
バーチャルオフィスを検討するときに注意すべき点とは?
バーチャルオフィスは、起業初期のコストを抑えながら法人登記ができる便利なサービスです。ですが、メリットばかりを見て契約してしまうと、思わぬトラブルや信用問題に発展することも。そこで今回は、起業家が安心して利用するために「事前に押さえておきたいポイント」を丁寧に解説していきます。
1. 住所の信頼性と使用実績を確認しよう
バーチャルオフィスの住所は、他の企業と共有されるケースが大半です。特に人気エリアの住所では、同じ建物に何百社も登記されていることがあります。
このようなケースでは、新規の取引先がWeb検索したときなどに「この会社は実態があるの?」と不審に思われる可能性も。取引先や銀行が調査を行った際、信用に影響を与える場合があるため、業種や業態的に利用しないほうが良い場合もあると想定しておきましょう。また、利用するときにはなるべく紹介者などを通して評判を聞き、「登記利用の実績がある」「長く運営されている」信頼できる事業者を選ぶことが大切です。
2. 許認可が必要な事業では使えないことも
バーチャルオフィスの住所は、基本的には法人登記や郵便受け取りに使うものであり、事業の実態が必要な業種には適していません。
たとえば、古物商や建設業、宅建業、士業など一部の業種では、行政の許認可申請に「専用の事務所」が求められます。バーチャルオフィスでは許可が下りないことが多いため、自分の業種が利用可能かどうか、事前にしっかり確認しておきましょう。
3. 銀行口座開設や融資審査への影響
バーチャルオフィスの住所で法人口座を開設しようとした場合、金融機関によっては慎重に審査される傾向があります。
特に大手銀行では、「本当に実態のある会社なのか」「事業活動は確認できるか」といった点を重視します。バーチャルオフィスでも口座が開設できる例は多数ありますが、事業内容や代表者の顔がわかるホームページ、しっかりとした事業計画などで補完することが重要です。
4. 郵便物の対応とトラブル防止
バーチャルオフィスでは、郵便物の受け取りや転送が主なサービス内容の一つです。ただし、受け取り頻度や転送方法、料金体系は各社で異なります。
転送が週1回のみだったり、追加料金が発生する場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。また、重要書類や取引先からの通知が届かないリスクを減らすためにも、郵便対応の丁寧さや実績はしっかり見ておきましょう。
5. 会議室や電話応対などの付加サービスもチェック
起業初期はコストを抑えることが最優先ですが、実際には取引先との打ち合わせが必要になったり、電話連絡先が必要になったりする場面も多々あります。
そのため、会議室の有無や時間貸しの料金、電話転送・秘書代行といったサービスがあるかどうかもチェックポイントになります。サービス内容に加えて、柔軟性やサポートの丁寧さも比較して選びましょう。
6. 途中解約や事業拡大時の移転リスク
「とりあえず登記だけできればいい」と思って始めたバーチャルオフィスでも、事業が成長するにつれて「手狭」「信用が足りない」「本格的な執務スペースが必要」といった理由で移転するケースも出てきます。
その際に、バーチャルオフィス運営会社が倒産・撤退していたり、他のサービスへの引っ越しが難しかったりすると、手間やコストがかさむことも。中長期の成長を見据え、「もし移転するならどうなるか?」を事前に確認しておくのがおすすめです。中途解約時に残余期間分の家賃など、多額の金銭がかかる契約も過去見たことがあります。
7. 自社に合ったスタイルを選ぶのがポイント
すべての起業にバーチャルオフィスが最適というわけではありません。たとえば、ネットショップやコンサルティングなど、訪問や来客が不要な業種では非常に有効です。
一方で、来店型ビジネスやリアルな信用が求められる業種では、物理的なオフィスのほうが安心感を持ってもらえる場合もあります。目的と用途を明確にし、自分の事業に合ったオフィス形態を選びましょう。
まとめ──慎重な選定で“信用を落とさず”コスト削減
バーチャルオフィスは、うまく使えば起業時のコスト削減と機動力確保に非常に効果的です。ただし、住所の信頼性、許認可の可否、銀行審査への影響、郵便対応など、実務面での注意点も多くあります。
一時の安さだけで決めず、今後の成長や信用を踏まえたうえで慎重に選定することが大切です。もし、どのバーチャルオフィスを選べばいいか迷ってしまったら、あなたの業種や計画に合わせたアドバイスも可能です。お気軽にご相談くださいね!
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。