
いまさら聞けない「カスハラ」ってなに?──理不尽な顧客対応が起こす社会問題と実務対策
“お客様は神様”という言葉が長らく美徳とされてきた日本のサービス文化。その一方で、度を超えた要求や暴言・脅迫行為によって、従業員が追い詰められる、退職に追い込まれるといったケースが散見されるようになりました。これを総して、最近よく耳にするようになったのが「カスハラ(カスタマーハラスメント)」です。今回は、カスハラがどのような行為で、なぜ社会問題化しているのか、そして職場でどう対応すればよいかを、実務家視点で具体的に整理しました。
① カスハラって何?「顧客による理不尽なハラスメント」
カスハラとは、クレームの域を超え、従業員の就業環境を害する「社会通念上相当でない言動」を指します。
たとえば:
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暴言や人格否定を執拗に繰り返す
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無制限に長時間拘束するクレーム
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土下座や不当な謝罪を強要する
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金品や無償対応を脅し文句で迫る
など、正当な改善要望やクレームと区別されます。
② なぜ今、カスハラが注目されているのか?
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SNSの普及で個人が簡単に声を上げられる時代に
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「お客様第一主義」の認識が行き過ぎ、「顧客の権利無制限」と誤解されがち
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パンデミック以降、ストレスや不満が顕在化し、それが過剰クレームにつながる場合も。
加えて、東京都の「カスハラ防止条例」や厚生労働省のマニュアルなど、制度的対応が一歩進んでいることも背景の一つです。
③ カスハラとクレームの違い
比較ポイント | 正当なクレーム | カスハラ |
---|---|---|
目的 | 商品・サービス改善 | 従業員への精神的苦痛、不当要求 |
対応手段 | 合理的・節度のある申し出 | 暴言・強要・脅迫・長時間拘束など |
就業環境への影響 | ほとんどない | ストレスや精神負荷が蓄積し、離職や過労につながる |
④ カスハラが引き起こす現場への悪影響
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従業員の精神的・身体的負担が増し、心身の不調や離職のリスクに
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職場の雰囲気が悪化し、他の顧客対応にも支障が出る
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企業イメージの信頼失墜につながることも
放置すればサービス品質も組織も疲弊していきます。
⑤ 企業が取るべき実務対応策
1. 対応方針・ガイドラインの明確化
従業員がカスハラと判断した際にどう対応するか、具体的行動指針をマニュアル化します。
2. 関係者の教育・研修
全従業員に、カスハラの事例や対応方法を研修で共有し、「毅然と断れる職場風土」を育てます。
3. サポート体制・相談窓口の設置
担当部署や相談窓口を社内設置し、対応の統一と従業員の安心感確保を図ります。
4. エスカレーションと外部対応
必要に応じて上長の判断で、警告・通報・警察や弁護士対応を行うルールを整備します。
5. メンタルケア体制の強化
被害を受けた従業員へのケア体制を整え、必要に応じて医療機関やカウンセリングにつなげる体制が不可欠です。
6. 定期的な見直し
制度や実績に基づき、定期的な対応方針・マニュアルの更新と支援体制の再確認をしましょう。
■ まとめ:「お客様も従業員も大切にする職場をつくろう」
カスハラは企業が放置できない現代の重大課題です。対応のポイントはこの3点:
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クレームとの区別(合理か?手段が適切か?)
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組織としての対応ルール作り(マニュアル・研修・相談体制)
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毅然とした対応と安心できる職場づくり
「顧客も従業員も大切にする職場」は、信頼と持続性を両立する企業文化の土台です。カスハラ対策の奨励金制度などを利用して体制を整備する方法もあります。不当な言動に屈せず、サービスの質と職場の安全を守る仕組みづくりを、お手伝いできますのでお気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。