
売上原価って何?──利益の土台を知るための基本指標
「売上は増えているのに利益が残らない…?」
そんなときにまず見直すべきなのが「売上原価」です。これは、商品やサービスを売るために“直接かかった費用”を表す指標で、利益を左右する非常に重要な勘所なんです。
1.売上原価の定義とは?
売上原価とは、販売した商品やサービスに直接かかったコスト全般を指します。
具体的には次のような費用が含まれます:
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小売・卸売業:仕入れた商品そのものの原価
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製造業:原材料、人件費、加工関連費、減価償却費などの製造費用
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サービス業:提供に直接関与する人件費や消耗品など
つまり、商品やサービスを“売るために必須だった費用すべて”が売上原価です。
2.売上原価はどうやって計算する?
主に小売業や卸売業では、“在庫の棚卸”を通じて以下の式で算出します:
たとえば、期首の在庫が100万円、年間仕入高が500万円、期末の在庫が200万円だった場合:
つまり、販売した分に相当するコストは400万円だった、ということになります。
製造業ではさらに仕掛品や製造間接費も加わるため、同様の考え方を拡張して製造原価と照らし合わせる方法を取ります 。
3.売上原価が経営で意味すること
🧾 利益構造を見える化する
売上から売上原価を引けば「粗利(売上総利益)」が出ます。
粗利が高いということは、商品に十分な価値があり、付加価値がある証拠です。
💰 資金繰りの基盤になる
売ればすぐに現金化できる構造か、それともコストが利益を圧迫しているか。売上原価が高すぎると、いくら売れても資金が残りにくくなります。
📊 経営効率の目安になる
高コストの商品や製造ライン、サービス工程が見える化され、改善ポイントが見つかります。
4.業種別に見る“原価の中身”
業種 | 含まれる経費の例 |
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小売業・卸売業 | 仕入商品代金、輸送費、関税など |
製造業 | 原材料、人件費、光熱費、減価償却費、仕掛品処理など |
サービス業 | 対価提供に直接関わる人件費、消耗品費など |
業種によって含める費用に幅があるため、自社のビジネスに合わせて項目を明確に整理しましょう。
5.売上原価の改善に向けたアクション!
✅ ① 棚卸と仕入管理の徹底
実地棚卸の精度と帳簿との差異を小さくすることで、原価計算の信頼性が上がります 。
✅ ② 仕入原価の見直し
交渉による値引き、より安定した仕入先、発注量やタイミング調整を検討。
✅ ③ 生産や調理ラインの効率化
製造業では生産プロセス、飲食店では調理プロセスのムダを減らすことでコストダウン。
✅ ④ 販売商品の見直し
原価率が高い商品の取扱停止や価格改定、セット販売・バンドルで粗利率向上を狙う。
6.売上原価を活かす数字思考
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粗利率(売上に対する粗利の割合)を月次でチェックし、原価構造を可視化
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商品ごと/サービスごとの原価把握で収益性の高いラインを強化
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定期的な見直しで改善余地のある工程や項目を精鋭化
🔎 まとめ─売上原価は“利益の入り口”
売上原価は単なる“費用”ではなく、「あなたの商品やサービスがどれだけ利益を生む構造か」を教えてくれる重要な経営指標です。仕入在庫、製造ライン、提供工程などを整理し、原価に向き合うことで、経営の安定性も財務体力も磨かれていきます。
今後、決算書や経営会議で「粗利が上がらない…」「利益が出てもすぐ消える…」といった悩みがあるときは、まず売上原価を見てみましょう。
数字の見やすさや改善方法にお困りの際は、いつでもご相談くださいね。資金面からも、事業面からも、しっかりお手伝いいたします。
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。