このコラムもここしばらく堅苦しい話題が続きましたので、今回は軽めの話題にします。
テーマは金融機関の「口座開設」です。
起業する際に法人での事業を検討されている方は是非ご参考にされて下さい。
法人で事業を開始する際には、売上金の入金や経費の支払い、クレジットカードや借入金の返済のために普通預金口座が必要になります。
個人事業で始める方も、事業用の「普通預金口座」は開設した方が良いでしょう。
しかし、最近はこの普通預金口座の開設がヒジョーに厳しい状況にあるのです!!
以下の話は実際にあった事例です。
法人の登記が完了し、日本政策金融公庫からの融資の承認も得ました。
最後の一手と意気揚々と返済口座の手続きのために社長の自宅の最寄り金融機関へと口座開設に向かいます。
大きな銀行では口座が作りにくいと先輩経営者から教えてもらっていたので、信用金庫で口座開設しようと考えました。
ところが!
「御社の本店登記地の最寄りの支店で口座を開設してください」と別の支店を紹介され、その日は口座の開設ができませんでした。
後日、本店登記地の最寄りの支店へと出向き、口座の開設を申し出ました。
ところが!
「お調べしましたところ、本店登記地がバーチャルオフィスとなっています。当金庫では事業実体のないバーチャルオフィスでは口座を開設いたしかねます。」
「え!?」
...
このような事例が最近非常に増えています。
一昔前までは、「某赤い銀行は小規模事業者の開設ができない」や「法人や社長の住所とその支店があまりにも遠い」など、口座開設を断られるケースはごく稀でした。
しかし、最近は断られるケースが目立ってきています。
近年で見られる代表的な断り理由は以下のような事例です。
- 社長の自宅の最寄り支店ではなく、本社住所の最寄り支店での口座開設を促される
- 本社登記地がバーチャルオフィスであり、事業実態がない
- 本社登記地がシェアオフィスであり、独立した空間がない(フリーアドレス)
- 道一本の違いで隣の支店のテリトリー(隣の支店では開設OK)
- 本店登記地が知人のオフィスを間借りしている状態(賃貸借契約が存在しない、もしくは知人から又貸しされている状態)
このような対応を受け「何故口座が作れないんだ!」と苛立ちを隠さない経営者の方もいらっしゃいます。
しかし、私はもともと金融機関の職員でしたから、金融機関側の立場もわかります。
正直、法律や監督官庁(金融庁など)や警察からの重圧もあり、金融機関も致し方なくそのような対応を取っているケースがほとんどです。
2000年を過ぎたあたりから「オレオレ詐欺」をはじめとした「振り込め詐欺」が横行。
また、その詐取された資金が反社会的勢力の資金源となっていることを重く見た警察など犯罪収益移転防止やマネロン防止のために、口座開設人の本人確認を厳格にしました。
新規に口座開設しに来たお客様が反社会的勢力の一味であるか否か、また過去に反社会的勢力に預金口座を売却・譲渡した者でないかを実は秘密裏に確認しています。
もちろん、上記のチェックに該当すれば口座の開設は出来ません。
その流れで最もあおりを食ったのが、新設法人の口座開設ではないでしょうか。
個人(個人事業主を含む)であれば、住所が本人確認の場所となるので、確認は容易です。
しかし、法人の場合は「本店登記地で事業を行っていること」が条件となっており、バーチャルオフィスではこの条件ではクリアできないのです。
また、シェアオフィスなども犯罪を目的としたペーパーカンパニーの登記に悪用されやすく、金融機関から警戒されやすいのです。
結果として、法人での新規口座開設は非常に難易度が上がってしまっている状況です。
今の金融機関は「売上の入金などで口座は利用して欲しいが、無用なトラブルには巻き込まれたくない」というマインドとなっており、
口座開設に消極的にならざるを得ない状況となっているのです。
弊社にご相談に来られたお客様には、このような環境であることを情報共有し、法人を登記する場所からコンサルティングを行います。
情報を持っていないがために、口座が開設できず、資金の借入もできず、事業がいつまでたっても始められないのはもったいないと考えているからです。
結構重要な情報にもかかわらず、意外と教えてくれる人は居ません。
このコラムが少しでもお役に立てれば幸いです。
V-Spiritsグループでは起業支援を全般的に行っています。
今回のように登記前に知っておくべき情報も意外と多いので、起業を思いついたら是非V-Spiritsへご相談ください。