
銀行員に「試算表をください」と言われたら?
目次
なぜ銀行は試算表を求めるのか
試算表と決算書の違い
試算表の提出タイミングとは
試算表が出せないとどうなる?
顧問税理士との連携で安心を
よくある質問(FAQ)
1. なぜ銀行は試算表を求めるのか
ズバリ言います。銀行が試算表を求めるのは、「今のあなたの会社の経営状況」を正確に把握したいからです。
決算書は年に1回しか作成されず、作成されるのは多くの場合、決算期から数ヵ月後。つまり、金融機関が目にする決算書は、すでに古い情報なのです。
たとえば、3月決算の企業が5月に決算書を提出したとしましょう。すると、銀行が6月や7月に見る資料は、すでに3~4ヵ月前のもの。ビジネスの世界では、その間に経営状況が大きく変化することも珍しくありません。
特に、以下のような場面では試算表が求められることが多くなります。
融資審査を受けるとき
既存の融資の見直しや借換えをするとき
新たな取引先との信用調査が入ったとき
資本政策を検討しているとき
つまり、銀行にとって試算表は「会社の健康診断書」のようなもの。最新の業績や資金の流れを見て、健全な経営が続いているかを判断したいのです。
2. 試算表と決算書の違い
試算表と決算書、どちらも数字の資料ですが、目的も精度もまったく異なります。
比較項目 試算表 決算書
作成頻度 月次(または四半期) 年1回
作成目的 現時点の業績・資金状況の把握 過去1年の業績報告と納税
精度 仮締め(速報値) 税務署提出レベル(確定値)
誰が使うか 銀行、社長自身、税理士 税務署、銀行、株主など
もう少しかみ砕いて言えば、試算表は「リアルタイムの家計簿」、決算書は「1年間の家計の総決算」のようなものです。
例えば、「今月の売上が思ったより伸び悩んでいるな」とか、「今のペースで経費を使い続けると、来月資金がショートしそうだ」といったことは、決算書ではわかりません。こうした判断材料になるのが、月次で更新される試算表なのです。
3. 試算表の提出タイミングとは
では、いつ試算表を求められるのでしょうか?
一般的には、以下のような目安があります。
決算期から3〜6ヵ月が経過している場合
融資申込・見直しをしている最中
新規取引先との契約を控えている場合
赤字決算だった場合の経営改善状況の確認
補助金・助成金申請の裏付け資料として
とくに注意が必要なのは、決算期から半年以上経っているのに、まだ決算書しか出せない場合です。銀行側は「この会社、経営状況の把握が甘いのでは?」と不安に感じることになります。
金融機関の審査の現場では、実は試算表が「出せる会社かどうか」を見て、経営管理体制の整備レベルをチェックしているのです。
4. 試算表が出せないとどうなる?
ズバリ、試算表が提出できない状態が続くと、銀行からの信用に悪影響が出る可能性があります。以下のようなリスクが考えられます。
「数字に弱い会社」と思われ、融資審査で減点される
経営状況が把握できないため、与信枠が縮小される
適切なアドバイスができず、銀行との信頼関係が崩れる
とくに、金融機関は“数字でしか判断しない”ともいわれます。どれだけ将来の展望を熱く語っても、「その裏付け資料がない」と判断されてしまっては意味がありません。
私がこれまでサポートした起業家の中でも、「試算表をすぐに提出できた」ことが決め手となってスムーズに追加融資が下りた例は数多くあります。
反対に、「忙しくて作っていない」「税理士に頼んでいない」と言って提出ができなかった企業が、融資を逃した例も少なくありません。
5. 顧問税理士との連携で安心を
では、試算表を安定して提出できるようにするには、どうしたらよいでしょうか?
答えは明確です。
**「毎月、税理士から試算表を受け取る体制を整えること」**です。
多くの税理士事務所では、月次の試算表の作成・報告を「記帳代行」または「巡回監査」の中で行っています。これを契約時に確認しておけば、銀行から「試算表を見せてください」と言われたときにも、即座に対応ができます。
このとき、以下の項目がきちんと揃っていることが望ましいです。
損益計算書(PL)
貸借対照表(BS)
資金繰り表(できれば)
さらに言えば、「今月はこの数字が伸びています」「原価率が上がってきていますね」といった、経営上の気づきや改善点も税理士と一緒に把握しておくと、金融機関との面談でも一目置かれるようになります。
6. よくある質問(FAQ)
Q1. 試算表はExcelでもいいの?
A. 形式自体はExcelでも問題ありませんが、「第三者のチェック済み」であることが大切です。税理士が確認済であれば、信用度は格段に上がります。
Q2. 試算表は毎月作る必要がありますか?
A. 銀行向けには「直近3ヵ月分」が目安ですが、経営の観点からは月次で作ることをおすすめします。数字に強い社長になる第一歩です。
Q3. 試算表が間違っていたらどうなりますか?
A. 試算表は速報値であり、「確定情報」ではありません。多少のズレは許容されますが、極端な誤りや不整合があると信頼を損ねるため、税理士のチェックが入っていると安心です。
まとめ
「試算表をください」と銀行員に言われたとき、ドキッとしたことがある方は少なくないはずです。でも、心配はいりません。
むしろこれは、銀行があなたの会社に関心を持っているサイン。ここでしっかり対応できれば、評価は一気にアップします。
普段から試算表を整えておくこと。それこそが、いざというときの資金調達力を高め、経営の安定にもつながります。
ぜひ、今回の記事をきっかけに「数字に強い社長」への一歩を踏み出してみてくださいね。
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この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura 元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員 中小企業診断士、起業コンサルタント®、 1級販売士、宅地建物取引主任者、 補助金コンサルタント、融資・資金調達コンサルタント、 産業能率大学 兼任教員 2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。 融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago 元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役 同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。 支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。 日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。 長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。



























