
起業準備中のあなたへ。金融の「プロパー融資」って何?
こんにちは、起業コンサルタント(R)、税理士・行政書士・FPの中野裕哲です。
「プロパー融資って、よく聞くけど意味がよくわからない…」そんな疑問を持っていませんか?
今回は、金融の世界でよく使われる「プロパー」という言葉について、起業を目指す会社員の方にもわかりやすくご説明します。
創業前、創業直後、そして事業拡大フェーズ。各段階でプロパー融資がどう関係してくるのか?じっくり見ていきましょう。
そもそも「プロパー」とは何か?
金融の世界で使われる「プロパー融資」とは、保証人や保証協会をつけず、金融機関が自らのリスクで直接お金を貸す融資のことです。
「保証付き融資」が、万が一返済できなくなったときに保証協会が肩代わりしてくれる仕組みであるのに対し、プロパー融資は、銀行自身が“全責任”を負って貸し出します。
そのため、金融機関にとってはリスクが高い反面、顧客を信頼している証でもあります。
言い換えれば、「このお客様にはしっかり返してもらえる」という評価を受けたことになります。
プロパー融資の特徴
メリット:
- 保証料が不要なので、コストが安くすむ
- 金融機関との信頼関係が強化される
- 自由度の高い条件での交渉が可能
- 継続的な取引によって、将来的に大型融資にも繋がりやすい
デメリット:
- 審査が厳しい(信用力が必要)
- 起業直後は通りにくい
- 決算や事業計画の整合性が非常に重要視される
プロパー融資と保証付き融資の違い
| 項目 | プロパー融資 | 保証付き融資 |
|---|---|---|
| 貸し手の責任 | 金融機関自身 | 信用保証協会が保証 |
| 保証料 | 不要 | 必要(年率0.4%〜2.2%など) |
| 融資の自由度 | 高め(条件交渉可能) | 保証協会の基準に従う必要あり |
| 起業直後の難易度 | 高い | 低め(創業融資制度あり) |
プロパーは信頼関係が命。保証付きは制度が命。そんなイメージを持っておくと理解しやすいかもしれませんね。
起業1年後、プロパー融資は通るのか?
ズバリ言います。起業1年目でプロパー融資を受けるのは、正直ハードルが高いです。
金融機関は「事業が軌道に乗っているか」「返済能力があるか」を厳しく見ます。そのため、まずは日本政策金融公庫や、保証協会付き融資で実績を積むのが王道です。
実績ができれば、それが信用につながり、次のステップとしてプロパーにチャレンジできるようになります。
プロパー融資が通りやすくなる条件とは?
- 黒字決算を2期以上出している
- 自己資本比率が高い(財務の健全性)
- 代表者に過去の金融トラブルがない
- 借入の返済が滞っていない(信用情報が良好)
- 金融機関と普段から良好な関係を築いている
- 取引銀行にメイン口座を置いている(入出金が集中している)
金融機関は数字だけでなく「日頃の付き合い」も見ています。相談や報告をこまめにすることも、信用を高めるポイントですよ。
実際の資金調達戦略:こんな順序で考えよう
- 日本政策金融公庫の「創業融資」でスタートダッシュ
- 保証協会付き融資で運転資金・設備資金を補完
- 財務内容を改善しながら、プロパー融資を目指す
- プロパー実行後は、経営者保証免除特例なども視野に入れる
この順番が、もっとも現実的で堅実な資金調達ルートです。
銀行員はここを見る!プロパー審査のチェックポイント
- 決算書の内容(特に営業利益、自己資本、借入状況)
- 代表者の経歴や経験(業界経験があるか)
- 入出金の状況(通帳の動き、売上の安定性)
- 社長の人柄、説明力(金融機関担当者との信頼関係)
- 借入の目的や資金使途の明確性
金融機関は「返せるかどうか」と同時に「応援したい人かどうか」を見ています。これは実際の現場で感じるリアルな感覚です。
よくある質問(FAQ)
Q. プロパー融資とビジネスローンはどう違うの? A. ビジネスローンは保証人不要・無担保で、即日融資もありますが、金利が高く短期借入が多いです。一方プロパー融資は銀行が本気で応援する「正規の融資」です。
Q. プロパー融資の金利は高い? A. 保証付き融資より若干高い場合もありますが、保証料が不要なのでトータルコストは安くなることもあります。
Q. 起業前にプロパー融資を受けることはできますか? A. できるケースは稀です。実績がない状態では、まず保証付きや公庫の創業融資が優先されます。
Q. 保証付き融資からプロパーに切り替えることは可能? A. はい。事業の安定性が認められれば、次回の借入からプロパーに切り替えられることもあります。
Q. 保証協会に頼らないことの意味は? A. 保証協会を使わないことで、銀行との直接的な信頼関係が築かれ、より柔軟な資金調達が可能になります。
まとめ:信頼を積み重ねることがプロパー融資のカギ
プロパー融資は、「信用に値する事業者」にだけ開かれる扉です。
最初はハードルが高く感じるかもしれませんが、コツコツと実績を積み重ねていけば、将来の資金調達が大きく広がります。
自分の信用を少しずつ育て、金融機関に「この人なら貸しても大丈夫」と思ってもらえるようにする。そのために日々の数字管理、報告姿勢、そして経営者としての誠実さが問われます。
起業とは「信用を形にしていくプロセス」でもあります。
プロパー融資を目指す過程は、あなたの経営者としての成長そのもの。
焦らず、一歩ずつ着実に進んでいきましょう。
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。



























