
自己資金ゼロでも申請できる創業融資まとめ—条件と自己資金とみなせるケースを解説
融資の審査はさまざまな観点から総合的に判断されますが、資金繰りの面で自己資金が十分にあるかどうかは確認されます。しかし、これから起業する方の中には、「自己資金を貯める余裕がない」「今このタイミングで起業したい!」という方も多いでしょう。
今回の記事では、自己資金が全くなくても、条件を満たせば申請できる融資についてまとめました。また、じつは現在の貯金が0円でも、自己資金とみなせる場合があります。ぜひこの記事を読んで、スムーズにあなたの事業をスタートさせましょう!
目次
(1)自己資金なしでも受けられる「日本政策金融公庫」の3つの融資
①新創業融資制度
創業融資を自己資金なしで受けられる人
②新規開業資金/中小企業経営力強化資金
新規開業資金(中小企業経営力強化関連)
中小企業経営力強化資金
③挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)
(2)自己資金なしでも受けられる「信用保証協会の保証付き」の2つの融資
①地方自治体の制度融資(創業融資)
②銀行・信用金庫の創業融資
自己資金の作り方、創業資金を捻出する5つの方法
自己資金に含めることができないもの
融資を受けるかどうかは、きちんと検討してみましょう
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(1)自己資金なしでも受けられる「日本政策金融公庫」の3つの融資
これから起業する方や、まだ経営の実績がない方にも幅広く融資をしてくれるのが公庫(日本政策金融公庫)です。じっさい公庫の利用者の48%は個人企業で、創業前および創業後1年以内の人に対する融資は年間2万6千件にのぼります。
公庫も金融機関である以上、お金を貸した後にきちんと利益を出し、確実に返済してくれそうな事業者に融資をしたいと考えます。公庫のHPには「自己資金は重要な要素のひとつですが、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要になります」と記載されています。実現可能性が高く整合性のある、しっかりとした創業計画を立てておきましょう。
①新創業融資制度
自己資金がない方にまず検討してほしいのが、この新創業融資制度です。ふつう自己資金がない場合、求められる要件が厳しくなるので、融資の対象から外れてしまうことが多くあります。
しかし、この新創業融資制度の場合は、条件(※後述)を満たした人はだれでも自己資金要件を突破することができます。また担保や保証人も不要なため、多くの人が検討できるおすすめの融資です。
対象者
新たに事業を始める方
または事業開始後税務申告を2期終えていない方
自己資金要件
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方の場合は、
創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金)を確認できる方
(※例外あり)
融資限度額 3,000万円(うち運転資金1,500万円)
担保・保証人 不要
詳細URL https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinsogyo_m.html
創業融資を自己資金なしで受けられる人
自己資金なしで創業融資を受けられるパターンはいくつかあります。
公庫ページ:「自己資金の要件を満たすものとする要件」
その中で、ほぼすべての人が検討できるのは以下の2つでしょう。
(1) 今の仕事と同じ業種で起業する人
・現在の企業に継続して6年以上勤めた人が、同じ業種で起業する
・現在の企業と同じ業種に通算して6年以上勤めた人が、同じ業種で起業する
6年以上同じ業種で働いていたなら、その業種で起業できるだけの経験とノウハウが身についていることでしょう。未経験の人よりは失敗する確率が低いので、自己資金がなくても融資を受けることができます。
(2) 特定創業支援等事業を受けた人
特定創業支援事業とは、地域での起業を活性化するために、各市区町村がおこなっている創業者を支援する活動のことです。これから創業される方や創業したばかりの方に対し、「個別相談・窓口相談」「セミナー」「起業・創業塾」などを通して、事業経営に必要な知識を習得することができます。
これから創業する人やまだ創業したばかりの人にとっては、受けておいて損はないでしょう。
詳しい情報はこちら:【最新】特定創業支援等事業のメリットから、申請方法まで解説!
②新規開業資金/中小企業経営力強化資金
小規模事業者向けの「新規開業資金(中小企業経営力強化関連」と中小企業向けの「中小企業経営力強化資金」は、同じ種類の融資です。特徴としては、「認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けること」が対象者の要件となっているところです。
これは、「事業者により円滑で安定した経営をおこなってもらうために、自己資金要件がない代わりに、第三者にサポートしてもらいましょう」という意図だと思われます。弊社も認定経営革新等支援機関の1つですので、ぜひお声がけください。
新規開業資金(中小企業経営力強化関連)
〇小規模事業者・個人事業主(中小会計を適用する方)
対象者
以下のすべてを満たす人
・新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方
・中小会計(「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」)を適用している、または適用する予定の方
・自ら事業計画書の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方
資金の使途
事業計画の実施のために必要とする設備資金および長期運転資金
(長期運転資金には、建物等の更新に伴い一時的に施設等を賃借するために必要な資金を含む)
融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
担保・保証人 要相談
詳細URL https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/64.html
中小企業経営力強化資金
〇中小企業事業
対象者
次の1.または2.に当てはまる方
1.次のすべてを満たす方
・経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により、市場の創出・開拓(新規開業を含む)を行おうとする方
・事業計画書を策定し、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方
2.次のすべてを満たす方
・「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を完全に適用している方または適用する予定である方
・事業計画書を策定する方
資金の使途
事業計画の実施のために必要とする設備資金および長期運転資金
(長期運転資金には、建物等の更新に伴い一時的に施設等を賃借するために必要な資金を含む)
融資限度額 直接貸付 7億2千万円(うち運転資金2億5千万円)
担保・保証人 要相談
詳細URL https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/64_t.html
③挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)
スタートアップや新規事業展開、海外展開、事業再生に取り組む事業者向けの融資です。技術やノウハウに新規性があることが求められます。この融資は「資本性ローン」であるため、借入金ではなく自己資金としてみなすことができ、財務体質を強化できるのが特徴です。
〇小規模事業者
対象者
次の1.と2.の両方を満たす方
1.融資制度:次の(1)から(5)までのいずれかの融資制度の対象となる方で、条件の合う方(詳細リンク参照)
(1)新規開業資金
(2)新事業活動促進資金
(3)海外展開・事業再編資金
(4)事業承継・集約・活性化支援資金
(5)企業再建資金
2.その他条件:次のすべての要件も満たす方
(1)地域経済活性化にかかる事業を行うこと。
(2)税務申告を1期以上行っている場合、原則として所得税等を完納していること。
資金の使途
該当する融資制度に定める設備資金および運転資金
融資限度額 7,200万円(別枠)
担保・保証人 原則不要
詳細URL https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/57.html
〇中小企業事業
対象者
新規事業、経営改善、企業再建などに取り組み(※)、地域経済の活性化のために一定の雇用効果(新たな雇用または雇用の維持)が認められる事業、地域社会にとって不可欠な事業、技術力の高い事業などをおこなう方。
※新企業育成貸付、企業活力強化貸付(一部の制度を除く)または企業再生貸付(一部の制度を除く)の適用要件を満たす方
融資限度額 1社あたり 10億円
担保・保証人 原則不要
詳細URL https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/57_t.html
(2)自己資金なしでも受けられる「信用保証協会の保証付き」の2つの融資
信用保証協会は、保証料はかかりますが、融資を受けやすくなるようにサポートをしてくれる公的機関です。信用保証協会の保証付きであることを条件に、自己資金がなくても借りられる融資について紹介します。
(参考)全国信用保証協会連合会
①地方自治体の制度融資(創業融資)
都道府県や市区町村といった地方自治体にも融資は存在します。金融機関・信用保証協会・地方自治体の3機関が連携しておこなっている「制度融資」です。
(例)東京都中小企業制度融資『創業』
https://www.tokyo-sogyo-net.metro.tokyo.lg.jp/finance/seido_yuushi.html
すべての自治体でおこなわれているわけではありませんが、もしご自身の起業する地域に制度融資があれば、検討してみるのも良いでしょう。
②銀行・信用金庫の創業融資
銀行や信用金庫などの民間の金融機関にも、信用保証協会の保証がついていることを条件に、自己資金なしで受けられる創業融資があります。ただし審査の難易度は非常に高いので、妥当性があって将来性の高い事業計画書を作りこみ、しっかりと担当者にプレゼンできる必要があるでしょう。
自己資金の作り方、創業資金を捻出する5つの方法
現時点で貯金がなくても、自己資金に含めることができるものは意外とたくさんあります。自己資金を作る5つの方法を以下に紹介します。
①出資してもらう
出資とは、簡単に言うと返済不要でお金を出してもらうことです。家族や友人を頼る方法もありますし、投資家にプレゼンして出資をつのる方法や、クラウドファンディングで資金を集める方法もあります。
②保険を解約する
これまで積み立ててきた保険を解約することで、返戻金としてお金が戻ってきます。
③退職金を使う
脱サラして起業する場合、退職金が出る会社もあります。退職金も自己資金としてみなすことができます。
④資産を売却する
車や不動産、パソコンや機械など、身の回りにある資産を売却し、自己資金を作る方法です。
⑤共同経営者と組む
共同経営者の持っている資金は、事業のための自己資金にできます。
※助成金・補助金を活用する
助成金や補助金は、国から返済不要で受け取れるお金のことです。
大まかに、「補助金等に申請→ 審査に合格→ 自分で設備などを購入→ 報告→ 補助金等の支給 」という流れです。
お金を受け取るまでに時間がかかる、原則「後払い」である、厳しい審査に合格しなければならない、などの課題はありますが、もし補助金等を獲得できれば、資金繰りの面で大きな助けになります。
(参考)【2023年】会社設立時に知っておきたい4つの助成金・補助金を紹介
弊社には補助金の専門家も在籍していますので、是非お気軽にお問い合わせください。
自己資金に含めることができないもの
自己資金として絶対NGなのが、「タンス預金」と「見せ金」です。
・タンス預金
タンス預金とはその名の通り、タンスの中などに貯めている現金のことです。タンス預金は通帳に資金の履歴が残らないので、お金の出所が不透明だということで、自己資金として認められません。
・見せ金
見せ金とは、第三者から審査の時にだけ一時的に借りてきた、見せかけのお金のことです。実際に公庫の担当者の方も、見せ金や嘘の決算書を持ってくる人は結構いると話していました。公庫の方も慣れていますから、そのような人に対しては、面談で詳しく話を聞いたり、入出金履歴などのもっと詳細な書類の提出を求めたりすることで見極められるそうです。
融資を受けるかどうかは、きちんと検討しましょう
融資は必ず返済をしなくてはなりません。本当にいま融資を受けないと始められない事業なのか、多額の費用をかけなければできないことなのかをよく考えておきましょう。事業は小さく始めて大きく育てられるのが理想です。
また、融資の金額は大きければ大きいほど審査も厳しくなります。工夫して開業資金を下げられないかも同時に検討してみましょう。
業種にもよりますが、初期費用を下げるためのアイデアとして、以下のようなものがあります。
・副業から始めてお金を貯め、軌道に乗ってから本格的に起業する
・はじめからこだわらず、無駄を省いて、必要最低限の設備だけを購入する
・仕事をなるべくオンラインでできるようにする
・オフィスや店舗などを借りずに、まずは自宅の一室から始める
・中古品や居抜き物件を活用する
・他の店舗などに交渉して、休業日や休業時間中にお店を間借りする
・同一事業で後継者を探している人がいないか調べる
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当記事で紹介した5つの融資は、確かに自己資金がなくても申込はできます。ただし、だからといって融資の審査が通るとは限りません。たとえいま自己資金がなくても、将来的にあなたの事業が成功することを融資の審査員に示せるような、しっかりとした「創業計画書」を提出する必要があります。
弊社には経験豊富な融資の専門家が在籍しています。ほかにも弊社には補助金の専門家や税理士、中小企業診断士などが在籍しており、資金調達や経営に関するサポートもおこなっています(スポット対応可)。
ただいま無料相談をお受けしております。ぜひお気軽に下記の連絡先へお問い合わせください。
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この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura 元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員 中小企業診断士、起業コンサルタント®、 1級販売士、宅地建物取引主任者、 補助金コンサルタント、融資・資金調達コンサルタント、 産業能率大学 兼任教員 2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。 融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。