
いまさら聞けない「STP分析」ってなに?──マーケティング戦略の基礎設計ガイド
ビジネスやマーケティングの話題に出てくる「STP分析」。でも「言葉は聞いたことあるけど、実際どう使うの?」という方も多いはずです。STP分析とは Segmentation(市場細分化)・Targeting(ターゲット選定)・Positioning(ポジショニング) の頭文字をとった、マーケティング戦略設計の基本フレームです。今回はその意味から実務への落とし込み方法までを、実務寄りにわかりやすく整理しました。
① S = Segmentation(市場細分化)
まずは市場を小さなグループに分ける作業から始めます。市場細分化のポイントは以下です:
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地理的要素:地域・都市・人口密度
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人口統計学的要素:年齢・性別・世帯構成・収入
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心理的要素:価値観・ライフスタイル・悩み
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行動的要素:購入頻度・チャネル・価格志向
この切り口により「ざっくりした全体」から「自社が刺さりやすい層」を見つけることができます。
② T = Targeting(ターゲット選定)
細分化された市場群の中から、自社が挑戦すべき最も可能性のある層を選ぶプロセスです。選定の視点は以下の通り:
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自社の強みとのマッチ度:その層で勝負できる、強みを発揮できる自社要素があるか
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市場規模と収益性:ビジネスとして成立・成長可能かどうか
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参入障壁と競合環境:競合が多すぎず隙間があるか、先行企業や大企業に負けないか
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接点の取りやすさ:広告・チャネルの選択肢があるか
ここで1〜3層ほどにターゲットを絞り、「この人たちに届けよう!」という方針とします。
③ P = Positioning(ポジショニング)
ペルソナが決まったら、次は「どう自社を差別化して届けるか?」の戦略設計です。
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顧客にとっての価値は何か?(品質・価格・安心感など)
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自社しか提供できない独自の売りは何か?(USP)
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競合とどう違うのか?(視覚・言葉・体験を含む)
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その価値をどう伝えるか?(PR・広告・見せ方)
位置付けがしっかりできれば、お客様に「これは他と違う」「自分に最適!」と選ばれる理由が明確になります。
④ STP分析の全体設計プロセス
以下のように進めると現場で使いやすくなります:
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市場の広がりを把握する
まず、市場全体(例:フィットネス市場)をイメージし、その中にある小さな層を洗い出します。 -
セグメント化の切り口を入れる
「初心者向け/上級者向け」「オンライン/対面」「価格重視/品質重視」など複数軸でグループを設計します。 -
ターゲット選定
上記4項目(強さ・規模・競合・接点)を点数化し、優先順位を付けます。 -
ポジショニング設計
その層に対し、一番響く独自価値を言語化し、差別化を図ります。 -
実行施策の具体化
広告文言・提供内容・価格帯・チャネル設計など、ターゲットに届く形で全体を整備します。
⑤ STP分析の実務活用イメージ
例:オンライン学習サービスの場合
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Segmentation:
① 忙しい社会人/② 高校受験生/③ シニア層 -
Targeting(評価ポイント)
① 社会人:自社の講師経験+オンライン対応◎
② 高校生:規模大だが競合多
③ シニア:規模は小さいがニッチ&相談しやすい接点あり
→ ①と③をターゲットに決定 -
Positioning
① 「社会人の時間不足を支える30分完結の学習設計」
③ 「シニア向け、全くの初心者に優しいIT入門サービス」 -
実施施策
① SNS広告/平日夜に投稿、30分完結レッスンのLP
③ シニア向けWeb広告+紙チラシ、対面説明会+電話フォロー
⑥ 成功するSTP分析のポイント
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仮説ではなく“リアルな顧客の声”を聞くこと
セグメント・選定・設計は必ずヒアリング・アンケートで裏付けてください。 -
1~2ターゲットに絞るのが常識
広がりすぎると戦略が薄くなり、効果が出にくくなります。 -
絶えず見直しが必要
半年や1年ごとに市場・競合・自社環境が変わるため、定期的な見直しを。 -
実践しながら調整する
作って終わりではなく、広告成果・反応・離脱などを見ながら改善を。
■まとめ:STP分析は“勝てる土俵”をつくる第一歩
STP分析は、 「誰に」「何を」「どう届けるか」を整理し、戦略的に事業を設計する思考法です。やみくもに商品をつくる前に、市場のどこを狙い、自分たちの強みをどう届けるかをしっかり定めることが、成果を出す鍵になります。
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。