
信用コストとは?金融機関が融資時に計上する「見えないコスト」を徹底解説
当コラムをご覧いただき、誠にありがとうございます。
今回は、
「信用コスト」
という、少し聞き慣れないけれど、融資を考えるうえで非常に重要な概念について解説します。
この信用コストを理解すると、
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なぜ銀行が慎重なのか
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なぜ保証協会付き融資を勧められるのか
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なぜプロパー融資のハードルが高いのか
といった疑問が、スッと腑に落ちるはずです。
目次
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信用コストとは何か
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信用コストはどんな性格のコストなのか
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信用コストの具体的な計算例
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金融機関の利益構造と信用コストの関係
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格付け・担保と信用コストの関係
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なぜ保証協会付き融資が提案されるのか
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財務体質改善でプロパー融資を目指そう
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よくある質問(FAQ)
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無料相談のご案内
信用コストとは何か
金融機関特有の「見えないコスト」
信用コストとは、
金融機関が「貸したお金が返ってこない可能性」をあらかじめ費用として見積もるコストのことです。
以前のコラムで、
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格付け
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実質金利
について触れましたが、信用コストはそれらと密接に関係しています。
金融機関は「お金を貸す」ことが仕事です。
そのため、どうしても避けられないのが、
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貸倒(返済不能)
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延滞
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条件変更
といったリスクです。
このリスクを、
あらかじめ数字として費用化しているもの
それが信用コストです。
信用コストはどんな性格のコストなのか
一般企業でいう「貸倒引当金」に近い
信用コストは、
一般企業でいうところの 貸倒引当金 に近い性格を持っています。
つまり、
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すべての融資が返ってくる前提では考えない
-
一定割合は「返ってこない」と見込む
という考え方です。
言い換えると、信用コストとは、
「貸したお金が返ってこない確率」
「お金をとりっぱぐれる確率」
を、あらかじめ費用として織り込む仕組みなのです。
信用コストの具体的な計算例
数字で見るとイメージしやすい
では、具体例で見てみましょう。
前提条件
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融資先:100社
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融資額:1社あたり100万円
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金利:年利3%
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格付け:全社「正常先」
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倒産確率:2%
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保全率(担保・保証協会):80%
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非保全率:20%
計算の流れ
① 貸出金総額
100万円 × 100社 = 1億円
② 年間の利息収入
1億円 × 3% = 300万円
(※今回は元本返済による減少は考慮しません)
③ 信用コスト
1億円 × 倒産確率2% × 非保全率20%
= 40万円
金融機関の利益構造と信用コストの関係
利息=そのまま利益ではない
ここが、経営者の方にぜひ知っておいてほしいポイントです。
金融機関は、
利息300万円をそのまま利益とは考えていません。
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利息収入:300万円
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信用コスト:▲40万円
👉 実質的な収益は260万円
この260万円から、
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人件費
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店舗・不動産費用
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システム費用
などを支払い、
最終的に残ったものが利益になります。
つまり、信用コストが高い融資ほど、
金融機関にとっては「うま味が薄い融資」になるのです。
格付け・担保と信用コストの関係
格付けが下がると信用コストは上がる
信用コストは、
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格付けが下がるほど上昇します
(=倒産確率が上がる)
また、
-
無担保プロパー融資
(=非保全率が高い)
場合も、信用コストは上昇します。
その結果、金融機関の本音としては、
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財務内容が悪い先には貸したくない
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無担保での融資はできるだけ避けたい
という判断になりやすくなります。
なぜ保証協会付き融資が提案されるのか
金融機関側の「合理的な判断」
地方銀行や信用金庫、信用組合に
運転資金の借入を申し込むと、
「まずは保証協会付き融資からいきましょう」
と言われることが多いと思います。
これは、
金融機関が慎重すぎるからではありません。
保証協会付き融資の場合、
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保全率が高まる
-
非保全率が下がる
-
信用コストが大幅に下がる
というメリットが、金融機関側にあります。
つまり、
信用コストを抑えられる融資から提案するのは、ごく自然な判断なのです。
財務体質改善でプロパー融資を目指そう
プロパー融資は「財務への通信簿」
このような背景を知らずに、
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決算書を気にしない
-
財務改善に取り組まない
でいると、
いつまで経ってもプロパー融資は検討されません。
プロパー融資を受けられるかどうかは、
会社の財務体質に対する金融機関からの評価そのものです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 信用コストは会社側が支払うものですか?
A. いいえ。金融機関が内部的に計算しているコストです。
Q2. 金利が低くても信用コストは高いことがありますか?
A. あります。格付けが低いと、低金利でも信用コストは高くなります。
Q3. プロパー融資を受けるには何が重要ですか?
A. 継続的な利益確保と、財務体質の改善が重要です。
【無料相談のご案内】
V-Spiritsグループでは、
財務診断を無料で実施しています。
-
自社の信用コストがどう見られているか
-
マル保から抜け出せる可能性があるか
-
プロパー融資を目指すために何を改善すべきか
といった点を、実務目線でアドバイスしています。
弊社では、中野裕哲を中心とした
起業コンサルタント®、経営コンサルタント、税理士、社会保険労務士、行政書士、司法書士、
中小企業診断士、FP、元日本政策金融公庫支店長、元経済産業省系補助金審査員などの
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。



























