
コストカットを“数字からだけ”で判断すると、経営自体が失敗する理由とは?
ズバリ言います。
数字だけを見てコストカットに走ると、会社の“芯”が崩れます。なぜなら、数字には見えない「価値」や「信頼」まで削ってしまうリスクがあるからです。
経営者として最も大切な視点は、「数字の奥にある意味を読み取ること」。今回は、ありがちな失敗例を交えながら、見落としがちな落とし穴をご紹介しますね。
1. 「削った分だけ利益が出る」は大間違い
よくある勘違いがこれ。
「固定費を◯万円削れば、その分利益が増える」と単純に考えていませんか?もちろん、ムダな支出を見直すのは大切ですが、そこには“見えない代償”がついてくることもあるのです。
たとえば、長年お願いしてきた外注先を「単価が高いから」といってバッサリ切った結果、新しい外注先とのやりとりに時間がかかり、品質も低下…
結果として、スタッフの稼働も増え、クレームも増加。結局、売上も信頼も落ちてしまう、という話は少なくありません。
2. “人”に関するコストカットは慎重に
人件費は、最も大きなコストです。だからといって、ここを安易に削るのは危険です。
・スタッフの給与を下げる
・教育研修費を削る
・福利厚生をやめる
このような判断をすると、どうなるか。
士気が下がり、離職者が増え、求人コストも上昇。残ったメンバーの負担が増え、結果的に“生産性”が落ちてしまいます。
つまり、「人への投資=コスト」と捉えるのではなく、「将来への種まき」として見る視点が必要なのです。
3. 顧客満足度を下げるコストカットは危険信号
たとえば、こんなケース。
・サポート対応時間の短縮
・使用していた高品質な資材のグレードダウン
・定期的な顧客フォローの省略
これらも一見、「経費削減できた!」と喜んでしまいそうですが、実際には顧客満足度を下げ、リピート率が下がり、売上がじわじわ減少することに繋がります。
数字に出てくる頃には、取り返しがつかない状況になっていることも…。
4. “信頼”という無形資産を損なう
経営には「見えない資産」がたくさんあります。そのひとつが「信頼」です。
たとえば、長年の税理士顧問、社労士顧問、取引先、スタッフ、さらにはお客様。これらすべてとの関係性は、お金に換算できないほどの価値を持っています。
・値引きばかり要求する
・何の相談せず急に契約を打ち切る
・“数字重視”を理由に冷たい対応をする
こうした姿勢は、知らず知らずのうちに“信頼残高”を減らしていきます。経営にとって最も重要な資産が、数字ではなく「心からの信頼」「人のつながり」であること、忘れてはいけません。
5. “未来の売上”を削ってしまうことも
短期的なコストカットばかりに目が向くと、未来に向けた投資ができなくなります。
・広告をやめた
・展示会やセミナーをカットした
・SNS更新を外注から内製に変えて放置
こうした削減が、数カ月後〜数年後の売上減少に繋がることも多いです。
「今、売上があるからいい」と思っていると、将来の集客チャネルを失ってしまいます。
経営のプロは、数字の“裏側”を見る
経営において「数字」はとても大事です。でも、それは“判断材料のひとつ”にすぎません。
コストカットをする際には、次の3つを意識してみてください。
-
本当にムダか?“代替効果”を検討する
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削る前に、“将来への影響”をシミュレーションする。特に人間関係が絡む影響が重要です。
-
削ったあとに“数字以外の変化”が出ていないか確認する
この“ひと手間”ができるかどうかが、経営者としての腕の見せどころです。
最後に:コスト削減は「戦略」として使う
コストカットは悪いことではありません。むしろ、上手に使えば会社を立て直す武器にもなります。
でも、数字だけを見て機械的に削るのではなく、“人”と“未来”を見据えて行うこと。
その判断ができる経営者こそ、長く愛され、信頼される企業をつくっていけるのです。
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。