
日本政策金融公庫の借り換えってできるの?起業準備中の会社員に贈る資金繰りの新常識
はじめに:1年後に起業を見据えるあなたへ
ズバリ言います。起業準備において「資金繰り」は命綱です。
起業してすぐに軌道に乗ればいいのですが、現実はそう甘くありません。特に最初の1年はキャッシュアウトが多く、売上が思うように立たないケースもよくあるんです。そんなときに頼れるのが「日本政策金融公庫」の融資制度。ですが、借りたら終わりではありません。今日はあまり知られていない「借り換え」について、やさしく解説していきます。
第1章:そもそも「借り換え」って何?
まず「借り換え」とは、既存の借入を新たな借入で返済し、条件のよいローンに乗り換えることをいいます。
民間銀行ではよくある話ですが、「日本政策金融公庫(以下、公庫)」では原則として“借り換え目的の融資はNG”とされています。
……が、ここがポイント!
実は“条件を満たせば可能なケースもある”のです。
では、どんなときに借り換えが可能になるのか、次章で見ていきましょう。
第2章:公庫で借り換えができる3つのケース
ケース① 同一名義での再融資(借り換え的利用)
起業後、運転資金として借りた融資が満額に近づいてきた…。そんなとき、売上が堅調で事業も安定していれば、「再度の融資」が検討されることがあります。
このとき、新しい融資を受け、その資金で既存の借入を完済する…という形を取ることも。これは“実質的な借り換え”といえます。ただし、公庫ではその用途を“あくまで新たな事業展開のため”とする必要があります。
ポイントは、「事業の成長性」を示すこと。例えば以下のようなケースです。
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仕入が増えて資金需要が大きくなった
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新規取引先との契約で運転資金が必要
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設備投資により生産性が向上する見込み
こうした背景が明確であれば、公庫の担当者も前向きに検討してくれます。
ケース② 個人事業→法人への切り替え時の借り換え
「個人で借りた公庫の融資、法人化したあとも引き継げるの?」というご相談、実によく受けます。
答えは――「原則不可。ただし例外あり」。
法人を設立した段階で、法人と個人は“別人格”になります。したがって、法人の口座に個人名義の借入金を移すことはできません。
ですが、「法人としての新規融資を受けて、個人時代の借入を一括返済する」ことは実務上よくあるケースです。
このとき、個人借入の完済に充てる部分については「自己資金」とみなされる場合も。法人としての事業計画、資金繰り表、借換理由をきちんと説明すれば、柔軟に対応してもらえることもあるのです。
ケース③ 「条件変更改善型借換融資」の活用
2020年以降のコロナ禍を受けて、公庫は「条件変更改善型借換融資」という制度を一時的に導入していました。
これは、既存の返済条件を変更(リスケ)している方でも、事業の改善計画を提出すれば借り換えができるというもの。
現在この制度は限定的運用ですが、再導入される可能性もあります。情報収集は欠かさず行いましょう。
第3章:借り換え時に気をつけたい3つのポイント
①借換理由はポジティブに伝える
「資金が足りない」「返済が苦しい」というネガティブな理由だけでは、借換の審査は通りません。
「売上増加に伴う資金需要」や「金利低下によるコスト削減」など、前向きな理由付けがカギです。
②資金使途を明確に
「何に、いくら使うのか?」が曖昧だと審査でつまづきます。設備投資や仕入れ、人件費、広告費など、細かく明示しましょう。
③返済能力を冷静に見直す
借換後は返済額が減ることもありますが、借入期間が延びる分、総返済額が増えることも。無理のないキャッシュフロー計画を組みましょう。
第4章:こんなとき、どうする?よくあるFAQ
Q:借り換え後、すぐに追加融資は可能?
A:原則、一定期間(6か月~1年)は新規融資は難しいと考えてください。ただし、計画が明確であれば可能性はあります。
Q:保証人が変更になることはある?
A:はい。特に個人事業から法人へ切り替える際、代表者の連帯保証が必要になる場合があります。
Q:借換の相談はどこにすれば?
A:まずは取引のある公庫支店に相談を。場合によっては、認定支援機関を通す方がスムーズなケースもあります。
おわりに:借り換えは「悪」ではない。むしろ“戦略”です。
いかがでしたか?「借り換え=苦しいからする」というイメージを持たれる方も多いですが、実は「攻めの資金戦略」として使うことも可能なんです。
今のうちから準備しておけば、いざというとき慌てずに済みます。
事業計画書の見直し、資金繰り表の作成、自己資金の蓄積…。やれることはたくさんあります。ぜひこのタイミングで一歩を踏み出してみてください。
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。



























