受けられる可能性があります
日本政策金融公庫の創業融資は、原則として無担保・無保証人で利用できる仕組みになっています。対象となるのは「創業期の方」、つまり新たに事業を始める方、または事業開始後に税務申告を2期終えていない方です。現在の主な制度は「新規開業・スタートアップ支援資金」で、〜2024年3月までの名称は「新規開業資金」でした(2024年4月から改称・拡充)。かつて無担保・無保証の特例だった「新創業融資制度」は2024年3月に廃止されており、現在は各融資制度に無担保・無保証の枠組みが組み込まれています。
【Q&A】担保・保証人についてよくある誤解
Q1. 担保にできる不動産がないと、保育事業の融資は受けられませんか?
創業期の方は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できます。担保にできる不動産の有無が、申し込みの前提条件になるわけではありません。
Q2. 保証人になってくれる人がいないと、そもそも申し込めませんか?
創業期の方は、原則として無担保・無保証人で融資制度を利用できるため、保証人を立てられないこと自体が申し込みの障壁にはなりません。
Q3. 信用保証協会を使えば保証人はいらない、という理解で合っていますか?
自治体の制度融資は、自治体・金融機関・信用保証協会の三者が連携する仕組みです。融資の実行主体(お金の出し手)は民間金融機関で、信用保証協会は保証を付ける役割を担います(協会が直接貸すわけではありません)。「保証協会経由の融資」という理解は実態とややずれるため、この仕組みを正しく押さえておくと、公庫の創業融資との違いも整理しやすくなります。
Q4. 担保を出さないと、金利で不利になりますか?
日本政策金融公庫 国民生活事業の創業融資では、利率引下げの対象として、新たに事業を始める方、または事業開始後に税務申告を2期終えていない方(いわゆる創業期の方)が案内されています。引下げ幅は原則0.65%で、雇用の拡大を図る場合は0.9%です。なお「雇用の拡大を図る場合」は対象者の区分ではなく、引下げ幅が大きくなる条件にあたります。また、この引下げは担保の有無によって対象が変わるものではありません。実際の適用可否は利用する融資制度・審査・条件により異なる可能性があるため、必ず下がるとは考えず、詳細は申請先でご確認ください(2026年6月1日現在の基準・条件にもとづく説明です)。
一方で、基準利率そのものの水準は担保の有無で異なります。2026年6月1日現在、創業期(税務申告2期未了)の基準利率は年3.45〜5.15%、有担保の場合は年2.50〜4.80%です。「引下げの対象になるかどうか」と「利率の水準そのもの」は別の話なので、この2つを分けて理解しておくことが大切です。

💬 執筆者の多胡から一言
公庫で審査をしていたころ、無担保と有担保では基準利率の水準そのものが違う一方、創業期の利率引下げは担保の有無を問わず適用対象になる、という点を混同している方によくお会いしました。「担保を出さないと損をする」と一括りに考えないほうが、実態に近い理解です。
Q5. 自己資金が少ないと、担保なしでは無理ですか?
制度上、自己資金の額や割合について決まった要件はありません。ただし、自己資金の額は審査における重要な判断材料であり、額や割合の決まりはないものの、自己資金が多いほど審査で有利になりやすいという傾向があります。「○分の1が必須」というような要件として捉える必要はありません。
みなし自己資金になる支出を整理する
創業前に自費で取得した資格・設備や備品の購入・テストマーケティング費用などは、「みなし自己資金」として一定範囲で評価されることがあります。領収書を必ず保管しておきましょう。保育士としての資格取得費用や、開業準備で購入した備品などが、この整理の対象になり得ます。
Q6. 保育士の実務経験はありますが、経営の実績がありません。不利ですか?
審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。「事業の実績」ではなく「事業として創業した実績」がないことが前提の制度なので、保育の現場経験があること自体が不利に働くものではありません。経営面の経験を補うには、同業のメンターから助言を受けている、経理を業務委託でプロに任せているといった対策よりも、事業経験者を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整える方向のほうが、説得力を持たせやすいとされています。

💬 執筆者の多胡から一言
相談を受ける順番としては、まず自分が「創業期の方」に当たるかどうかを確認し、そのあとで自己資金の見せ方を考えるほうが話が早いと感じています。担保や保証人の心配を先にしてしまうと、本来は不要な準備にかえって時間を取られてしまうことがあります。
Q7. 創業融資なら決算書は関係ありませんか?
創業融資は事業として創業した実績がなくても申し込めますが、決算書をまったく見ないわけではありません。新しく設立した会社であっても、一期でも決算が締まっていれば、その決算書が確認されます。また、代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。そのため、事業計画書や自己資金などの準備に加えて、すでに決算が済んでいる会社がある場合はその内容も踏まえて説明できるように整理しておくと安心です。判断は個別の状況によって変わるため、詳細は申請先や専門家にご確認ください。
【Q&A】保育事業ならではの疑問
Q8. 保育事業には、担保が必要になる融資制度もありますか?
融資を行う制度・機関によって、担保の考え方は異なります。日本政策金融公庫の創業融資は原則として無担保・無保証人ですが、他の制度・機関では担保を前提とする場合もあります。利用を検討する制度ごとに、担保の要否を確認しておくとよいでしょう。
Q9. 認可・認可外・小規模保育・企業主導型で、融資の考え方は変わりますか?
形態によって自治体への手続きや基準が異なりますが、その詳細な手続きについては、事業を行う自治体の窓口や、許認可を専門とする行政書士にご確認ください。融資の基本的な考え方(無担保・無保証人の対象、審査で見られる材料など)は、形態にかかわらず共通しています。
Q10. 補助金や助成金があれば、融資は受けなくてよいのでは?
補助金・助成金は、交付されるタイミングと実際に支出が発生するタイミングにずれが生じることが一般的です。開業初期の資金繰りをつなぐ役割として、融資とあわせて検討されるケースがあります。個別の補助金・助成金の要件は制度ごとに異なるため、該当する制度の窓口にご確認ください。
担保なし・保証人なしで申し込む場合に知っておきたい数字(2026年6月1日現在)
融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円、制度による)です。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いとなります。返済期間は、設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内が目安です(利用する制度により異なります)。
申請から融資実行までは、書類提出後おおむね3週間〜1か月が目安です。準備を含めると合計で約2か月を見ておくと安全です。「今すぐ資金が必要」という状況には時間的に対応が難しい点は、あらかじめ理解しておく必要があります。
まとめ
保育事業の創業融資は、原則として無担保・無保証人で申し込める仕組みになっています。担保にできる資産や保証人がいないことを理由に開業をためらう必要はありません。自己資金の額・割合にも制度上の要件はなく、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。誤解しやすいポイントを整理したうえで、早い段階から専門家と一緒に準備を進めることが、無理のないスタートにつながります。
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融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























