
法人口座開設が難しくなっている理由
今回は、【法人口座開設が難しくなっている理由】について解説していきます。
法人口座開設が困難になっている現状
ここ数年で、法人設立し起業したものの銀行口座が作れなくて困っているといった声が非常に多いです。最近では、ネット銀行における口座開設が普及してきており、ネット銀行を利用している法人数も増えています。
ここで問題なのが、ネット銀行普通預金では一部利用できない機能があります。代表的なものは口座振替機能です。
事例として1番多いのが、日本政策金融公庫にて創業融資を申込みし、審査が内定になったものの受け皿口座が無いケースがあります。
日本政策金融公庫は、普通預金口座等の機能は有していないため、銀行口座へ入金し、その銀行口座より返済(口座振替設定)が原則となっています。その際に、ネット銀行普通預金では日本政策金融公庫の返済口座指定ができないのです。
民間金融機関(店舗を出している)の普通預金口座ですと、日本政策金融公庫の口座振替設定が可能となります。しかしながら、昨今、民間金融機関での法人口座新規開設における審査が非常に厳しくなり口座作成ができない状況になっています。
なぜ、法人口座開設が難しくなっているのかを説明し、対策をお伝えします。
マネーロンダリング対策による規制強化
「マネーロンダリング」に係るリスク回避のために法人口座開設を厳しくしていることが背景にあります。マネーロンダリングといった言葉は耳にした事があるかもしれません。日本国内でわかりやすくお伝えすると、振込詐欺等や口座作成ができない人への口座売買等に対する抑制です。他にも、海外への送金におけるマネーロンダリング等幅広く定義はされています。
これは世界的に抑止する動きになっており、当然日本でも同様の動きがあります。実は、何年も前から国際機関FATF(マネーロンダリングに関する金融作業部会)より、日本のマネーロンダリング対策については指摘が多かったようです。
そして、2019年に第4次審査があり、それに向けて金融庁より各金融機関に対し「マネーロンダリング対策」について構築するよう指示があったもの。その結果、各金融機関が厳しくし始めたのが、海外送金と法人普通預金口座の2点になります。
法人口座開設抑制により、新たな犯罪口座に使われることが無くなり、海外送金厳格化により、マネーロンダリング未然防止といった措置がとられました。もちろん顧客からは利便性が悪いや面倒などの意見も多数寄せられました。
法人口座開設のための3つの対策
① 銀行と取引のある方や法人から紹介をしてもらう
口座開設希望の銀行で既に取引をしている人に紹介してもらう方法です。ただし、注意が必要なのが取引具合です。単なる口座開設レベルでは弱く、取引が深いほど紹介時の対応は変わってきます。
② 自身が利用している銀行に交渉する
既に自分自身が口座利用している銀行に交渉する方法です。こちらも普通に口座利用しているレベルでは弱いですが、保険や投資信託、定期預金や積金、住宅ローンなど複合取引がある顧客であれば、前向きに対応してくれる可能性が高まります。今後法人開設を予定しているのであれば、既存銀行との取引深耕を図っておくことも有効です。
③ 創業融資を取り上げてもらう
少々強引な方法ですが、銀行で創業融資を取り上げてもらうことです。決裁になれば必然的に口座作成を行わないといけません。そのためには、事業計画書等を事前に作り上げてから相談に行くといったスタンスが効果的です。
まとめ
以上3点が対策になります。最後に、以前に比べて金融機関が法人口座開設を断る件数は圧倒的に増えています。断られたからといってあなた自身がダメだということではありません。銀行によってスタンスは異なりますが、知っている中で最も厳しい銀行は7割近くお断りをしていると言っていました。これからは、法人口座開設においても戦略的に取り組んでいく必要性が出てきますね。
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この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
補助金コンサルタント、融資・資金調達コンサルタント、
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。