パン屋さんで独立起業するために準備しておくべきこと──“想い”を形にするステップ
「手作りパンが好き」「地元の人に愛される店をつくりたい」――そんな夢を持つあなたへ。パン屋の独立には“美味しいパン”だけでなく、事業計画、資金計画、人材育成、店舗立地など、細部まで準備する力が求められます。今回は、パン屋さんの起業も手掛けてきた著者が、実務経験に基づいたステップで、開業までの道筋をわかりやすく整理します。
① コンセプト設計とターゲット設定
まず最初に必要なのは、誰に、どんな価値を届けるのかを明確にすることです。
-
ターゲット層：子育て世帯、サラリーマン、観光客…
-
店の雰囲気：ナチュラルテイスト、欧風ブラン、ハード系に特化など
-
商品ラインナップ：食パン・菓子パン・調理パン・健康志向…
コンセプトが固まると、メニュー開発、店舗デザイン、販売価格、仕入れ先選びも自然に方向性が定まります。
② メニュー開発と試作・顧客テスト
コンセプトに基づいた商品を作るためには、試作→テスト販売→改善を重ねることが必要です。
-
イベント出店・マルシェでの販売で直接反応を見る
-
例えば「フォカッチャの具材バランス」「食感の硬さ」をアンケートし改善
-
価格帯も含めた顧客の購買行動を観察して調整
この繰り返しで、“お客様の気持ちを動かす商品”が形になります。
③ 事業計画・資金調達の仕組みづくり
店舗開業には、設備・内装費、オーブンなどの機器費、原材料費、初月の人件費など初期コストがかかります。
-
自己資金はいくらか
-
創業融資はいくらまで可能か
-
国や自治体の補助金も活用できるか
-
損益分岐点や月次キャッシュフロー見通しはどうか
これらを踏まえ、創業後の資金ショートを防ぐ計画を整えましょう。
④ 店舗立地と賃貸契約の交渉力
パン屋は立地の影響が非常に大きい業態です。
-
駅前・住宅街・オフィス街・商業施設…ターゲットに応じたエリアで検討
-
通行量や競合店の近さ、家賃水準を複数候補で比較
-
賃貸条件（保証金、更新料、スケルトン渡し）については、気兼ねなく交渉できるよう専門家への相談も視野に入れる
ここを飛ばすと、後戻りできないリスクが高まります。
⑤ 許可・衛生・保健所対応の理解
パン屋は食品衛生法の対象となるため、保健所の許可が必須です。
-
雑菌対策、動線設計、手洗い設備、換気、温度・湿度管理などの保健基準
-
衛生管理責任者の配置や食品表示のルール
-
指導員による現地確認のスケジュール組み
開業時の保健所対応ミスは営業停止につながる重大リスクですので、専門家支援も検討したいところです。
⑥ 人員確保とマネジメント体制づくり
繁忙期・朝昼夕などの接客・製造の流れを踏まえたスタッフ配置・シフト設計も重要です。
-
パート・アルバイトの採用・育成方法
-
マニュアル整備（製造手順、接客ルール、衛生手順）
-
シフト交差チェックによるトラブル回避・人件費予実管理
小さくても運用体制の整った組織づくりが、事業継続の鍵になります。
⑦ マーケティング・販売戦略を設計する
パンは「食べればわかる味」が伝わりやすい反面、情報発信・集客戦略が不可欠です。
-
チラシ・チラシポスティング・SNS・地域メディアへの取材依頼
-
オンライン販売・ネット予約の仕組みづくり
-
イベント出店や少量多品種販売でファンを作る導線設計
オープン前から地域に認知されるきっかけづくりが売上の定着に効果的です。
⑧ 会計・税務・労務の基盤づくり
税務や社会保険関連は「後回しにしちゃだめ」です。
-
会計ソフトと経理ルールの選定（freee・弥生など）
-
節税スキームや帳簿保存・インボイス制度対応
-
社会保険・労働保険の加入手続きと給与計算
特に初心期は、税理士・社労士との連携構築で安心感と正確性を得ることがスタートダッシュにつながります。本業に時間と労力を集中できる環境を整えましょう。
✅まとめ：多面的な準備が「味」と「事業」両方に響く
パン屋の独立開業は「おいしいパンだけ」で走り切れるほど甘くありません。味・立地・資金・衛生・人・集客・税務・労務と、多様な課題を一つひとつ丁寧に整えることが「安定＆成長のための基盤」になります。
特に、
-
事業コンセプトに基づいたメニュー作成
-
融資・計画設計と合わせた資金調達
-
衛生要件への厳密な対応
-
集客とループ展開すべき販売戦略
-
経理・労務の外部専門家との連携
を意識することで、「味×事業力」の両立が可能になります。
最後に一言：
「パンを通じて人を笑顔にしたい」その初心を大切に、でも構えるのではなく準備する。
美味しさに、安心を乗せて。ぜひ、ご相談もお気軽にどうぞ。あなたの“パン屋さん起業”を、全力で応援いたします！
【無料相談のご案内】
起業の手続きって何から始めればいいの？といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております！
この記事を書いた人
中野裕哲／Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授（起業論、ゼミ等）
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援！「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル（事業計画＋融資＋補助金＋会社設立支援）＋起業後の総合サポート（経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関）など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫／Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫（旧国民金融公庫）に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。
