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コラム

歯科開業の資金配分は返済期間で決まる|内装・ユニット費に自己資金を使い切る前に見る数字

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歯科医院の内装・ユニット費は融資と自己資金のどちらで賄う?返済期間から逆算する配分の考え方

歯科医院の開業では、内装工事とチェアユニットだけで資金計画の大半が決まります。手元の自己資金をどこまでここに充てるべきか、それとも全額を融資で組むべきか——勤務医の方からよくいただくご相談です。

この判断は「自己資金は多いほうが有利らしい」といった漠然とした印象で決めると、開業後の資金繰りで苦しくなりがちです。実際には、資金使途の区分ごとに返済期間が違うという構造上の理由があり、そこから逆算すると配分の考え方が見えてきます。この記事では、日本政策金融公庫の数字をもとに、内装・ユニット費をどう賄うかを整理します。なお、本記事の数字は2026年8月時点の情報です。

内装・ユニットは「設備資金」、開業後に出ていくお金は「運転資金」

個人事業主・中小企業の創業時の代表的な選択肢は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月に「新創業融資制度」が廃止され、現在の主制度となりました(〜2024年3月の名称は「新規開業資金」)。融資限度額は7,200万円で、そのうち運転資金は4,800万円という内訳になっています。

ここで押さえておきたいのが、資金使途の区分によって返済期間が変わることです。新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例として、次の期間が示されています。

資金使途 返済期間 据置期間
設備資金 20年以内 5年以内
運転資金 原則10年以内 5年以内

内装工事費やチェアユニット、レントゲンなどの機器は設備資金にあたり、返済期間は20年以内で組めます。一方、開業後の材料費や人件費といった運転資金は原則10年以内です。同じ金額を借りても、設備資金と運転資金では月々の返済額がまったく違ってきます。

配分は「返済期間の長さ」から逆算する

この期間差を踏まえると、配分の考え方は整理しやすくなります。長く使う資産である内装・ユニットは、長く返せる設備資金で賄うほうが、月々の負担を平らにできます。

逆に多いのが、手元の自己資金を内装とユニットの支払いにほぼ全額充ててしまい、開業後に手元が薄くなったところで運転資金を借り足す、という順番です。この場合、後から借りる運転資金の返済期間は原則10年以内ですから、同じ金額でも設備資金として組んだときより月々の返済が重くなります。開業直後で患者数が積み上がっていない時期に、この重さが効いてきます。

元金返済の據置期間は5年以内で設定でき、據置中は利息のみの支払いになります。開業から患者数が安定するまでの立ち上がり期間をどれくらい見込むかを先に決め、その期間に据置と手元資金を重ねる、という順番で計画を組むと筋が通ります。

自己資金は「いくら入れるか」より「どう見えるか」

自己資金について、旧制度にあった10分の1のような固定要件が今もあると思われていることがありますが、現行制度では自己資金の額や割合の要件は決まっていません。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料で、多いほど有利になりやすいのは確かです。

審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。判断材料はこの2つだけではありませんが、自己資金が計画全体の説得力を支える要素であることに変わりはありません。だからこそ、内装費の支払いで手元を使い切ってしまうと、審査で示せる自己資金が減るという面もあります。自己資金は面談時点で口座に確認できる形にしておくのが原則です。

小峰精公

💬 執筆者の小峰から一言

内装やユニットの支払いに自己資金を充てる前に、開業準備でご自身が払った分の領収書をまとめておいてください。創業前に自費で取得した資格や設備・備品の購入、テストマーケティングの費用は、みなし自己資金として一定の範囲で評価されることがあります。口座の残高だけが自己資金というわけではないので、支出の記録が残っているかどうかで見え方が変わってきます。

金利の水準と、創業期の引下げ

配分を考えるうえで、借りる側のコストも確認しておきます。2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。有担保の場合の基準利率は年2.50〜4.80%と、全体的に低い水準に設定されています。

一般的な紹介記事では「固定金利で年2〜3%台」と書かれていることがありますが、これは古い、または概算の目安です。数字を見るときは必ず基準日を確認してください。

また、創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります。この引下げは担保の有無によって対象が変わるものではなく、無担保でも有担保でも創業期の方であれば対象になります。ただし適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず、申請先でご確認ください。

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ユニット・医療機器はリースという選択肢もある

チェアユニットや画像診断機器については、購入ではなくリースを提案されることもあります。初期費用を抑えられる点は魅力ですが、次のようなデメリットもあります。

  • 連帯保証人が必要になる
  • 機器の所有権が持てない
  • 契約期間中の中途解約が難しい
  • 故障時の修理負担が借主側になる契約が多い

融資とリースのどちらが有利かは、資産計上の考え方や資金繰りの状況によっても変わるため、賃貸借費用の負担も含めて税理士や金融機関に相談しながら判断することをおすすめします。歯科の場合、内装は動かせない資産なので融資、機器の一部はリース、という組み方をされる方もいらっしゃいます。

スケジュールから逆算する

配分が決まっても、時間の見込みが甘いと計画が崩れます。融資は、申請から実行まで書類提出後おおむね3週間から1か月が目安です。創業計画書・自己資金のエビデンス・見積書などの書類を整える時間を含めると、申請準備に1か月、審査・実行に1か月、合計2か月程度を見ておくと安全です。

歯科医院の場合、内装は設計から着工・引渡しまでの期間があり、ユニットや機器にも納期があります。融資実行のタイミングと、施工業者・機器メーカーへの支払時期がずれると、その差を手元資金で埋めることになります。物件が決まった段階で、支払スケジュールと融資のスケジュールを並べて確認しておいてください。

よくある質問

自己資金はいくら用意すればよいですか

制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。旧制度にあった10分の1要件のような固定のラインは現行制度にはありません。一方で、自己資金の額は審査の重要な判断材料になるため、多いほど有利になりやすいという関係にあります。金額そのものより、その資金がどのように貯まったのかを説明できる状態にしておくことが大切です。

勤務医から独立する場合、決算書は関係ありませんか

創業融資は事業として創業した実績がなくても申し込めますが、決算書をまったく見ないわけではありません。新しく設立した法人であっても、一期でも決算が締まっていればその決算書が確認されます。また、代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。該当する場合は、その内容も踏まえて説明できるよう整理しておくと安心です。

内装費の見積が途中で上がった場合はどうなりますか

設備資金は見積書をもとに申請するため、金額が動くと計画との差が生じます。判断は個別の状況によって変わりますので、変更が分かった時点で申請先や支援の専門家に相談してください。据置期間や手元資金の余裕をどれだけ持たせておくかで、こうした変動への耐性も変わってきます。

まとめ

歯科医院の内装・ユニット費をどう賄うかは、次の順番で考えると整理しやすくなります。

  • 内装・ユニットは設備資金(返済20年以内)、開業後の支出は運転資金(原則10年以内)と区分が違う
  • 長く使う資産は長く返せる設備資金で組み、自己資金は手元に残す方向で配分を考える
  • 自己資金は額や割合の要件こそないが、審査の重要な判断材料。面談時点で口座に確認できる形にしておく
  • 据置期間は5年以内。立ち上がり期間の見込みと重ねて設定する
  • リースを併用する場合は、所有権や中途解約などのデメリットも含めて比較する

本記事の数字・条件は2026年8月時点のものです。制度・金利は変わりやすいため、実際の申請にあたっては日本政策金融公庫の最新情報をご確認ください。自院の投資額に対してどこまで融資で組めるのか、配分の設計から相談したい場合は、お気軽にお問い合わせください。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

多胡藤夫

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】

税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1,000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。

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