
借り方の再構築で経営を変える!資金使途の整理が生む「現金」と「選択肢」
さて、これまで計8回に渡り、様々な資金使途(お金の使い途)と融資の関係性を解説してきました。
それぞれの事業者さんには、様々な資金使途があり、それに応じて適切な資金調達(借入)の仕方があることがお分かりいただけたかと思います。
そして、適切な資金調達の方法を知っていれば、金融機関との融資交渉も格段にスムーズになることもお分かりいただけたでしょう。
これまでの総括
では、これまでのコラムで書いた一連の流れをおさらいしてみましょう。
- 企業に大切なのは「現金」と「選択肢」です。より多くの「現金」持つことは、あらゆる制限・ストレスからの脱却といえます。
- その「現金」は自己資金に限らず、「借入金」でもOK。
- では、金融機関からより多くの資金調達をするには?
- 金融機関が「納得できる」ような資金使途(お金の使い途)を知りましょう。
- そもそも自社ではどのような資金がいくら必要なのかを知り、本来あるべき借り方を知りましょう。
- 「本来あるべき借り方」に直せば、以下のようなメリットが受けられる可能性あり!
- 毎月の返済額が減らせる
- 返済額の減少と使途の明確化により結果として借入可能額が増える
- 金利を下げられる可能性がある
- 保証人を外せる可能性がある(一部もしくは全部)
- 担保を外せる可能性がある(一部もしくは全部)
これまでにコラムで書いた内容を基に、「借り方を再構築」しましょう!
そして、上記のメリットと「現金」「選択肢」を手に入れましょう!!
というのが、この一連のコラムの目的です。
借り方を再構築するためのステップ
では、私たちのような専門家はどのように「借り方を再構築する」ためのコンサルティングを行うのでしょうか?
順を追って説明していきます。
① 財務診断の実施
まず、必要となるのが「財務診断」という作業です。
決算書(試算表)や返済予定表、不動産登記簿謄本などの書類を基に、その企業の財務内容を診断します。
- 決算書の資産の部には不良債権が含まれていないか?
- 社有不動産の銀行評価額はいくらか? 担保には入っているか?
- 安心できる現金残高は本来いくらなのか?
- 借入は長期借入に偏っていないか?
- 借入が複数本並行しており、毎月返済が過多になっていないか?
- 借入金の中に役員借入がどれだけあるか?
- 償還力(純利益+減価償却)はどれくらいあるか?
など、様々な角度から分析をしていきます。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、いわゆる指標分析(流動比率や自己資本比率など)ではなく、あくまでもその企業の体力や実態を把握するための分析となり、やや特殊なノウハウが必要になります。
このような生きた「財務診断」は、一種の「職人技」といえるかもしれません。
② 金融機関との関係性を整理
次に、各金融機関との関係性をヒアリングします。
- メインバンクはどこの銀行と認識しているか?
- 担当者だけでなく、支店長・役員(理事)クラスともコミュニケーションが取れているか?
- 売上の入金はどの銀行か?
- プロパーで貸してくれたことのある銀行はどこか?
- 企業の事業所からの物理的な距離感は?
- 社長個人での借入のある銀行はあるか?
これから行う「借り方の再構築」は各金融機関の理解が必要なケースがほとんどです。
それぞれの金融機関に「融資の好み」や「得意・不得意」があり、借入金を振り分ける必要があります。
その過程で一時的に融資取引が途切れてしまう銀行も出てくるでしょう。
しかし、「金融機関とは決してケンカをしてはいけません!」
その金融機関にも趣旨を理解してもらい、他の方法で報うように取り計らいましょう。
金融機関とて無駄にケンカをして、優良な取引先を失う必要は無いのです。
③ 借り方を再構築した事業計画の提示
次に、「財務診断」に基づき、「借り方を再構築した」事業計画書を金融機関に提示します。
その企業の財務内容に基づき①経常運転資金②長期運転資金③設備資金④季節資金⑤つなぎ資金の5種類に借入金(既往分+新規借入分)を色分けします。
それぞれの借り方に合理的な根拠を明示し、借入全体を「リストラクチャリング(再構築)」します。
再構築の具体例
---------------------------------------- (再構築前) ・資金使途はあやふやな8本の長期借入金が混在、合計残高は3億円。毎月約500万円もの返済があり、完済しては借りなおす状況となっていた。 (再構築後) ・経常運転資金 1億円(利払いのみ、元本返済無し) ・設備資金(工場) 1億円(建物の耐用年数に合わせ15年返済、毎月55万円返済) ・設備資金(機械) 5,000万円(機械の耐用年数に合わせ5年返済、毎月83万円返済) ・季節資金(納税+賞与) 500万円(基本ルールに基づき6ヶ月返済、毎月83万円) ・長期運転資金(これまでの差額) 4,500万円(5年返済、毎月76万円返済) ----------------------------------------
このように「金融機関が納得する使途・返済期間」に直すことで、毎月の返済額が大きく減少しました。
(500万円→297万円と40%削減!)
もちろん、この企業の償還力(純利益+減価償却費)が297万円×12ヶ月あることが、ある程度前提となります。
償還力に余裕があれば、借入を増額することも可能です。
再構築による効果
金融機関側も資金使途が明確になったことで、返済計画や事業計画の輪郭もはっきりとし、今後の前向きな投資(設備・広告・人材など)にも積極的に融資しやすくなります。
合理的な根拠を持って返済期間を再設定していることから、いわゆる条件変更(リスケ)には当たらず、今後も資金調達は可能です。
むしろ、毎月返済額が減少した分、「きちんと返済できる」と安心感が広がり、今後の融資も積極的に検討してくれることでしょう。
副次的な効果
- 保証協会付→プロパーに乗り換えることで調達コスト(金利+保証料)が下がる
- 適切な資金使途にしたことで、担保が一部ないし全部解除できる
- 適切な資金使途にしたことで、保証人が一部ないし全部解除できる
借り方再構築の最終的な目的
以上のようなプロセスを経ることで、「借り方を再構築」し、金融機関と良好な関係を維持したまま「現金」と「選択肢」を手に入れることができます。
前述の通りですが、「現金」と「選択肢」を手に入れることで前向きな投資を思い切って行うことができ、また、社長自身が資金繰りに頭を悩ませることなく「事業に専念」することができます。
V-Spiritsグループの支援
私たちV-Spiritsグループは「社長に事業に専念していただく」ことを基本理念としています。
そのために、必要な支援を惜しむことはありません。
V-Spiritsグループでは「借り方の再構築」の第一歩である「財務診断」を無料で実施しています。
ご関心のある方は是非お気軽にご連絡下さい。
事業承継にも効果的
また、このような「借り方の再構築」は事業承継の準備段階にも非常に有効です。
後継者(親族や従業員)に引き継ぐ際はもちろんのこと、事業の売却も視野に入れている方は是非「借り方の再構築」を検討してみてください。
後継者の立場からしても「無暗に借金がある状態」よりも、「合理的に説明でき、返済可能な借金」の方が当然に安心感があります。
また、事業を売却する際の買い手からしても、「合理的に説明でき、返済可能な借金」であることで評価も高まり、売却交渉(価格などの条件交渉)も有利に進めることが可能です。
まとめ
V-Spiritsでは「資金繰りの改善」「借り方の再構築」「事業承継の準備」のいずれもご相談いただくことができます。
非常に長編かつややマニアックなコラムとなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、皆さまからのご相談をお待ち申し上げております。
【無料相談のご案内】
起業の手続きって何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!
この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
補助金コンサルタント、融資・資金調達コンサルタント、
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。