
創業融資を受けるなら知っておきたい!公庫と民間金融機関の決定的な違い
創業融資を検討するとき、多くの起業家がまず候補に挙げるのが、日本政策金融公庫(公庫)と民間金融機関(銀行・信用金庫など)です。どちらも創業支援に力を入れており、「これから事業を立ち上げたい」「開業資金が必要」という起業家の強い味方です。
しかし、実際にどちらを選ぶべきか迷う方が非常に多く見られます。その理由の一つが、両者の審査基準や対応スタンスが異なるためです。特に、融資申請における「登記住所(本店所在地)」の扱いが大きく違うことは、意外と知られていません。
この記事では、日本政策金融公庫と民間金融機関の違いを詳しく比較し、特に「オフィスの形態」や「登記住所の影響」に焦点を当てて解説します。これを理解しておくことで、あなたの事業に最も適した金融機関を選び、スムーズな融資申請が可能になります。
目次
- 公庫と民間金融機関の決定的な違いとは?
- なぜ登記物件が重要なのか?金融機関の審査視点を解説
- シェアオフィス・バーチャルオフィスの扱いの違い
- 創業時の物件選びと金融機関の選び方
- よくある質問(FAQ)
- 無料相談のご案内
公庫と民間金融機関の決定的な違いとは?
創業融資を申請する際、起業家が最初に悩むのが「どこに申し込むべきか?」という点です。公庫と民間金融機関は、どちらも創業者を対象に融資を行っていますが、その性質と目的が異なります。
日本政策金融公庫は、政府系金融機関であり、創業支援を政策目的として行っています。つまり、民間では融資が難しい初期段階の事業でも、社会的意義や将来性が認められれば資金提供を受けられる可能性があります。
一方、民間金融機関は、あくまで営利事業として融資を行うため、より厳格な審査基準で「返済可能性」「経営実態」「リスク」を判断します。実績がない創業初期では、民間融資のハードルが高くなりがちです。
そして、両者の間で最も大きな違いが出るのが、登記住所=事務所の形態に対する考え方です。具体的には次のようになります:
- 公庫: シェアオフィス・バーチャルオフィスでも柔軟に対応(実態と事業内容を重視)
- 民間: 実体のあるオフィス・専有スペースが必要。フリースペースや住所貸しは不可のケースが多い
この違いを理解せずにシェアオフィスやバーチャルオフィスを登記すると、民間銀行で口座開設や融資が断られるケースも少なくありません。
なぜ登記物件が重要なのか?金融機関の審査視点を解説
民間金融機関が登記住所を重視するのは、「実態確認のため」です。銀行にとって融資とは「貸したお金が確実に返ってくるか」を判断する行為です。そのため、経営者がどこで事業を行っているのか、誰が運営しているのかを物理的に確認できることが重要になります。
例えば、次のようなリスクを防ぐためです:
- 登記住所が共有スペースだと、実際に事業をしているのか判断できない
- フリースペースの場合、担当者が現地訪問しても経営者に会えない
- バーチャルオフィスでは、郵便物の転送のみで実態不明
これらはすべて「実態不明=信用できない」と判断される要因になります。そのため、民間銀行では「専有スペース(個室)」「賃貸契約の明示」「現地訪問で確認可能」が原則条件とされています。
一方、公庫は政府系金融機関として、「創業支援」や「事業の将来性」を重視します。たとえシェアオフィスであっても、経営計画がしっかりしており、本人が事業の準備を真摯に行っていることが確認できれば、融資が実行されるケースは少なくありません。
シェアオフィス・バーチャルオフィスの扱いの違い
創業時はコストを抑えるためにシェアオフィスやバーチャルオフィスを選択する方も多いでしょう。しかし、どのオフィスでも同じように扱われるわけではありません。金融機関ごとの対応の違いを詳しく見ていきます。
日本政策金融公庫の場合
公庫は、事業の実態と経営者の信頼性を重視します。そのため、シェアオフィスでも以下のような条件を満たせば問題ないケースが多いです:
- 事業の具体的な活動拠点として利用していること
- 契約書や利用証明書などを提示できること
- 業務内容が明確で、今後の収益計画が合理的であること
また、バーチャルオフィスについても、コンサルティング業やオンラインサービス業のように、実店舗を必要としない業種であれば、審査対象になることがあります。
民間金融機関の場合
民間銀行や信用金庫では、「現地で経営者に会えるか」が大前提です。そのため、フリースペース型のシェアオフィスや住所貸しだけのバーチャルオフィスは、審査上マイナス評価になることが多いです。
ただし、次のようなケースでは前向きに検討されることもあります:
- 個室型のシェアオフィスを契約し、専有スペースを確保している
- 現地で業務を行っている証拠がある(設備・備品・スタッフ)
- 将来的に店舗・事務所を構える計画がある
このように、同じ「シェアオフィス」でも、利用形態や実態によって評価が大きく変わります。
創業時の物件選びと金融機関の選び方
創業時は、資金面の制約から「とにかく安く」「最低限の場所で」スタートしたいと考えるのが自然です。しかし、登記住所の選択は融資審査に直結する重要事項です。
次のような観点で考えると良いでしょう:
- 事業の実態をどれだけ説明できるか?
- 経営者としての信頼性をどのように示せるか?
- 将来の事業展開を見据えて、どんな住所がふさわしいか?
もし現時点で実体のある事務所を構えるのが難しい場合は、まずは公庫の創業融資からスタートするのがおすすめです。公庫で実績を作り、その後民間金融機関との取引にステップアップするという流れが、最も現実的でリスクの少ない方法です。
また、シェアオフィスを利用する場合は、可能な限り「個室型」を選び、契約書や利用証明を準備しておくことで、審査時に安心感を与えられます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 自宅を登記住所にしても融資は受けられますか?
A. はい、可能です。特に公庫では自宅兼事務所の登記も一般的です。ただし、業種によっては事業用スペースの有無を確認されることがあります。写真や間取り図を用意しておくとスムーズです。
Q2. バーチャルオフィスで公庫融資は通りますか?
A. 事業内容がオンライン完結型であれば可能性があります。特にIT系・コンサルティング業では実績があります。ただし、「住所だけ借りている」「実態がない」と判断されると厳しくなります。
Q3. 民間金融機関でシェアオフィスを利用していると融資は無理ですか?
A. フリースペース型は難しいですが、個室型であれば柔軟な対応が期待できます。現地訪問で実体を確認できれば、融資対象となる場合もあります。
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この記事のまとめ
- 公庫は柔軟な審査で、シェアオフィス・バーチャルオフィスでも融資可能なケースがある
- 民間金融機関は実体確認を重視。専有スペースがないと融資が難しい
- 登記住所は融資の可否を左右するため、慎重な選定が必要
- 迷ったら公庫を活用し、実績を作ったうえで民間金融機関へステップアップ
登記場所の選び方ひとつで、融資の可能性は大きく変わります。あなたの事業計画に合った最適な金融機関を選び、確実な資金調達を実現しましょう。
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。