
捨印(すていん)を正しく理解してトラブル回避!
〜起業したての元会社員が知っておくべき契約書の基礎知識〜
はじめに
起業したばかりの30代元会社員の皆さん、おめでとうございます!会社員時代とは違い、これからは契約書一枚にも自分の判断と責任が問われます。その中で意外と見落としがちなのが 「捨印」 です。
「何となく押してきたけど、これって本当に大丈夫?」という不安、ありませんか?
捨印は便利な反面、意味やリスクを正しく理解していないとトラブルの原因にもなります。今回は、起業直後の経営者が知っておくべき捨印の基本から注意点、実務での安全な活用法までやさしく解説します。
1. 捨印とは何か?
定義
捨印とは、契約書や申込書などに訂正や追記が必要になったとき、わざわざ相手に確認を取らずに訂正できるよう、事前に押しておく印鑑のことです。通常、契約書の余白や訂正印欄に押されます。
主な用途
- 書類の誤字脱字の訂正
- 金額や日付などの軽微な修正
- 記入漏れの補足
2. 捨印のメリットとデメリット
メリット
- 書類の修正のたびに呼び出される手間がない
- 契約や申込の処理がスムーズに進む
- 遠隔地のやり取りで便利
デメリット
- 自分の知らない修正がされる可能性がある
- 大きな条件変更にも使われるリスク
- 証拠が残りにくく、トラブル時に不利になる場合がある
3. 起業したての経営者が直面しやすい捨印のリスク
ケース1:金額の変更
契約後に金額が増額され、捨印によってそのまま有効になってしまった例。
ケース2:契約期間の変更
契約満了日を勝手に延長され、解約できない状態に。
ケース3:不利な条件追記
特約条項が追加され、利益が減ったり損害賠償責任を負うことになったケース。
4. 捨印を押す前のチェックリスト
- 相手先の信頼性は十分か
- 修正可能な範囲が明記されているか(誤字脱字のみ等)
- 捨印を押す位置が適切か(空欄の近くや余白に漫然と押さない)
- 契約書の控えを必ず自分で保管しているか
5. 捨印を押すときの安全対策
- 修正範囲を限定:契約書の備考欄に「誤字脱字の訂正に限る」など明記
- ページごとに確認:契約のページ単位で押印し、抜けや差し替えを防ぐ
- コピー保存:押印前と押印後の両方をスキャンや写真で保管
- できるだけ押さない選択肢:面倒でも都度訂正印を押す方が安全な場合も
6. 捨印の代替手段
- 訂正印方式:修正箇所に直接訂正印と修正内容を明記
- 電子契約システム:修正履歴が自動で残る
- 合意書の別途作成:重要な修正は別紙で合意して署名捺印
7. 実務の現場での使い分け
- 短期的・低額の契約:捨印を押してスピード重視
- 長期的・高額の契約:捨印は避け、慎重に訂正印対応
起業直後は資金や契約に関する交渉力が弱い時期ですが、それでも「安易に捨印を押さない」姿勢は信頼されます。誠実さと慎重さのバランスが大切です。
FAQ
Q1. 捨印は必ず押さないと契約できませんか? A. 必須ではありません。契約の相手が求めても、訂正印対応や電子契約など他の方法を提案できます。
Q2. 捨印を押した後に不利な修正をされたらどうなりますか? A. 原則有効になる可能性が高く、争うには証拠や条件の限定記載が必要です。
Q3. 捨印はどこに押すものですか? A. 契約書の余白や訂正印欄に押すのが一般的です。
Q4. 電子契約では捨印の概念はありますか? A. ほぼありません。修正は履歴で管理され、双方の承認が必要です。
Q5. 捨印を押す場合の最も重要な注意点は? A. 修正範囲を明記し、控えを必ず保管することです。
まとめ
捨印は便利な反面、誤用すると大きなトラブルを招く可能性があります。起業したばかりの経営者こそ、契約書の一つひとつに慎重になるべきです。
安易に押すのではなく、「押すべき時」と「避けるべき時」を見極め、必要なら専門家に相談しましょう。あなたの事業を守るのは、日々の小さな判断の積み重ねです。
【無料相談のご案内】
起業の手続きって何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!
この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。