前回から引き続き「団体信用生命保険」についてお話していきたいと思います。
「団体信用生命保険」の基本知識については「団体信用生命保険について(基礎編)」のコラムをご参照ください。
今回からは事業融資での「団体信用生命保険」の利用について解説していきます。
では、事業融資での「団体信用生命保険」の特徴を解説していきます。
【個人事業主の場合の債務者本人、もしくは法人の連帯保証人(基本的に社長)しか加入できない】
個人事業主の場合のご本人が加入するパターンはイメージが付きやすいかと思います。
事業自体がご本人の資質によるところが大きく、ご本人が死亡された場合に事業を引き継げる方がいないため、団信での保障が必要になります。
一方で、法人の場合は「連帯保証人」が居ることが前提となっています。
近年では日本政策金融公庫をはじめ「連帯保証なし」での借入も可能になってきています。
社長が死亡しても、社内に後継者がいる場合はあえて「連帯保証あり」を選択し、社長が死亡した際に借金が会社に残らないようにしておくのもアリかも知れません
不動産投資事業のように社長が死亡しても安定して収入が見込める場合には、団信は非常に効果的なリスクマネジメント策といえます。
【加入してもしなくても、審査結果には影響はない】
事業融資での審査は「その事業できちんと返済できるか」によって審査されます。
ですので、「被保険者が死亡した場合の保険金」を宛にした審査はしていません。
団体信用生命保険はあくまで社長(連帯保証人)やご本人のご家族への生活保障という性格と考えて下さい。
【銀行の担当者が案内してくれないことが多い】
融資の審査と直接関係ないためなのか、はたまた担当者の知識不足なのか定かではありませんが、融資担当者から「団体信用生命保険」の案内をされないことが多々あります。
社長のご家族の生活保障のために加入する保険なので、案内されなくても社長ご自身で加入する希望を伝えましょう。
また、借りてしまってから事後的に保険に加入するのは基本的には厳しいと考えた方がよく、申込時点から借りる前までには申し出をして加入手続きを済ませましょう。
【住宅ローンの団信とは違い、保障内容は最低限】
住宅ローンを組む際の団信は「三大疾病」や「八大疾病」に罹患した場合にローン残高と相殺するような「手厚い団信」が多く開発されています。
しかし、事業用の団信は以下のような最低限の保障しかされていないのが一般的です。
(1)債務者本人(ないし連帯保証人)が死亡した際
(2)債務者本人(ないし連帯保証人)が高度障害となった際
※高度障害とは両目を失明、言語・咀嚼機能を失う、常時介護が必要、四肢の内2つを失うなどのかなり高度な障害
【保険料は比較的安い】
保険料は借りている金額の0.25%前後に設定されているようです。(年度によって変動あり)
公庫の場合は1,000万円借りて、初年度は約26,000円、次年度は約22,000円と徐々に下がっていき、7年返済で合計約10万円の保険料となるようです。
民間の生命保険を1,000万円分加入するよりは安価になることが多いようなので、前向きに加入を検討しても良いのではないでしょうか。
【他の死亡保険とは支払方法が違う】
他の死亡保険は契約時に決めた死亡保険金を保険金受取人(配偶者、家族、会社など)が受取ります。
しかし、団体信用生命保険は借入と相殺する性格のため、借りている銀行に直接支払われます。
死亡した時点での借入額と同額を直接相殺するのです。
ですので、ご家族や会社の口座を経由することはありません。
【実際に借入を申し込む際の注意点】
事業の融資を受ける際に、団信の利用が考えられるのは「公庫からの借入」と「保証協会からの借入」です。
公庫から借り入れる際には、連帯保証人の有無で団信に加入できるかが変わりますので、注意しましょう。「連帯保証なし」を選ぶとそもそも団信の案内は来ないため、加入するか否かを判断するチャンスすらありません。「連帯保証なし」が絶対に良いとは言い切れないのです。
銀行から保証協会付きの融資を受ける際には、銀行の融資担当者から案内がないケースがありますので注意しましょう。
保証協会付き融資は基本的に「連帯保証あり」となっているにも関わらず、案内されないケースが多発しています。
多い時には数千万円の融資を受けることもあるので、残されたご家族のことを考えればご経営者自身で理解しておかなければいけないところです。
あとから銀行に恨み節を言っても遅いのです。
これだけ有用な保険制度が、意外と知られていないことが多く、私が金融機関に勤めていた際の感覚で言うと実際の加入率は「半分以下」だと思います。
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