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コラム

学童保育の物件費用は創業融資で全額賄える?定員から逆算する借入額の決め方

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学童保育の物件費用は創業融資でどこまで賄えるか|開設前に決めておく4つのこと

学童保育(放課後児童クラブ)の開設準備で、最初に金額が動くのが物件です。「良い物件が見つかったので、費用は創業融資で全額まかないたい」というご相談は多いのですが、実際に借入額として組めるかどうかは、金額の大きさよりも資金使途の区分・根拠書類・手続きの順番で決まります。この記事では、物件費用を融資で賄おうとしたときにつまずきやすい4つのパターンを、日本政策金融公庫の創業融資の仕組みに沿って整理します。記載の数字は2026年8月時点の情報で、制度や利率は変わることがあるため、申請前には申請先で最新の内容をご確認ください。

「全額賄えるか」の答えは、物件の使い方で変わります

創業融資の代表的な制度は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、学童保育の物件費用が枠に収まらないというケースはそれほど多くありません。それでも「全額」でつまずくのは、物件にかかるお金が1本の費用ではなく、性質の違う複数の支出に分かれるからです。

物件を借りて始めるのか、建物を取得して始めるのかで、資金の組み方は大きく変わります。新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の返済期間は、設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内で、いずれも据置期間を5年以内で設定できます。同じ金額を借りても、どちらの資金使途で組むかによって毎月の返済額の重さが変わるということです。個別の支出がどちらに当たるかは事業の実情によって判断が分かれるため、迷う場合は申請先や専門家に確認しながら計画を整えることをおすすめします。

審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。物件費用の妥当性も、この計画の一部として見られると考えてください。

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つまずきやすい4つのパターン

1. 物件を先に契約してから、資金の相談を始める

いちばん多いのがこの順番です。創業融資は、書類提出後おおむね3週間〜1か月で実行されますが、創業計画書・自己資金のエビデンス・見積書などの準備を含めると、合計で約2か月を見ておくと安全です。物件の契約が先に走ってしまうと、この2か月を待てる状態ではなくなります。

学童保育の場合、開所日は年度の区切りに合わせて決まることが多く、そこから逆算すると動ける時期は限られます。物件探しと資金の相談は、どちらかを終えてから次に進むのではなく、並行して進める前提でスケジュールを引くほうが無理がありません。

2. 「物件費」でひとまとめにして、資金使途を分けていない

物件にかかる支出には、建物や設備そのものにあたるもの(内装・改修工事、什器、遊具、防犯設備など)と、事業を回すために継続的に出ていくものが混ざります。前者は設備資金、後者は運転資金として整理していくことになります。

3. 定員と必要な広さを決めないまま、物件を探し始める

放課後児童クラブの設備運営基準では、児童が生活する専用区画の面積について、児童1人につきおおむね1.65平方メートル以上という基準が示されています。つまり、受け入れる児童数を決めなければ、必要な床面積も、それに見合う物件の価格帯も決まりません。

借入額の根拠は、この順番でしか作れません。定員を決める、必要な広さが出る、候補物件が絞られる、工事の見積が出る、必要額が確定する、という流れです。定員が固まっていない段階で物件だけを見に行くと、後から「この広さでは足りない」「この面積では家賃に対して定員が少なすぎる」と設計をやり直すことになります。なお、建物の規模や元の用途によっては、建築基準法や消防法上の手続きが必要になる場合があります。物件を決める前に、自治体の担当窓口に確認しておくと安心です。

4. 開所するまでの期間の資金を見込んでいない

物件を確保してから開所するまでには、工事、備品の搬入、職員の採用と研修、利用者の募集といった期間が挟まります。その間も固定費は発生しますが、利用料の入金はまだありません。物件費用だけを積み上げた資金計画では、この期間を支える資金が抜け落ちます。

元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いになります。開所前後のキャッシュフローが薄くなる時期をどう乗り切るかは、借入額そのものと同じくらい計画に反映しておきたい部分です。

小峰精公

💬 執筆者の小峰から一言

信用金庫で融資を出す側にいたころの感覚で言うと、物件が決まる前から手を付けておけるのは自己資金の整理です。面談の時点で口座に残高が確認できる形になっているか、そのお金がどう貯まってきたのかを説明できるかを見ています。開業前に自費で購入した備品や受講した研修の費用が、みなし自己資金として一定の範囲で評価されることもありますので、領収書は手元に残しておいてください。

物件費用を融資に乗せるまでの進め方

ここまでの内容を、動く順番に並べ替えると次のようになります。

  1. 受け入れる児童数(定員)と運営形態を決める
  2. 面積基準から必要な床面積を出し、候補物件を2〜3件に絞る
  3. 候補物件ごとに工事と備品の概算見積を取り、設備資金と運転資金に分ける
  4. 自己資金の状況を整理し、必要な借入額と返済期間・据置期間の組み合わせを決める
  5. 創業計画書を作り、申請する(書類提出後おおむね3週間〜1か月で実行)

物件が決まっていないと金融機関の審査は始まりません。物件を確保できるかどうかが重要です。

よくある質問

Q. 建物を購入して開設する場合も、創業融資の対象になりますか。
土地、建物の取得は設備資金にあたる支出ですので、創業融資の対象になります。取得を前提に検討する場合は、物件を押さえる前に申請先へ相談してください。

Q. 保育や学童の運営経験がない場合、融資は難しいですか。
未経験の分野で創業する場合は、事業計画書のなかで経験不足をどう補うかが論点になります。同業のメンターから助言を受ける、専門業務を業務委託に任せるといった対策は、経営への関与としては弱いと見られやすい部分です。事業経験者を役員として迎えるなど、運営に直接関わる体制を整えるほうが説得力が出ます。

Q. 自己資金は総額の10分の1が必要と聞きました。
制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。かつての「新創業融資制度」にあった10分の1の要件が今も必要だと説明されることがありますが、この制度は2024年3月に廃止されています。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料で、多いほど有利に働きやすい点は変わりません。

まとめ

学童保育の物件費用が創業融資で賄えるかどうかは、限度額の枠よりも、資金使途の区分・借入額の根拠・手続きの順番で決まります。定員から必要な広さを出し、候補物件の見積を設備資金と運転資金に分け、自己資金の状況を整理したうえで、返済期間20年以内・原則10年以内と据置5年以内の組み合わせを設計する、という順番で進めてください。物件を先に契約してから資金を探すのではなく、両方を並行して動かすことが、開所日から逆算したときにいちばん無理のない進め方です。制度の内容や利率は変わることがあるため、実際の申請では申請先で最新の情報をご確認ください。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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この記事を監修した人


中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
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  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。


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