
いまさら聞けない「市場細分化」ってなに?──事業成功のための“顧客の分け方”入門
「市場細分化(セグメンテーション)」は、マーケティングや戦略立案で登場する基本概念ですが、聞いたことはあっても「実際どう使うか?」と悩む方もいると思います。シンプルに言えば、全体の“市場”を複数のグループに分けて、自社が狙いやすい領域に集中するための戦略です。今回はその意味、手順、実務での活用方法を丁寧に整理しました。
① 市場細分化とは何?
市場細分化とは、「全体のお客さまをいくつかの“セグメント(小さな市場)”に分けること」。たとえばランニンググッズ市場なら:
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初心者用
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マラソン常連ランナー
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トレイルランナー
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健康志向の中高年層
のように「属性」「関心」「行動パターン」などによって分けられます。これにより、自社が得意なセグメントへリソースを集中できるようになります。
② なぜ市場細分化が重要なのか?
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効果的な集客ができる
→ 伝えたい相手や媒体が定まり、広告・販促・マーケティングの精度が上がる -
商品・サービス設計が明確になる
→ メニューの内容・価格帯・訴求ポイントを個別に設計できる -
競合と差別化しやすい
→ 狙いを絞ることで、他社が手薄な市場を見つけやすい -
限られたリソースを最適活用
→ 全方位展開ではなく、小さくても深く手を伸ばした方が成果が出やすい
③ 市場細分化の進め方――4ステップで実務に落とそう
ステップ① 市場全体を明確にする
まずは自社の関わる業界や領域、その中の“誰に対して価値を届けたいか”を整理します。
ステップ② 分析軸を選ぶ
以下の視点でセグメント化します:
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地理的要素:都市部/郊外/地域特化など
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人口統計学的要素:年齢/性別/家族構成/所得など
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心理的要素:価値観/ライフスタイル/嗜好など
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行動的要素:買い方/頻度/価格感覚など
どれか2~3軸でチェックできるようにします。
ステップ③ セグメントごとの特徴を整理
各セグメントに対し、以下のような切り口で分析します:
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ニーズ・課題は何か
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市場規模や購買力(数・単価・回転)
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競合環境はどうか
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自社との相性(強みが活かせるか)
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アクセスしやすさ(接点の取りやすさ)
これにより、「どこに注力すべきか」が見えてきます。
ステップ④ 優先セグメントに集中した戦略を立てる
分析結果をもとに優先順位をつけ、以下を設計します:
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対象顧客(ペルソナ)
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提供する価値(USP)
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適切な価格・商品設計
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集客導線(SNS・広告・紹介など)
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評価方法(売上・アクセス・反応率など)
④ 市場細分化を実務に反映させる工夫
フェーズ | やること |
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商品開発 | ペルソナセグメントに特化した商品・サービス設計を行う |
販促・広告 | メディアや広告文言をセグメント別にパーソナライズする |
営業・接客 | 会話や提案をセグメントのニーズに応じて最適化する |
顧客管理 | 顧客属性をタグ付けし、メールやフォローをセグメント別にカスタマイズ |
PDCA | セグメントごとの反応率・売上を分析し、改善や再設計に活かす |
⑤ 成功事例・失敗事例から学ぶ
成功例
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スマホアプリ:年齢別にUIや訴求ポイントを分け、若年層/高年層で別施策を展開
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ECショップ:区分ごとに特集ページを設け、購入率が30%向上
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BtoBサービス:業界別にセミナー内容を最適化し、参加者満足度を上げて契約率が上昇
失敗例
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全方向にメッセージを投げすぎて反応が低下
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過度な細分化でリソースが分散し、すべて中途半端に
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セグメント設定が曖昧なため、施策がブレて成果に結びつかない
⑥ 注意点と実践ヒント
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セグメント数は3〜5程度がバランス的 → 多すぎると管理負担が増えます
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定期的なレビューがカギ → 市場変化に応じて見直しを
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セグメント内でもペルソナ設計を併用 → より深い施策が可能に
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セグメント間の導線も設計 → 成長段階によって移行導線を準備する
✅まとめ:市場細分化は“狙いを定める”ための基本技術
市場細分化は、「誰に売るか」を定める最初の一歩です。属性・行動・価値観などで顧客を分け、自社の強みと相性の良いセグメントにリソースを集中することで、戦略はより鋭く、効果はより高くなります。実務で成果を出すには「分ける→狙う→検証→調整」のサイクルが重要です。
「うちの事業、どこを狙えばいいの?」と悩んでいる方は、市場細分化から始めてみることをおすすめします。具体的なセグメント設計や導線設計のご相談も、いつでもお気軽にどうぞ。あなたの事業の“的確な一歩”を一緒に見つけましょう!
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。