
起業時に出資してくれる人がいるときの注意点|4つの重要ポイントを解説
「起業したいが資金が足りない」「知人が出資を検討してくれている」といった声はよく耳にします。出資を受けることは、創業期における大きな力となる一方で、その後の経営や人間関係に深く関わる重要な決断でもあります。
一見ありがたい話に聞こえる出資ですが、事前に押さえておくべき法的・経営的・人的観点からの注意点を怠ると、後々大きなトラブルに発展しかねません。本記事では、出資を受ける際に意識すべき4つのポイントを、具体例や専門的な視点を交えて丁寧に解説します。
目次
1. 出資者を誰にするか慎重に検討する
起業時にお金を出してくれる人、つまり出資者は、単なる「支援者」ではありません。出資者は会社の所有者の一部となり、経営に関わる意思決定に影響を持つ存在です。
株式会社の場合は株主、合同会社の場合は社員として登記されることになります。そしてそれぞれが「持分比率」に応じた議決権を持ち、会社の重要事項の決定(例えば役員の選任・解任、定款変更、増資など)に影響を及ぼします。
したがって、出資してくれる人の人柄、経営への関与のスタンス、将来の方向性などを総合的に見て「一緒に経営していくパートナーとしてふさわしいか」を慎重に検討することが必要です。
特に親族や友人からの出資は、断りにくくなる反面、トラブルになると関係修復が困難になるケースもあります。信頼関係があるからこそ「契約」や「ルール」が重要になるのです。
2. 出資割合の決め方が会社の将来を左右する
出資比率は、そのまま議決権の割合に直結するため、将来の経営主導権や資金調達の自由度に大きな影響を及ぼします。
株式会社においては、以下のような議決要件があります:
- 50%以上 → 取締役選任などの普通決議可
- 66.6%以上 → 定款変更、事業譲渡、合併などの特別決議可
たとえば、自分が49%、出資者が51%を持っていた場合、創業者自身の意思で会社を動かせなくなる可能性があります。このように、出資比率を軽視すると、自分の会社であるはずが「他人の会社」となってしまうリスクがあります。
合同会社では、「全会一致」が原則の意思決定も多いため、持分に加えて定款で決議要件をカスタマイズすることも可能です。いずれにせよ、会社をコントロールするためには、一定の割合を自分側で確保しておくことが望ましいと言えます。
3. 出資の条件や役割分担を明確にしておく
出資はお金の提供だけではありません。経営者との関係性や、将来の出口戦略(株式譲渡・買い取り)も含めて、明文化しておくことが極めて重要です。
以下のような事項は、最低限文書化しておくべきでしょう:
- 出資金額と出資比率
- 役員就任の有無(監査役・取締役等)
- 経営方針への関与レベル(相談レベルか、決定権を持つのか)
- 株式・持分の譲渡ルール(売却時の条件や、譲渡制限)
また、配当方針や増資時の優先交渉権なども、出資者が複数いる場合には整理しておくべきです。
このような条件は、定款や株主間契約書、覚書などの形で残すことができます。いずれも法的効力を持つため、後々の紛争リスクを最小限に抑えることができます。
可能であれば、第三者の専門家(司法書士・行政書士・弁護士など)を交えて取り決めておくと安心です。
4. 信頼関係の維持が最重要
出資を受けたあとは、「お金を出してもらったから終わり」ではなく、むしろその後の関係構築が重要です。
出資者は、そのお金を単なる貸し付けではなく「経営への投資」として提供しています。したがって、会社の成長や成果に対して関心を持ち、説明責任や透明性を求めるのは当然のことです。
具体的には以下のような取り組みが信頼構築につながります:
- 定期的な報告書(四半期ごとの簡易決算など)の提出
- 事業進捗や戦略変更の共有
- 利益配分(配当)の方針説明
こうした対応を怠ると、信頼を失い、最悪の場合は株主との対立や訴訟に発展するケースもあります。反対に、丁寧なコミュニケーションを心がけていれば、出資者から追加投資や紹介、人的支援を受けられる好循環も期待できます。
よくあるご質問(FAQ)
- Q. 出資者を親族にしても大丈夫ですか?
- A. はい、問題ありません。ただし、家族間だからこそ後のトラブルを避けるため、契約書でルールを明確にしておくことが大切です。
- Q. 株式の割合はどうやって決めればいいですか?
- A. 経営権を持ち続けるためには、代表者側で66.6%以上の保有を目安に検討することが多いです。
- Q. 出資を受ける場合でも借入との違いは?
- A. 出資は返済義務がない反面、経営への影響力を持たれる点が借入と異なります。借入は返済が必要ですが、経営権を侵されません。
- Q. 株主間契約とは何ですか?
- A. 株主同士の権利義務や譲渡制限、配当ルールなどを定める契約です。トラブルを防ぐために重要な文書です。
参考リンク:All About「出資の注意点」
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。




























