
海外在住の代表者だけでは法人口座の開設ができない現実とは?
ズバリ言います。海外に住んでいる方が、単独で会社の代表者になった場合、日本の銀行で会社名義の口座を開設するのは、かなりハードルが高いというのが実情です。
会社設立は可能。でも、口座開設で壁にぶつかる
当事務所でも、海外在住の方が日本で会社を設立するケースは年々増えており、設立そのものは、法務局への登記申請によって問題なく進められます。税務署への届出も受理されますし、法人番号も付与され、立派な「法人」としてのスタートは切れるわけです。
しかしその後、最初の関門とも言えるのが「会社名義の銀行口座」の開設です。実はここで、思わぬ壁にぶつかることが少なくありません。
金融機関が慎重になる理由
日本の金融機関は、代表者の住所が「日本国内」にない場合、会社名義の口座を開設しない方針をとっているケースがほとんどです。たとえ代表者が日本国籍であっても、例外ではありません。
その理由は大きく3つあります:
- 本人確認のための窓口訪問が難しい(帰国しても一時的)
- 金融機関がリスクヘッジとして連絡のつきやすさを重視
- 万一の際に対応できる体制を求められる
つまり、金融機関からすれば「海外在住の代表者=連絡が取れない・確認が難しい」という不安要素になってしまうのです。
例外的に対応する金融機関もあるが…
中には、以下のような条件をクリアすれば、検討してくれる金融機関もあります。
- 日本国内で納税している実績があること
- 日本在住の保証人がいること
しかし、これはあくまで「稀な例外」。多くの銀行では、やはり「代表者が日本に住所を有していること」が大前提です。
代替策として考えられる方法
では、どうすればよいのでしょうか?ここが実務のポイントです。
①日本に一時帰国したタイミングで口座開設を行う
将来的に日本に戻る予定があるなら、帰国時に代表者自身が口座開設を行うのが一番確実です。それまでの間は、個人名義の口座で代用するという形も現実的な対応といえるでしょう。
②日本在住の人物に共同代表になってもらう
もし常時海外にいるという場合には、国内在住の信頼できる方を共同代表取締役(または代表社員)に就任してもらうことで、会社名義の口座開設が可能になります。
この場合、会社設立の時点であらかじめ共同代表として登記するのがベストです。登記後に役員追加・変更も可能ですが、費用や手続きの面で少々手間がかかるからです。
注意点:「名義貸し」は厳禁!
口座開設のためだけに「名前を貸してもらう」ような行為は絶対に避けましょう。これは法的にも問題があり、金融機関から口座を凍結されたり、最悪の場合は詐欺的行為と判断されることもあります。
経営に直接タッチしないまでも、代表として登記に残しても大丈夫な信頼できる方に就任してもらうのが原則です。
なぜ会社名義の口座が必要なのか?
「とりあえず個人口座で回せばいいじゃないか」と思う方もいるかもしれません。しかし、以下の理由から、会社名義の口座は絶対に必要です。
- 顧客からの入金の信頼性が格段に変わる
- 税務上、会社と個人の資金が混在すると経費処理が煩雑に
- 補助金や助成金、融資の受け入れ口座として必須
まとめ
海外在住の方でも、日本で会社設立は可能です。ただし、「設立できること」と「スムーズに事業を進められること」は別物。特に法人口座の開設については、事前にしっかりと計画しておくことが必要です。
もしご不安があれば、当事務所では実績豊富なサポート体制を整えております。お気軽にご相談くださいね。