
現金商売における融資審査と資金使途の重要性とは?
目次
現金商売とは?対象業種と特徴
融資審査で最も重要なのは資金使途
現金商売が抱える資金調達上の誤解
現金商売における資金使途の具体例
融資を受けるための準備とアドバイス
よくある質問(FAQ)
1. 現金商売とは?対象業種と特徴
「現金商売」とは、売上の大半を現金または即時決済で回収する業種のことを指します。
主な業種には以下が該当します。
飲食店(ラーメン店、カフェ、居酒屋など)
理美容室(美容院、理容室、ネイルサロンなど)
小売店(雑貨店、個人商店、八百屋など)
これらの業種は、売上が発生したその場で現金が手に入るため、「資金繰りに困らない」と見られがちです。
2. 融資審査で最も重要なのは資金使途
どんな業種であれ、銀行が融資をする際に最も重視するのが**「資金使途(しきんしと)」**です。
「このお金は何のために必要なのか?」
「その使い道は本当に妥当で返済できるのか?」
この質問に明確に答えられないと、いくら売上があっても、融資が通らないことがあります。
特に、現金商売は“運転資金が不要では?”と思われやすいため、資金使途の明確化がより重要になります。
3. 現金商売が抱える資金調達上の誤解
現金商売に対して、銀行員や周囲から次のような認識を持たれることがあります。
「現金で売上が立つなら資金は潤沢なはず」
「売掛金がないから資金繰りには困らないのでは?」
この誤解があるために、**「融資の必要性が見えにくい」**というハードルが発生します。
しかし実際には、現金商売でも以下のような場面で資金が必要となります。
新規出店や設備更新
クレジットカード決済の増加による資金タイムラグ
商品仕入れなどによる先払い費用の発生
4. 現金商売における資金使途の具体例
① 厨房機器や内装設備への投資(飲食店)
新しいフライヤーの導入や客席の改装など。飲食店では定期的な設備投資が求められます。
② 新店舗出店に伴う初期費用
保証金、敷金・礼金、スタッフの初期研修費など。現金回収型ビジネスでも、初期費用は大きな負担です。
③ クレジットカード決済の入金タイムラグ
現金ではなくキャッシュレス決済が増えると、入金が数日〜数週間遅れます。
売上があっても“現金が足りない”状態になることがあります。
④ 販売商品(シャンプー・ヘアワックス等)の仕入れ(理美容室)
商品販売用の在庫購入や、季節商品の仕入れも、融資の立派な資金使途です。
5. 融資を受けるための準備とアドバイス
現金商売だからといって、融資が受けにくいわけではありません。
重要なのは次の3つの準備です。
明確な資金使途を事前に整理しておく
事業計画に数字的な根拠を添える(例えば、設備導入で売上が〇%伸びる見込み など)
日頃から金融機関との関係を良好に保っておく
金融機関も、必要な融資には前向きです。説得力のある資料と説明があれば、現金商売でもしっかりと支援を受けることができます。
6. よくある質問(FAQ)
Q1. 現金商売は融資が通りにくいですか?
A. いいえ。資金使途が明確で、収支計画に納得感があれば、現金商売でも十分に融資は通ります。
Q2. クレジットカード決済が多いのですが、それも資金使途になりますか?
A. なります。入金までの資金ギャップを補うための「短期運転資金」として融資を受けることが可能です。
Q3. 理美容室で商品仕入れのために借入できますか?
A. はい、可能です。商品販売の実績や見込みがある場合には、仕入資金も正当な使途になります。
まとめ
現金商売でも、「融資が必要になる場面」は少なくありません。
その際に大事なのは、“なぜ必要なのか”を明確に伝える資金使途の説明力です。
飲食店や理美容室でも設備・仕入・キャッシュフローなどで資金は必要
「現金商売=融資不要」は誤解
融資を受けるには、具体的かつ論理的な資金使途を準備することが重要
今後の資金調達の参考に、ぜひ本記事を役立ててくださいね。

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
補助金コンサルタント、融資・資金調達コンサルタント、
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


























