
据置期間を決めるのは金融機関です|創業融資の枠5年と据置明けの返済額
創業融資の据置期間は「返済期間のうち5年以内」|枠の読み方と、決まり方
これから開業して日本政策金融公庫の創業融資に申し込む段階で、据置期間という言葉に行き当たった方が多いと思います。元金の返済を待ってもらえる期間があるなら使いたい、けれど何年で見ておけばよいのかが分からない、というところで止まりやすい項目です。
この記事では、据置期間を「自分で何年に設定するか」という決め事としてではなく、制度上の枠と、その枠が資金計画のどの数字を動かすのかという形で整理します。据置期間で動く数字と動かない数字、公庫が示している年数の枠、据置中に払う利息の水準、そして据置期間を実際に決めているのは誰か、という順に見ていきます。
据置期間で動く数字と、動かない数字
据置期間は、借入をしたあと一定の期間、元金の返済を待ってもらう仕組みです。据置期間の間に払うのは利息だけになります。
ここで動く数字は2つです。1つ目は据置期間中の毎月の支払額で、元金が乗らないぶん軽くなります。2つ目は据置が明けたあとの毎月の返済額で、こちらは逆に重くなります。
一方、動かない数字もあります。借入残高です。据置期間の間は元金を返していないので、残高はそのまま残ります。開業から1年、2年と経っても、据置中であれば借りた額はほぼそのままの状態で残っている、という前提で資金計画を組む形になります。
もう1つ動かないのが、返済期間そのものの枠です。据置期間を長く見込んだからといって、返し終わる時期が後ろにずれるわけではありません。この点は次の項目に直結します。
制度上の枠は「20年以内、うち据置期間5年以内」
日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金では、返済期間が資金使途ごとに次のように示されています(2026年9月時点の公庫の案内による記載です)。
- 設備資金:20年以内、うち据置期間5年以内
- 運転資金:10年以内、うち据置期間5年以内
読み落としやすいのが「うち」という言葉です。据置期間は返済期間の外側に足されるものではなく、返済期間の内側に含まれています。
据置は返済期間の内数です
運転資金で返済期間10年、据置期間5年という形になった場合、元金を返していく期間は残りの5年です。10年かけて返すつもりだった元金を、実際には5年で返すことになります。設備資金で返済期間20年、据置期間5年であれば、元金を返す期間は15年です。
同じ据置5年でも、影響の大きさが資金使途によって違うのはこのためです。設備資金は20年の枠のうち5年なので、元金を返す期間は4分の3ほど残ります。運転資金は10年の枠のうち5年なので、元金を返す期間が半分になります。運転資金の据置は、据置明けの負担の増え方が設備資金より急になりやすい、という読み方ができます。
据置期間中に払う利息はどのくらいか
据置期間中も利息は毎月発生します。しかも元金が減っていないので、利息の計算のもとになる残高が下がりません。据置期間の長さは、そのまま「高い残高のまま利息を払う期間の長さ」でもあります。
公庫の国民生活事業の基準利率は、令和8年9月1日現在で次の水準が示されています。
- 無担保・税務申告を2期以上終えている場合:年3.80〜5.40%
- 無担保・税務申告を2期終えていない場合(創業期など):年3.75〜5.35%
- 有担保の場合:年2.80〜5.00%
創業融資では、税務申告を2期終えていない区分に当たる方が多くなります。利率には幅があり、どの水準になるかは制度や条件によって変わりますので、数字を計画に落とすときは幅の上のほうでも回るかを確かめておくと、あとで組み直す手間が減ります。
据置が明けたあと、毎月の返済額はどう変わるか
据置期間の効き方を数字で見ておきます。運転資金を返済期間10年で借り、据置期間が5年になった場合、元金を返す期間は5年です。据置がなく10年かけて元金を返す場合と比べると、毎月の元金部分はおおよそ2倍になります。
設備資金を返済期間20年で借り、据置期間が5年になった場合は、元金を返す期間が15年です。20年で返す場合と比べた毎月の元金部分の増え方は、およそ3分の4倍にとどまります。
据置期間は、開業直後の資金の出方を軽くする代わりに、その先の返済を重くする仕組みだと分かります。据置期間中に売上が立ち上がっている想定であれば筋が通りますが、立ち上がりが想定より遅れた場合、軽い時期が終わったところに重い返済が来る形になります。据置期間を見込むときは、据置が明ける月の損益と手元資金を先に置いてみる進め方が安全です。
据置期間を決めているのは誰か
ここが、据置期間について書かれた説明でいちばん食い違いが起きやすいところです。据置期間は、申込者が自分で年数を設定できる項目ではありません。
適用される利率も、据置期間も、返済期間も、審査のうえ金融機関が決定します。上で挙げた5年以内や20年以内という数字は、制度上の枠として示されているもので、その範囲で認められることがある、という意味です。希望を申込時に伝えること自体はできますが、決めるのは金融機関の側です。
この前提が入れ替わると、資金計画の立て方まで変わってしまいます。「据置を5年にして最初の5年は元金を返さない計画」を先に作ってしまうと、据置が短くなったときに計画そのものを組み直すことになります。逆に、据置が認められた場合に楽になる、という順で組んでおけば、どちらに転んでも計画は生きます。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
ご相談の場では、据置期間と返済期間が同じ意味で使われることがあります。ただ、毎月の負担の重さを動かすのは返済期間のほうで、据置期間は元金を返し始める時期をずらすものです。また、返済の力が足りないという理由で金額が削られる、という見方も当たりません。収益の中から返済が出せると計画で示せているかが先に見られます。
据置が認められなかった場合をどう見ておくか
据置期間が付かない、あるいは希望より短くなる可能性を織り込むなら、確かめておく数字は1つです。開業した月から元金の返済が始まったとして、手元の資金が何か月もつか、という数字です。
ここで見るのは、借入額そのものではなく、毎月出ていく額と入ってくる額の差です。家賃や人件費のような毎月ほぼ固定で出ていく費用に、元金と利息を足した額を置き、売上が計画の何割で推移したら手元資金が何か月で尽きるかを並べます。据置が付けばこの期間が延びる、という順で見ておけば、据置の有無で資金計画が壊れません。
据置期間を長く見込むほど安全側に立てる、という考え方は成り立ちにくい、ということでもあります。据置は開業直後の時間を作る仕組みであって、返済の総額を減らすものではないためです。
よくある質問
据置期間中は何も払わなくてよいのですか
元金の返済がないだけで、利息は毎月払います。据置期間中の支払いがゼロになるわけではありません。元金が減らない状態が続くため、利息の負担は据置期間の長さに比例して積み上がります。
据置期間は申し込みのあとで延ばせますか
据置期間を後から動かすことは、返済条件の変更にあたる話になります。これも金融機関が判断する事柄です。申込の段階で資金の出入りを整理し、据置についての希望とその根拠を伝えられる状態にしておくほうが、話の筋が通りやすくなります。
設備資金と運転資金で据置の枠は違いますか
据置期間はどちらも5年以内という枠で示されています。違うのは返済期間の枠で、設備資金は20年以内、運転資金は10年以内です(2026年9月時点の公庫の案内による記載)。同じ据置5年でも、元金を返す期間の縮み方が変わるため、運転資金のほうが据置明けの返済額の上がり方は急になります。
まとめ
据置期間は、返済期間の内側にある枠です。設備資金は20年以内のうち5年以内、運転資金は10年以内のうち5年以内という形で示されています。据置期間の間は元金が減らず、利息は毎月かかり、据置が明けたあとの元金の返済は短い期間に圧縮されます。
そして、適用される据置期間を決めるのは金融機関です。申込者ができるのは、希望とその根拠を伝えることと、据置が付かなかった場合でも回る資金計画を先に作っておくことです。この順で組んでおけば、審査の結果がどちらに転んでも、開業後の資金繰りを自分で読める状態を保てます。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























