
銀行員はここを見る!販管費・交際費の注意点と対応法【決算書分析のコツ】
「決算書は税理士任せでよくわからない」という経営者の方も多いですが、銀行員は決算書の細かい部分までしっかり見ています。その中でも、特に注目されやすいのが「販売費および一般管理費(販管費)」の中に含まれる交際費です。
この記事では、銀行員がどのような視点で販管費を見ているのか、なぜ交際費が問題視されやすいのか、そして質問されやすい経費の特徴とその対策を具体的に解説します。経営者としての視点も交えながら、実務的なアドバイスをお届けします。
目次
販管費とは?決算書での位置づけ
「販売費および一般管理費(販管費)」は、企業が本業を遂行する上で日常的に発生する費用であり、決算書(損益計算書)の中では、売上総利益の下に位置づけられます。この項目の内容は非常に多岐にわたりますが、会社の運営状況や内部の体質を如実に表す重要な指標です。
具体的には以下のような費用が含まれます:
- 人件費(役員報酬、従業員給与、社会保険料)
- 広告宣伝費(Web広告、紙媒体、看板など)
- 地代家賃(事務所や店舗の賃料)
- 通信費(電話・インターネット回線など)
- 旅費交通費(出張・営業活動に関する移動費)
- 交際費(取引先との飲食、贈答、接待費など)
販管費が過度に膨らんでいると、本来出るはずの利益が出ず、収益性に疑問を持たれる要因となります。売上が伸びているのに利益が出ないという場合は、まず販管費をチェックするのが鉄則です。
交際費はなぜチェックされる?
交際費は販管費の中でも特に銀行員から注視されやすい項目です。その理由は、交際費が直接的に売上につながるかどうかが不透明であり、企業の経営姿勢や内部統制に関わるからです。
経営者としては、「交際費を使ってでも取引先との関係を強化し、将来のビジネスにつなげたい」と考えるのは当然ですが、銀行員の視点では『成果の見えにくいコスト』と映ってしまうことが多いのです。
例えば、年間500万円以上の交際費を使っている企業が、売上が前年と横ばい、もしくは減少していた場合、銀行は「本当にその交際費は意味があったのか?」と疑問を持つでしょう。
さらに、交際費の中には接待飲食やゴルフ代、贈答品などが含まれているため、「経営者の私的支出ではないか」という視点でチェックされるケースもあります。実際に、税務調査と同様、融資審査の際にも交際費の妥当性を問われる場面は少なくありません。
銀行員が特に注意して見る経費とは?
では、どのような経費が銀行員にとって特に気になるのでしょうか。次の2つの視点は必ず押さえておきましょう。
① 前年と比べて大きく増加している経費
決算書を比較分析する際、銀行員は必ず前期との比較を行います。もし交際費や広告宣伝費、会議費などの経費が急激に増えていれば、その理由を問われるのは自然な流れです。
例えば、「新規事業のプロモーションとして一時的に広告費が増えた」など、納得できる理由をデータとともに示すことが大切です。逆に、明確な理由がなく増加している場合は、「資金管理が甘い」と評価されかねません。
② 金額が大きい経費
金額が大きい経費は、それだけ会社の財務体力を消耗します。交際費や役員報酬、外注費など、損益に直結する支出が多ければ、当然ながらキャッシュフローへの影響も出てきます。
特に借入金が多い企業にとっては、返済能力を示す指標である「営業キャッシュフロー」が重要視されるため、大きな経費の使い方ひとつで融資審査の印象が変わることもあります。
◎ 対応のポイント
- 「なぜこの経費が必要だったのか」を簡潔に説明できるようにする
- 売上や利益につながった具体例があれば数値で示す
- 不要と判断したものは翌期以降に削減する意志を見せる
これらの対応ができていれば、銀行員からの信頼度もグッと上がります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 交際費はゼロにした方が銀行には良い印象ですか?
A. 必ずしもゼロにする必要はありません。むしろ、必要最低限の交際費はビジネスに不可欠です。ただし、その内容と金額について明確に説明できることが重要です。
Q2. 前年より交際費が増えたのは悪いことですか?
A. 増えたこと自体が悪いわけではありません。使い方が戦略的で、成果につながっているのであれば問題はありません。ただし、説明責任がある点は押さえておきましょう。
Q3. 銀行は販管費のどこまで細かく見ていますか?
A. 銀行員は、決算書の「勘定科目内訳明細書」や「税務申告書の別表」までチェックします。数字の整合性はもちろん、企業の支出傾向から経営姿勢まで読み取ろうとします。
まとめ|経費は「使い方」と「説明力」が経営者の腕の見せどころ
交際費を含む販管費は、企業経営にとって避けては通れない支出ですが、その使い方と説明力が問われる項目です。銀行員は、「この経営者はお金をどのように使っているのか?」「その結果、会社はどう成長しているのか?」を見ています。
経費が悪いのではなく、「なぜその支出をしたのか」「どんな成果を得たのか」を論理的に説明できることこそが、信用力を高める鍵なのです。
今のうちに経費を棚卸しし、自信を持って説明できるようにしておくことで、資金調達や銀行取引もぐっとスムーズになりますよ。

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura 元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員 中小企業診断士、起業コンサルタント®、 1級販売士、宅地建物取引主任者、 補助金コンサルタント、融資・資金調達コンサルタント、 産業能率大学 兼任教員 2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。 融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago 元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役 同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。 支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。 日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。 長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。



























