
据置期間とは?創業融資で知っておきたい返済開始を待ってもらう仕組み
創業融資を検討していると、「据置期間」という言葉を見かけることがあります。
据置期間とは、融資を受けたあと、一定期間だけ元金の返済を待ってもらう期間のことです。一般的には、その間も利息の支払いは発生します。つまり、「返済しなくてよい期間」ではなく、「元金返済の開始を一時的に後ろへずらす仕組み」と考えるとわかりやすいです。
創業直後は、家賃、設備費、広告宣伝費、仕入れ、人件費など、売上が安定する前から支払いが発生します。その時期に元金返済まで始まると、手元資金が早く減り、集客や仕入れなど本来必要な投資にお金を使いにくくなることがあります。
据置期間をうまく活用できれば、創業初期の返済負担を抑えながら、売上づくりに集中しやすくなります。ただし、据置期間が終わった後には元金返済が始まります。設定の仕方によっては、後半の返済額が重くなることもあるため注意が必要です。
この記事では、創業融資における据置期間の基本、メリット・デメリット、どのような人に向いているか、設定時の考え方をわかりやすく解説します。
〈目次〉
1. 据置期間とは?元金返済を一時的に待ってもらう期間
据置期間とは、融資を受けたあと、借りたお金そのもの、つまり元金の返済を一定期間待ってもらう期間です。
たとえば、300万円を借りた場合、この300万円が元金です。据置期間中は、この元金の返済を一時的に始めず、通常は利息のみを支払います。
| 項目 | 据置期間中の扱い |
| 元金返済 | 一定期間ストップ |
| 利息支払い | 原則として支払いあり |
| 借入残高 | 元金は減らない |
| 返済義務 | なくなるわけではない |
ここで大切なのは、据置期間は「返済免除」ではないという点です。元金返済を後ろにずらすだけなので、据置期間が終わると、予定どおり元金返済が始まります。
そのため、据置期間を設定するときは、「最初の負担が軽くなるか」だけでなく、「据置期間が終わったあとも無理なく返せるか」まで確認する必要があります。
2. 具体例で見る据置期間の仕組み
100万円を25か月で返済するケースで考えてみましょう。利息を除いて単純計算すると、据置期間がない場合、毎月の元金返済額は4万円です。
一方、5か月の据置期間を設定すると、最初の5か月は元金返済がありません。その代わり、6か月目以降の20か月で100万円を返すため、毎月の元金返済額は5万円になります。
| 項目 | 据置期間なし | 5か月据置あり |
| 借入額 | 100万円 | 100万円 |
| 返済期間 | 25か月 | 25か月 |
| 元金返済開始 | 1か月目から | 6か月目から |
| 最初の5か月の元金返済 | 毎月4万円 | 0円 |
| 6か月目以降の元金返済 | 毎月4万円 | 毎月5万円 |
このように、据置期間は「前半の返済負担を軽くして、後半で返していく仕組み」です。
創業直後の資金繰りには役立ちますが、据置期間終了後の返済額が売上や利益に対して重すぎると、後から資金繰りが苦しくなります。長く取れればよいのではなく、事業の立ち上がり方に合っているかが重要です。
3. 創業直後になぜ据置期間が重要なのか
創業直後に怖いのは、利益が出ないことだけではありません。実際には、支払いに必要な現金が足りなくなることのほうが深刻です。
開業前後は、内装工事費、設備費、保証金、家賃、仕入れ、広告宣伝費など、売上をつくる前に多くの支出が発生します。法人向けの事業では、売上が立っても入金までに時間がかかることもあります。
この時期に元金返済が始まると、手元資金の減り方が早くなります。広告を出したいのに出せない、仕入れを増やしたいのに増やせない、人を採用したいのに踏み切れない。このような状態になると、売上を伸ばすための動きが遅れてしまいます。
据置期間は、創業初期の資金繰りを守るクッションです。元金返済の開始を少し遅らせることで、その間に売上づくり、集客、営業活動、サービス改善に集中しやすくなります。
もちろん、据置期間を設定すれば必ず安心というわけではありません。それでも、創業直後の不安定な時期に手元資金を残せることは、事業を継続するうえで大きな意味があります。
4. 日本政策金融公庫の主な融資制度と据置期間の目安
創業融資を検討する際、多くの方が候補にするのが日本政策金融公庫の融資です。制度によって、対象者、資金の使いみち、返済期間、据置期間の目安が異なります。
ここでは、据置期間のイメージをつかむために、主な融資制度を比較します。実際に利用できる制度や据置期間は、事業内容、資金使途、返済計画などによって変わります。最新情報は、日本政策金融公庫の公式サイトや窓口で確認してください。
| 融資制度 | 主な対象・使いみち | 据置期間の目安 |
| 一般貸付 | ほとんどの業種の中小企業が利用を検討できる制度 | 運転資金:1年以内 設備資金:2年以内 特定設備資金:2年以内 |
| 新規開業・スタートアップ支援資金 | 新たに事業を始める方、または事業開始後に必要な設備資金・運転資金 | 運転資金・設備資金ともに5年以内 |
| 経営環境変化対応資金 | 社会的・経済的環境の変化などにより、一時的に業況が悪化している事業者向け | 運転資金・設備資金ともに3年以内 |
制度上の上限と、実際に設定できる期間は別に考える
表にある据置期間は、あくまで制度上の目安・上限です。たとえば「据置期間5年以内」と書かれていても、誰でも必ず5年の据置期間を設定できるわけではありません。
実際の据置期間は、事業内容、資金の使いみち、売上見込み、返済計画、金融機関との相談内容によって変わります。
また、創業融資では、据置期間は長ければ長いほどよいものではありません。創業直後の返済負担は軽くなりますが、その分、据置期間が終わった後の返済負担が重くなる可能性があります。
創業融資では「事業に合った据置期間」を考える
据置期間を考えるときは、「制度上、何年まで可能か」よりも、「自分の事業に何か月必要か」を考えることが大切です。
開業直後から売上が見込める事業であれば、据置期間を短めにして早めに元金返済を始める選択肢もあります。一方、店舗の認知が広がるまで時間がかかる事業、広告宣伝や営業活動への投資が必要な事業、入金までの期間が長い事業では、据置期間を設けることで資金繰りに余裕を持たせやすくなります。
制度の上限ではなく、事業計画、資金繰り表、返済シミュレーションをもとに、自社に合った期間を考えましょう。
5. 据置期間のメリット
据置期間の大きなメリットは、創業直後の資金繰りに余裕を持たせやすいことです。
開業直後から元金返済が始まると、毎月の固定的な支出が増えます。一方で、据置期間を設定できれば、一定期間は元金返済を抑えられるため、その分を事業の立ち上げに使いやすくなります。
創業初期の手元資金を残しやすい
創業直後は、売上がまだ安定していない一方で、家賃、仕入れ、広告宣伝費、人件費などの支払いが発生します。据置期間があれば、元金返済に回す予定だった資金を、集客や仕入れ、採用、設備の維持などに使いやすくなります。
売上が安定するまでの時間を確保できる
新しいお店やサービスを知ってもらうには時間がかかります。法人向けの事業でも、営業から契約、納品、入金までに時間差が出ることがあります。
据置期間があると、返済負担を抑えながら、営業活動、広告宣伝、顧客対応、サービス改善に集中しやすくなります。事業を軌道に乗せるための助走期間として活用できる点が大きなメリットです。
心理的な余裕ができる
創業直後は、売上、集客、資金繰り、スタッフ対応など、考えることが多くあります。そのうえ元金返済がすぐに始まると、経営者の不安は大きくなります。
据置期間によって返済プレッシャーを一定程度軽くできれば、目先の資金繰りだけに追われず、事業を伸ばすための判断をしやすくなります。
6. 据置期間のデメリット・注意点
据置期間は便利な仕組みですが、「使えば必ず得をする」というものではありません。特に、据置期間終了後の返済負担と利息の支払いには注意が必要です。
据置期間が終わると毎月返済額が増えることがある
据置期間中に返済しなかった元金は、あとで返済していく必要があります。そのため、同じ返済期間で据置期間を設けると、据置終了後の毎月返済額が増えることがあります。
創業直後の負担を軽くできることは大切ですが、据置期間が終わった後に毎月いくら返済するのかを必ず確認しておきましょう。
据置期間中も利息の支払いは必要
据置期間中は、元金返済は待ってもらえても、利息の支払いは発生するのが一般的です。
「据置期間=支払いゼロ」と考えていると、実際の資金繰りにズレが出ます。据置期間中にいくら支払うのか、据置期間終了後にいくら返済するのかを、事前に試算しておくことが大切です。
長く設定すればよいとは限らない
据置期間が長いほど、創業初期の負担は軽くなります。しかし、元金返済の開始が遅れる分、後半の返済負担が重くなる可能性があります。
また、据置期間を希望する場合は、なぜその期間が必要なのかを説明できるようにしておく必要があります。「なんとなく不安だから長めにしたい」ではなく、広告宣伝、仕入れ、入金サイト、売上立ち上がり時期など、事業計画と結びつけて考えましょう。
据置期間を設定するかどうかは、感覚ではなく数字で確認することが大切です。
「据置なし」「6か月据置」「12か月据置」など複数のパターンで試算すると、創業直後の資金繰りと据置終了後の返済負担の違いが見えやすくなります。
日本政策金融公庫の「返済シミュレーション(事業資金用)」も活用しながら、無理のない返済計画を確認しましょう。
7. 据置期間はどんな人に向いているか
据置期間は、すべての人が必ず利用すべきものではありません。向いているのは、開業直後に手元資金を厚く残す必要がある事業です。
据置期間を検討したいケース
たとえば、店舗ビジネスのように、認知が広がるまで時間がかかる事業は据置期間を検討する価値があります。開業してすぐに安定した来店が見込めるとは限らないためです。
また、内装工事、機械設備、備品、初回仕入れなど、開業前後にまとまった資金が必要な事業も注意が必要です。広告宣伝や営業活動に一定期間の投資が必要な事業、請求から入金までに時間がかかる法人向け事業も、手元資金に余裕を持たせておく意味があります。
創業期は、予想外の支出や計画の修正が起こりやすい時期です。開業後しばらくは資金を厚めに残しておきたい場合、据置期間は有効な選択肢になります。
据置期間を短めにしてもよいケース
一方で、すでに顧客や契約先があり、開業直後から売上が見込める場合は、据置期間を短めにしてもよい可能性があります。
初期費用が少なく、固定費も小さい事業であれば、長い据置期間を取らなくても資金繰りを組み立てやすいことがあります。早めに元金を減らしたい場合も、据置期間を短めにする選択肢があります。
重要なのは、「据置期間を使うかどうか」だけではなく、「何か月が自社に合っているか」です。売上見込み、固定費、初期費用、入金タイミングを確認しながら判断しましょう。
8. 据置期間を設定するときの考え方
創業融資の据置期間は、制度上は数年まで認められる場合もありますが、実務上は6か月〜12か月程度で検討されることが多いです。
据置期間を設定するときは、「長く取れるなら長いほうがよい」と考えないことが大切です。事業計画と資金繰りに合っているかを基準に判断しましょう。
売上が安定するまでの期間から逆算する
まず、売上が安定するまでにどのくらいの期間がかかりそうかを考えます。
開業直後から売上が見込める事業もあれば、認知づくりや営業活動に時間がかかる事業もあります。たとえば、開業後数か月は広告宣伝に力を入れ、半年後から売上が安定する見込みであれば、その期間に合わせて据置期間を検討する考え方があります。
固定費と手元資金を確認する
次に、毎月の固定費と手元に残しておきたい資金を確認します。固定費には、家賃、人件費、通信費、システム利用料、リース料、広告費などがあります。
元金返済が始まった場合に、固定費と返済を合わせても無理なく支払えるか。初期投資や入金サイトを考えて、開業後に資金が不足しないか。この点を確認することが大切です。
据置終了後に無理なく返せるか確認する
据置期間を設定する場合、もっとも重要なのは、据置期間終了後の返済です。
据置期間中は資金繰りに余裕があるように感じても、元金返済が始まった途端に苦しくなることがあります。必ず、据置期間が終わる時期の売上見込み、固定費、返済額、手元資金を確認しましょう。
可能であれば、「据置なし」「6か月据置」「12か月据置」など、複数パターンで返済シミュレーションを行うことをおすすめします。
希望理由を事業計画書で説明できるようにする
据置期間を希望する場合は、創業計画書や資金繰り表と結びつけて説明できるようにしましょう。
- 開業後しばらくは広告宣伝に資金を使い、顧客獲得に注力したい
- 設備投資や仕入れが大きいため、開業直後の手元資金を確保したい
- 売上の入金までに時間がかかるため、一定期間は資金繰りに余裕を持たせたい
- 開業後数か月で売上を立ち上げ、その後に元金返済を開始する計画にしたい
据置期間は、単独で決めるものではありません。事業計画書、資金繰り表、返済シミュレーションをセットで確認しながら、自分の事業に合った期間を考えることが大切です。
9. よくある質問
Q1. 据置期間中はまったく返済しなくてよいのですか?
A. 一般的には、元金返済は据え置かれますが、利息の支払いは発生します。「返済ゼロ」ではなく「元金返済を一時的に待ってもらう期間」と考えましょう。
Q2. 据置期間は必ず設定したほうがよいですか?
A. 必ずではありません。創業直後の資金繰りに余裕を持たせたい場合は有効ですが、据置後の返済負担も考えて判断する必要があります。
Q3. 据置期間は何か月くらいが多いですか?
A. 事業内容や融資制度によって異なりますが、創業融資では数か月から1年程度で検討されるケースが多いです。
Q4. 据置期間を長くすると得ですか?
A. 一概にはいえません。創業初期の負担は軽くなりますが、据置期間が終わった後の返済額が大きくなる可能性があります。
Q5. 据置期間を希望する場合、どう伝えればよいですか?
A. 売上が安定するまでの期間、初期費用の内容、手元資金を残す必要性、据置終了後の返済見込みを、創業計画書や資金繰り表で説明できるようにしておきましょう。
10. まとめ:据置期間は創業期の資金繰りを守るための仕組み
据置期間とは、融資を受けたあと、元金返済を一時的に待ってもらう期間のことです。
創業直後は、家賃、設備費、広告宣伝費、仕入れ資金などで支出が先に出やすく、売上が安定するまで時間がかかることもあります。そのため、据置期間を活用することで、創業初期の資金繰りに余裕を持たせやすくなります。
ただし、据置期間は返済が免除される制度ではありません。元金返済を後ろに延ばす仕組みなので、据置期間が終わった後の返済負担も考えておく必要があります。
大切なのは、「創業初期の負担を軽くすること」と「据置終了後に無理なく返済できること」のバランスです。据置あり・なしの両方で返済シミュレーションを行い、自分の事業に合った返済計画を立てましょう。
創業融資は、借りられるかどうかだけでなく、借りたあとに無理なく返していけるかが重要です。据置期間をどう設定するかによって、開業後の資金繰りは大きく変わります。
「自分の場合は据置期間を付けたほうがよいのか」「何か月で設定すべきか」「創業計画書にどう書けばよいのか」と迷う方は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
当社では、創業融資を検討している方に向けて、無料相談を行っています。事業内容や資金計画を伺ったうえで、据置期間を含めた返済計画の考え方を一緒に整理できますので、不安がある方はお気軽にご相談ください。
【無料相談のご案内】
起業の手続きって何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。




























