
融資不可の理由を考える!公庫の融資判断の基準とは?
融資を断られる主な理由
公庫へ申込をして、融資を断られる理由について考えてみましょう。よく見かけるアドバイザーや税理士の方々のコメントは、「経験が不足している」「自己資金が不足している」「創業の実績が短かった」等々あります。
公庫は融資できない理由について、問い合わせれば必ず答えてくれますが、概ね『色々と検討しましたが、総合的な判断の結果です。』で終始するケースが多いのではないでしょうか。
経験年数や自己資金の必要額は、面接時点で分かっていることです。そのことだけを理由に融資出来なかったのではないはずです。今回は、融資できない主な理由を取り上げてみました。
個信情報は大丈夫ですか?
公庫へ『借入申込書』を提出すると、申込書に記載されているように、本人同意のうえで、個人情報を個人信用情報機関に公庫が登録・紹介できるシステムになっています。
『個信情報』とは、個人の信用情報で、本人の属性、クレジットカードやキャッシングの契約状況、借入、返済などの取引状況です。カードの支払い状況だけでなく、奨学資金の返済、住宅ローン、携帯電話料金の支払い状況も含まれます。
金融機関での借入限度額の設定状況も分かります。この取引状況が芳しくないのに、公庫が踏み込んで融資をすることはありません。
この照会結果を本人へ知らせることは、情報機関の利用規約違反となるため、公庫は開示できません。ここで銀行引落しや返済の状況が悪いと、先に進むのは難しいです。本人が気づいていないケースも多く見受けられます。申込者本人が信用情報機関に有料で照会することもできます。
公庫の内部情報とは?
申込をすると、本人が「反社会勢力でないか」、過去に公庫と取引がなかったか、法人企業であれば役員に公庫と取引がないかを必ず検索します。
さらに、申込人の元勤務先や仕入れ先、取引先についても内部情報がないか調べ、その企業の実態を確認していきます。これにより、起業者の元勤務先の技術力や商品力、公庫内部の取引先企業情報を活用し、創業の背景や維持力を把握します。
ここで創業にマイナス要因が多いと融資に踏み込めないことがあります。これらの情報は申込者本人に説明されることはありません。
自己資本が薄いと融資に踏み込めない
自己資本とは、申込者の総資産(預金や不動産など)から負債(ローンや借入金)を引いたものです。これは現時点での耐久力を示しています。
自己資本が厚ければ資金調達力があると判断され、逆にマイナスの場合は融資対象になりにくくなります。
算出のために、資産(預金通帳、株式、保険、不動産)、負債(住宅ローン、クレジット等)が調査されます。特に開業資金について返済義務があるのかどうかは大きなポイントです。
融資の判断基準とは?
担当者は融資の稟議にあたり信用調査票を作成します。ビジネスモデルが明確でプラス要因が多ければスムーズに書けますが、疑問点があると悩むことになります。
融資の判断で特に重視されるのは「皆がその判断に賛同するか」です。課長、支店長、本店、場合によっては外部機関(金融庁、財務省等)に説明できるかが基準となります。
売上予想や収支予想は、よほど過大でなければ「やってみないと分からない」ものです。最大のポイントは「融資判断に関わる人が妥当と納得できるか」であり、そのためにマイナスを上回るプラス要素が必要です。
まとめ
融資判断では、商品価値、販路、取扱品の評価等も重要ですが、今回は「情報面」に着目して、融資に踏み込めない理由を解説しました。
定形外の情報も有効に働きます。例えば「実家は資産家で援助が期待できる」「商品の評判が良い」「配偶者が金銭管理に堅実」など、記事にならないような情報も参考になります。
外部の人が本人の気づかない強みや評価を公庫に伝えることは有効です。商工会・商工会議所、税理士、中小企業診断士などの協力も検討してみましょう。
【無料相談のご案内】
起業の手続きって何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!
この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
補助金コンサルタント、融資・資金調達コンサルタント、
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。