
いまさら聞けない「郵便局で法人口座をつくるメリット・デメリット」
郵便局を通じて開設する法人口座(ゆうちょ銀行法人口座)は、起業されたばかりの方や地方での活動を検討している起業家にとって、非常に魅力的な選択肢です。ただし、それだけではなく制約や注意点もあります。今回は、そのメリットとデメリットを、実務の目線でていねいに解説します。
■メリット1:審査基準が緩いので設立直後でも開ける
ゆうちょ銀行は、他の金融機関と比べて法人口座の審査が非常にゆるやかなのが特徴です 。多くの起業家が設立直後でも問題なく口座開設できたという報告があり、「資本金が少ない」「事業実態がまだ乏しい」時でも口座を確保できます。
■メリット2:全国の郵便局が支店代わりに使えて利便性抜群
ゆうちょ銀行には全国23,000以上の郵便局が支店代わりに使え、ATMも選べば無料で使えるケースが多いです。出張や店舗運営で地方にも広く移動する方にとって、非常に高い利便性と安心感があります。
■メリット3:口座維持手数料がかからない
法人口座の維持につきものの月額手数料が不要で、現金の引き出しや振込も比較的リーズナブルです。創業期のコストカットにはとても役立ちます。
■メリット4:ネットバンキングの活用でオンライン送金も可能
「ゆうちょBizダイレクト」などの法人向けネットバンキングを契約すれば、オンライン振込・残高照会が可能になります。この使用料も比較的安価です。
×デメリット1:預入限度額が1,300万円で制限がある
ゆうちょ銀行の法人口座は、預入総額が1,300万円に制限されており、それ以上入金したり累積保有したりできません。そのため、高額売上や資金量が多くなる企業には不向きです。
×デメリット2:ATMやネット機能の制限もある
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ATM稼働時間が郵便局の営業時間に依存し、深夜や休日は使えないことがある
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通帳記入は窓口でのみ可能で、コンビニATMでは対応できないことも
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Bizダイレクトの送金限度額は初期で5万円と低額(設定変更は可能)
×デメリット3:融資や法人としての信用力でやや弱みがある
ゆうちょ銀行は金融商品のラインナップが少なく、融資対応に弱い・法人としてのブランド力が限定的です。金融機関からの評価が必要な場面では、メガバンクや地銀・信用金庫との併用が望まれます。
×デメリット4:ネット銀行に比べると手数料が高い場合も
Bizダイレクト利用料(月額550円)や振込手数料165円などは、ネット銀行よりも割高です 。コストを重視する企業には、主要な銀行と併用しての使い分けが有効です。
■どんな起業家におすすめ?
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設立直後で他行での銀行審査に不安がある方:まずはゆうちょで口座確保
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地方やエリアに出向く事業者:全国の郵便局が使えて安心
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小規模・低資金で運営を始めたい場合:月額維持コストがかからない手軽さ
ただし、売上が大きくなったり資金管理が重要になったりしたら、メガバンク・地銀・ネット銀行などの追加口座も準備しておくと安心です。
■まとめ:ゆうちょ口座は「手軽さ」と「制限」のバランス
ゆうちょ銀行の法人口座は、「開けないというリスクを回避したい」「コストを抑えてスタートしたい」起業家にとって最大の選択肢です。
一方で、資金規模が大きくなったときや金融サービスが必要になると、他の銀行が補強役になります。
まずゆうちょで口座を作りつつ、事業の成長に応じて新たな口座も開設していくのが、現実的な分散戦略です。
必要になったら、口座選びや複数管理のアドバイスもいたしますので、いつでもご相談ください。
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起業の手続きって何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!
この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。