
資金使途とは?融資審査で重要な理由と伝え方のポイント
目次
資金使途とは?金融機関が重視する理由
資金使途が明確なことがなぜ重要か
よくある資金使途の具体例
資金使途を説明する際のポイント
よくある質問(FAQ)
1. 資金使途とは?金融機関が重視する理由
ズバリ言います。「資金使途」とは、融資で借りたお金を何に使うのか、その“使い道”のことです。
金融機関は、貸したお金がどのように使われるのかを非常に重視します。なぜなら、資金の使い道がはっきりしないと、返済原資の予測が立てられないからです。
よく、「あまり詳しく聞かれなかった」という方もいらっしゃいますが、それは銀行員が裏できちんと内容を整理し、審査に耐えうる説明を整えているからに他なりません。
しかし、これはあくまで銀行側の“補完”です。本来は借りる側が「明確に、具体的に説明すること」が基本であり、これができるかどうかで審査結果に大きな差が出るのです。
2. 資金使途が明確なことがなぜ重要か
金融機関にとって、資金使途の明確さは融資審査の根幹とも言える要素です。
使い道がはっきりしていれば、返済可能性が読みやすくなる
数字の裏付けが取りやすくなる(売上増、利益率改善など)
経営者が“お金をどう使って成果を出すか”を理解しているかが見える
逆に、以下のような資金使途は、審査においてマイナス評価を受けるリスクがあります。
「とりあえず資金が欲しい」
「漠然とした運転資金」
「何に使うかまだ決めていない」
このように曖昧な回答では、審査担当者が不安を抱き、融資判断も慎重になる傾向があります。
3. よくある資金使途の具体例
では、実際にどのような資金使途が好ましいとされるのでしょうか。以下に具体例を挙げてみましょう。
① 増加運転資金
売上が順調に伸びていると、売掛金の回収までにタイムラグが生じたり、在庫の確保が必要になります。
例:「新規取引先が増加しており、月商が200万円から300万円に拡大。売掛債権の増加に伴う運転資金を200万円申請。」
このように「売上の伸びに対応するための資金」は、前向きな印象を与えることができます。
② 繁忙期に備えた仕入資金
業種によっては、繁忙期前に大量の仕入れが必要になります。
例:「毎年12月が繁忙期。前年は仕入総額が500万円だったが、今年は1.3倍の需要見込み。仕入資金を前倒しで調達。」
このように“季節性”を踏まえた資金使途も、非常に納得感が高いです。
③ 設備投資資金
生産能力を高めたり、サービスの質を上げるための投資。
例:「月産能力を500個から700個に増やすため、製造ラインの機械を1台追加(設備費用400万円)。売上増により、投資回収は2年以内の見込み。」
このように「何に・いくら・どんな効果があるか」を明示することで、銀行も積極的に協力しやすくなります。
4. 資金使途を説明する際のポイント
資金使途を説明する際には、以下の3つのポイントを押さえると効果的です。
① 具体的に、数字を交えて伝える
「運転資金」だけではなく、「売掛金が◯万円増えており、その資金が必要」と数字を添えることで、説得力が格段にアップします。
② 投資の場合は、回収見込みを示す
設備や広告に使う場合、その支出によって「どのくらい売上・利益が伸びるか」を示すと、金融機関の理解が進みます。
③ 曖昧な言い回しを避ける
「なんとなく必要」「念のため」などの表現はNGです。「こういう理由があり、この時期に必要」という明確な根拠が大切です。
5. よくある質問(FAQ)
Q1. 資金使途が複数ある場合、どう説明すればいいですか?
A. 使い道ごとに金額を分けて説明しましょう(例:運転資金200万円、設備資金300万円)。合計が申請額になるよう明確に整理します。
Q2. 言葉では説明できても、資料が用意できていないとマズイ?
A. 可能な限り見積書やシミュレーション資料があると望ましいです。提出が難しい場合は、内容だけでも詳細に伝えましょう。
Q3. 途中で資金使途を変えても大丈夫ですか?
A. 原則として、融資実行後に使途変更するのは避けるべきです。どうしても変更したい場合は、事前に金融機関に相談してください。
まとめ
「資金使途」は、融資審査の入口であり、信頼関係を築く第一歩です。
曖昧な説明では審査に時間がかかったり、減額されたりする可能性もあります。逆に、具体的かつ論理的に説明できれば、審査はぐっと前向きに進みます。
これを機に、ぜひ「自社の資金使途を明確に語れる」ように準備を進めてみてください。銀行からの評価も、資金調達のスピードも、大きく変わってくるはずです。
この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
補助金コンサルタント、融資・資金調達コンサルタント、
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。