
起業前に知っておきたい「運転資金」と「融資」のリアル
はじめに:運転資金って何?どうして大事なの?
ズバリ言います。運転資金とは「日々の経営を回していくために必要なお金」です。会社を立ち上げると、商品を仕入れたり、家賃を払ったり、人件費を支払ったりと、いろんなお金がかかってきます。
「売上が入ってきてから払えばいいんじゃない?」と思うかもしれませんが、現実はそう甘くありません。多くの経費は先に支払う必要があるのです。
そこで必要になるのが「運転資金」。つまり、売上が入るまでの間をつなぐお金、これが事業継続の生命線になります。
会社員には馴染みが薄い「運転資金」
会社員時代は、給料として毎月安定収入がありますよね。でも起業すると、売上がない月も出てくる。そんなとき、固定費は待ってくれません。
この「固定費」の代表格が以下です:
- 家賃(事務所や店舗)
- 人件費(従業員や自分の生活費)
- 水道光熱費、通信費
- 広告宣伝費
- 税理士報酬などの外注費
これらを先に払って、あとから売上を回収する。これが運転資金の必要性です。
起業直後の資金ショートが多い理由
失敗パターンとしてよくあるのが「設備資金は用意していたけど、運転資金が足りなかった」というケース。店舗の内装やパソコンは買えたのに、その後の人件費や広告費が払えず、立ち上げ早々に資金繰りに行き詰まる。これは非常にもったいない話です。
起業準備段階で「どのくらいの運転資金が必要なのか」をしっかり見積もり、それをどう確保するのかを考えておくことが、成功へのカギになるのです。
融資で運転資金をまかなうという考え方
「自己資金だけで全部まかなうのは大変……」
そんなときに活用したいのが「融資」です。運転資金も、創業融資でまかなうことが可能です。代表的なのが以下の2つ:
日本政策金融公庫の創業融資
- 設備資金とあわせて運転資金も申請可能
- 無担保・無保証人で借りられる場合あり
- 固定金利で返済計画が立てやすい
自治体の制度融資
- 信用保証協会が保証
- 地方銀行や信用金庫が窓口
- 利子や保証料の補助が出る場合も
これらを上手に活用すれば、「資金ショートの心配をせず、腰を据えて事業に専念できる」状態を作ることができます。
融資を受けるときのポイント:使い道の明示
運転資金として融資を受ける場合、計画書の中で「何にいくら使うか」をきちんと示す必要があります。
例えば:
- 広告宣伝費:月10万円 × 3ヶ月 =30万円
- 役員報酬:月20万円 × 3ヶ月 =60万円
- 外注費:月5万円 × 3ヶ月 =15万円
といった具体的な積算が求められます。
これが「なんとなく100万円必要です」では審査は通りません。数字の根拠を示すこと、それが信用につながります。
運転資金の目安:最低3ヶ月分を確保
ズバリ目安を言いますと、「最低でも3ヶ月分の運転資金」は確保しておくべきです。理想は半年分。
なぜなら、ビジネスはすぐには安定しません。売上が思ったより立たない、広告効果が出ない、そんな「想定外」に備える意味でも、余裕を持った資金確保が重要です。
融資審査で見られるポイント(復習)
- 自己資金の額と貯め方
- 起業経験・スキルの有無
- 数字に基づいた現実的な事業計画
- 信用情報(過去のクレジット履歴など)
- 返済計画の妥当性
これらを整えていれば、運転資金目的の融資も十分に可能性があります。
今から始めたい準備リスト
- 毎月の固定費をリストアップする
- その合計の3~6ヶ月分を運転資金とする
- 自己資金を貯める(通帳に記録を)
- 事業計画書の作成を始める
- 融資制度について調べておく
- 無料相談を活用してプロの意見を聞く
FAQ:よくある質問
Q. 運転資金だけを融資で借りることはできますか?
A. はい、できます。用途が明確で返済計画が立てられていれば、運転資金単独での申請も可能です。
Q. 運転資金の使い道はどこまでOK?
A. 広告費、人件費、家賃、通信費、税理士報酬など、事業運営に必要な経費であれば認められます。
Q. 運転資金が多めに必要な業種ってありますか?
A. はい。仕入れが先行する小売業や飲食業などは特に多く必要です。
Q. 融資で調達した運転資金、何に使ったか報告は必要?
A. 原則的には事後報告はありませんが、帳簿や通帳で明確にしておくことは必須です。
おわりに:運転資金を味方に、堅実なスタートを!
起業の成功には「勢い」も大切ですが、「冷静な資金管理」はもっと大切です。運転資金をしっかり確保することで、売上が思ったように立たなくても、焦らず、ぶれずに進める安心感が得られます。
そして、融資はその力強い味方になります。
起業のスタートラインに立つ前に、今からできる準備を一歩一歩始めていきましょう。
あなたの挑戦を、心から応援しています!
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。